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彦島のけしき

山口県下関市彦島から、風景・歴史・ものがたりなど…

カッパと寿円禅寺 

カッパと寿円禅寺(じゅえんぜんじ)


 むかしむかし、ひどい日照りが続いて、田んぼも畑も枯れ果ててしまいました。
 こまったのは、人間だけではありません。
 竜が淵(りゅうがふち)に住んでいたカッパも、日照りで魚が死にたえてしまったので食べる物がありません。
 空腹にたえきれなくなったカッパは、悪いとは思いつつ、近くの自住禅寺(じしゅうせんじ)の放生池(ほうしょういけ)のコイを一匹、食べてしまいました。

 この頃、近くの鐘乳洞(しょうにゅうどう)に自住禅寺の寿円禅師(じゅえんぜんじ)が入って、苦しむ百姓(ひゃくしょう)たちを救うために雨乞い(あまごい)のお祈りをはじめていました。
 これを見たカッパは、
「わしが池のコイを食べたので、のろい殺そうというのじゃな」
と、勘違いして、あれこれとお祈りのじゃまを始めました。
 しかし禅師(ぜんじ)は気にもとめず、一心にお祈りを続けました。
「この坊さん、他人のためにここまでするとは」
 心をうたれたカッパはいつしか禅師の弟子となり、禅師のお手伝いをするようになりました。
 そしていよいよ満願(まんがん)の朝、禅師の祈りが天に通じたのか、どこからともなく黒雲が姿を現して、雷をともなう大雨となったのです。
「御仏(みほとけ)は、わたしの願いをお聞きくだされた!」
 禅師は、よろめく足で鍾乳洞から出て行きました。
 弟子となったカッパも、
「これで、わしの罪(つみ)もゆるされよう」
と、禅師に続いて出てみると、禅師が竜が淵の一枚岩(いちまいいわ)の上に立っていたのです。
 実は雨乞いの願いがかなえられた禅師は、そのお礼に自分の命を天にささげようとしたのです。
(あぶない!)
 カッパは駆け出しましたが、禅師はそのまま淵に身を投げてしまいました。
 カッパは禅師をお助けしようと淵に飛び込みましたが、さすがのカッパも大雨の濁流(だくりゅう)ではうまく泳げません。
 カッパは濁流にのみこまれながらも、禅師を助けようとがんばりました。
 岩肌に体をぶつけ、大切な頭の皿も割れてしまいましたが、カッパは最後の力をふりしぼって禅師の体を何とか川岸に引き上げました。
「禅師さま! 禅師さま、ご無事ですか!」
 しかしすでに、禅師は息絶えていました。
「そんな・・・」
 そしてカッパも力つきて、そのまま川下に流されてしまいました。

 やがてこの事を知った村人たちは、禅師の遺体(いたい)を荼毘(たび)にふすと共に、このけなげなカッパを『禅師河童(ぜんじかっぱ)』とたたえて、手厚(てあつ)くとむらったそうです。


山口県の民話 福娘童話集より
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Posted on 2019/06/27 Thu. 11:17 [edit]

category: 山口むかし話

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27

姫山のお万 

姫山のお万(ひめやまのおまん) 山口市


 むかし、山口の城下に住む長者のところに、お万というひとり娘がいた。
 お万は、色白で、目のぱっちりした、笑うと小さいえくぼのできる美しい娘であった。 十七、八になると、その美しさは歌にまでうたわれるほどの評判になった。

 ある日、しばいの見物に出かけたお万は、わかい旅役者をひと目見て好きになった。そんな時、城下をまわっていた殿さまが、美しいお万に目をとめた。
「そちらの娘をよこせ。そうすれば、そちの願いをなんでみかなえてつかすぞ。」
と命じた。

 お万には、すでに好きな相手があるので、長者は返事をためらっていた。すると、気の短い殿さまは、すぐに承知しない長者に腹を立て、
「なぜ返事をせぬ。余の申すことが気に入らんとでもいうのか。」
「いえ、めっそうもございません。
 しかし、娘の気もちも聞いてみませぬと・・・。」
「そうか。では、お万によく言い聞かせて、きっと余の意にそうようにせよ。」

 殿さまの言いつけにそむけば、どんなおそろしいめにあうかよく知っていた長者は、家に帰ると、すべてをお万にうちあけた。お万は、
「お父様の言いつけなら、どんなことでもしたがうつもろです。でも、そればかりは・・・。」
 と、泣いて長者にすがった。長者は、
「よくわかった。無理もないことだ。どのようなことがあろうとも、このことはお断り申してこよう。

 すぐに城に出かけた長者は、いつまでたっても帰ってこなかった。お万をはじめ、家のものが心配していると、突然どやどやと殿さまの家来が屋敷の中に入ってきた。
 そして、いやがるお万をむりやりつれて引き上げていった。
 城へつれてこられたお万の前に、あらなわでしばられた長者が引きすえられ、胸もとへ刀をつきつけられた。
 殿さまは、
「お万、そちはどうしても余のことばにさからう気か。あれを見よ。そちの返事しだいでは、父親の命はないものと思え。」
 と大声でいった。

 お万は、なみだにぬれた顔をあげて、
「お殿さま。どうか、このことばかりはお許しください。それ以外のことなら、どんなことでもいたします。どうか・・・。」
 と、ひたすら、殿さまににお願いするばかりであった。
「だまれ。ふとどきもの。どうしても余の言いつけにそむく気だなっ。」
 いかりくるった殿さまは、お万をしばりあげ、
「ものども、ただちに父親の首をうて。このお万は姫山に送り、いただきの古井戸の中にいれてヘビ攻めにせよ。」
 と命じた。

  長者は、その日のうちに首をはねられた。
 姫山の古井戸に入れられたお万は、毎日投げ込まれる多くのヘビに攻め立てられた。
 お万は、その苦しみと父親を失った悲しみとで、日ごとにやせ細って、なげき苦しみながら死んでいったという。

 それからというもの、お万のうらみがこの山に残ったのか、姫山の見える山口の地からは、決して美しい娘は生まれなくなったと伝えられいる。


題名:山口の伝説 出版社:(株)日本標準
編集:山口県小学校教育研究会国語部

Posted on 2019/06/26 Wed. 11:32 [edit]

category: 山口むかし話

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26

かっぱとひょうたん 

かっぱとひょうたん


むかし、むかし、ある山里におじいさんと娘が住んでおりました。

おじいさんの田んぼは、家からずっと離れたところにあり、毎日山道を通ってその田んぼで働いていました。

ところがある日のこと、不思議なことがおっこったのです。
それは、田んぼに苗を植えてから数日後に、田んぼの水がすっかりなくなっていたのです。
今までにこんなことは一度もなかったことです。

おじいさんは娘と二人で、山の田んぼへせっせと水を運びました。
山の下の堤から田んぼまで水を運ぶのは大変な仕事でした。
二人は毎日、毎日続けましたが、とうてい間にあいません。

疲れたおじいさんが、田んぼのあぜにしょんぼりと座っていると、一匹のかっぱがあらわれて、おじいさんに語りかけました。
「おじいさんや、いったい何をそんなに沈んじょるんかいの」
おじいさんは答えました。
「この田をみんさいや、はよう水を入れんけりゃ枯れてしまう。誰か水を引いてくれんじゃろか、お礼にゃなんでもやるんじゃが」

これを聞いたかっぱは喜んで言いました。
「わしが引いちゃるで、お前さんの娘を嫁にくれるかの」
おじいさんは、こんな小さなかっぱにできるはずもないと、つい約束をしてしまいました。

あくる日、おじいさんは田んぼに行ってびっくりしました。田んぼいっぱいに水がはってあるではありませんか。

おじいさんは、水の引き主を神さまと思いこみ、かっぱの言ったことなどすっかり忘れて、娘と大喜びしました。

そのとき、ぴょこんとかっぱがあらわれて言いました。
「おじいさん、わしのいうたこと忘れてはいまいな。この水はわしが引いたんじゃぜ」
おじいさんは言いました。
「お前の力でできるもんかいの。こりゃあ、神さまがお引きくださったんじゃ」
かっぱは腹をたてて、田んぼの水を一滴もなくしてしまいました。

かわききった田んぼをみて驚いているおじいさんに、かっぱが言いました。
「どうじゃ、これでもまだ、お前はこのわしを信ぜりゃせんかい」

こうなっては、おじいさんの負けです。
「信じる。じゃから、もういっぺん水を入れてくれ」と、かっぱに頼みました。
すると、かっぱは得意になり、
「引いちゃるかわりに、約束を忘れんようにな」と言って、田んぼいっぱいに水を引きました。
おじいさんはとうとう娘をかっぱにやる約束をしてしまいました。
これを聞いて、ようやく娘も決心をし、ひょうたんを三つ持って、お嫁に行くことにしました。

あくる日、かっぱは朝早くから待ちかねていました。
かっぱが娘を水の中へ連れて行こうとすると、娘は言いました。
「先にこのひょうたんをはこんでおくれ」と、かっぱの背中にひょうたんをくくりつけました。

さて、かっぱは水の中へ帰ろうとしてもぐりましたが、ひょうたんが軽くて浮きあがってしまうのです。とうてい水の底へたどり着くことができません。
何度も何度もくりかえしましたが、どうしてもたどりつけず、とうとう力つきて、のびてしまいました。

そしてよわよわしく言いました。
「お前さんの願いは何でも聞いちゃるから、はよう、このばけもんをのけちょくれ」
そこで娘は、かっぱに水のもりを頼みました。
そして背中のひょうたんをとってやると、
「はあ、そのばけもんはおそろしい。そないなもん持っちょるお前さんもごめんじゃ」と言って、かっぱは水の中へ帰って行きました。

それからというものは、田んぼにはいつも水がたまり、おじいさんと娘の苦労はなくなりました。
そのかわりかっぱにはお礼にと、夏がくるといつも、かっぱの好きなきゅうりを淵に流してやることにしたそうです。

(都濃・佐波郡)


山口銀行編纂 山口むかし話より転載

Posted on 2019/06/25 Tue. 11:03 [edit]

category: 山口むかし話

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25

夫婦 

夫婦


 むかしむかし、言い伝えによると人間は、夫婦が背中合わせにくっついて生まれてきたそうです。
 ある日の事、大勢の人間たちが集まって、神さまにお願いしました。
「神さま。わたしたち夫婦は、背中と背中とがくっついているので、夫婦でありながら女房や夫の顔を見る事が出来ません。どうか自分の女房や夫の顔が見られるように、背中を割っていただきたいのです」
 すると神さまは、
「なるほど、それは、もっともな事じゃ」
と、夫婦のくっついた背中を割ってくれたのです。
 こうして夫婦の背中が一斉に割れたのですが、普段から顔を見ていない二人ですから、一度見失うと誰と誰が夫婦だったのか、分からなくなってしまいました。
 そこで人間たちは困ってしまい、また神さまにお願いしました。
「願い通り、背中を割ってもらいましたが、今度は誰が夫婦の片割れであったのか、見分けがつかなくなりました。何とかして下さい」
 すると神さまは、
「それでは、お前たちに愛という力を与えてやろう。外見や目先の利益にこだわらずに、その愛を信じて相手を探せば、必ずや、夫婦として生まれた片割れを見つける事が出来るであろう」
と、人間に愛という力を授けてくれたのです。

 人間は、時には外見、時にはお金や地位などの利益に目がくらんで、愛という神さまから頂いた力を使わずに夫婦となる人がいますが、それでは末永い幸せを手にする事は出来ません。
 外見や利益に惑わされず、愛という力を信じて夫婦として生まれた片割れを見つければ、必ずその二人は、末永い幸せを手に入れることが出来るでしょう。

山口県の民話 福娘童話集より
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Posted on 2019/06/24 Mon. 10:52 [edit]

category: 山口むかし話

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24

白ギツネと福徳稲荷 

白ギツネと福徳稲荷 ~下松市~


 下松市花岡の上市(かみいち)に、朱塗りの大鳥居のある法静寺(ほうじょうじ)というお寺がある。
 お寺に鳥居があるのは、めずらしいことであるが、それは、このお寺の境内に、福徳稲荷大明神(ふくとくいなりだいみょうじん)がまつられているからである。

 いまから二百五十年ほど前、このお寺に称誉智順上人(しょうよちじゅんじょうにん)というおしょうさんがいた。
 おしょうさんは、生き物をかわいがる心のやさしい人であった。こまった人や苦しんで人を助けたり、悪い心をもっている人を正しくみちびいたりして、村の人びとからうやまわれ、したわれていた。

 秋のはじめのある日のことである。
 おしょうさんは、いつもより早く朝のおつとめをし、よそゆきの衣(ころも)に着替えると、じゅずをもって、外へ出た。
 きょうは、徳山(とくやま)の町へ法事へ出かけるのである。
 山門をくぐりぬける朝の風はすずしく、たいへんここちよかった。

「きょうもいい天気だわい。昼間はあつくなるぞ。さあ、すずしいうちにでかけよう。」
 と、山門のすぐ前の山陽道を西へむかって歩きだした。
 徳山の町まではかなり遠く、二里(約8キロメートル)はある。とちゅう山を二つも三つもこえ、くねくねと曲がった山道を行かなくてはならない。近道はあるのだが、山の中ややぶ道なので、朝のうちはつゆで衣がぬれる。それで、遠まわりだが、広い道を行くことにした。
 やっと徳山についたころには、お日さまは高いところにあがっていた。

 さて、法事を無事にすませると、帰りは午後のあつい日ざしをさけて、山林の近道を通ることにした。
 めったに人が通らないので、道には草木がおいしげっていた。草をかき分けながら大迫田(おおさこた)の白牟ヶ森(しろむがもり)の中ほどに来たとき、急にあたりが暗くなった。
 と思うと、ゴーッと風がふいて、草や木がザワザワと音をたてた。
「おかしなことじゃ。さっきまであんなに明るかったのに。」
 と、ひとりごとを言いながら、しばらくそこにたちすくんでいると、まもなく、もとの明るさにもどった。おかしなことがあればあるものだ、と気味悪く思いながら急いでその森をぬけ、やっとお寺に帰りついた。

 お寺に帰ったおしょうさんが、
「やれやれ、きょうはよう歩いた。お茶でものむとするか。」
 と言いながら、ふと手を見ると、手にかけていたはずのじゅずがない。あわててそでやふところに手をつっこんでみたがない。こまったことになった。おしょうさんにとって、じゅずはさむらいの刀とおなじくらいたいせつなものだ。
 お茶をのむどころではなくなって、あちらこちらとさがしまわったが見あたらない。おしょうさんはがっかりしてすわりこんでしまった。

 その夜は、とこについてもなかなかねつかれなかったが、昼のつかれで、いつのまにかうとうとしはじめた。すると、まくらもとで、
「わたしたちは、大迫田の白牟ヶ森で死んでいる白ギツネの夫婦でございます。どうか、わたしたちのなきがら(死体)を、人間と同じようにこのお寺にほうむってください。ねがいごとをかなえてくださったなら、このお寺や村の人々が火事やぬすみにあわないように守ってさしあげます。それに、おしょうさまが昼間になくされたじゅずも、ここにおとどけいたします。」
 という声がした。
 目をさましてみると、おどろいたことに、なくしてこまっていたじゅずが、まくらもとにちゃんとおいてあった。

 次の日、おしょうさんは、さっそく寺男をつれて白牟ヶ森へ行ってみた。
 昨夜の声のとおり、白ギツネ夫婦が死んでいたので、すぐに死体をお寺にはこんだ。そうして、人間と同じようにお経をとなえ、墓をつくって戒名(かいみょう:死んだ人につける名)までつけてやった。

 その後、お寺や村の人々は、白ギツネに守られ、火事やぬすみにあうことがなくなった。
 村人たちはありがたく思って、白ギツネの墓におまいりする人がたえなかったという。


 さて、それからおよそ百年たった文政(ぶんせい)十三年(1830)二月のことである。
 この地方の代官所(だいかんしょ)で、たいせつな書き物がなくなった。役人たちが困っていると、村人たちから白ギツネのことを教えられた。さっそく法静寺の白ギツネの墓にまいり、願(がん)をかけた。
 するとまもなく、その書き物が見つかった。代官所では、お礼にお寺の境内に社(やしろ)をたてて、白ギツネをまつった。
 そうして官領長公文所(かんりょうちょうくもんじょ:文書をあつかう役所)に願い出て、この社に「出世福徳正一位稲荷大明神(しゅっせふくとくしょういちいいなりだいみょうじん)」というりっぱな名まえもさずけてもらった。

 この後、このお社は「福徳稲荷」とよばれて、村内だけでなく、まわりの村や町まで広く知られるようになった。
 毎年、十一月三日には、豊作をねがって稲穂祭り(いなほまつり)が行われる。
 この日には、「キツネのよめ入り行列」がにぎやかに町をねり歩いて、見る人を楽しませている。


題名:山口の伝説 出版社:(株)日本標準
編集:山口県小学校教育研究会国語部

豊徳園ホームページより

Posted on 2019/06/23 Sun. 11:07 [edit]

category: 山口むかし話

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23

かくれ蓑 

かくれ蓑(みの)


 桃太郎が鬼ヶ島から持ち帰った宝物の中に、かくれ蓑(みの)というものがありました。
 このかくれ蓑、見かけはボロボロで汚れていますが、それを着るとたちまち体が消えて見えなくなってしまうという不思議な宝物です。
 さてある晩のこと、一人の盗人が桃太郎の家へ忍び込み、かくれ蓑を盗み出しました。
「よし、こいつを俺の商売に利用してやろう」
 それからは、盗人の仕事はおもしろいほどはかどります。
 どこへ泥棒にはいっても、かくれ蓑を着ているおかげで誰にも見つかることはありません。
 ところがある日、盗人の留守に納屋でかくれ蓑を見つけた盗人のおばあさんは、
「なんだ、この汚い物は」
と、かくれ蓑を焼いてしまったのです。
 帰ってきた盗人はがっかりです。
 でも、あきらめきれずにいろいろ考えた結果、裸になって体中にのりをつけ、かくれ蓑を焼いた灰の上をごろごろころがってみました。
 すると灰にも不思議な力があるとみえて、体がすーっと見えなくなるではありませんか。
「よし、これで最後の大仕事をしよう」
 盗人はそのまま、村一番の長者の屋敷へ泥棒にはいりました。
 屋敷の者たちは、目の前の物が次々に消えてなくなるのでびっくりです。
 盗人は思わず、口元を手をさすってクスッと笑いました。
 すると白い歯がチラッと現れたのです。
「見ろ、歯の化け物だ!」
 家中が大騒ぎになりました。
 盗人はあわてて逃げ出しましたが、手をさすった時に手のひらの灰がとれていたので、手のひらが二つヒラヒラと逃げて行く様子が誰の目にも明らかになりました。
「よし、あれを追うのだ!」
 みんなは手のひら目印に、どこまでも追ってきます。
 盗人は逃げて逃げて、全身に汗をかきました。
 すると汗に体中の灰が落ちてしまい、盗人はすっ裸のみじめな姿でつかまったということです。


山口県の民話 福娘童話集より
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Posted on 2019/06/22 Sat. 09:44 [edit]

category: 山口むかし話

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22

えんこうと杉の木 

えんこうと杉の木


 佐波川上流の柚野、柚木あたりの話である。
 このあたりでは、大きな杉の木が茂っている風景をよく見かける。

 さて、昔、佐波川にも「えんこう」がいて、泳ぎに行くと、足を引っぱるといって、子どもたちはとても恐れていました。

 ある夏の日のことでした。
 朝から雲ひとつない良い天気で、ギラギラと焼けつくような太陽がようしゃなく照っていました。するどい光にあてられて、草もきもすっかり元気をなくしていましたが、山あいのけい流では、子どもたちの楽しそうにはずんだ声が、こだましてははねかえっていました。
 さすがに暑い日も、太陽がかたむくころになると、涼しい風が木々の間を優しくわたってきました。
「ジィージィー」「ミーンミーン」と聞こえていたせみの声が、いつの間にか「カナカナ」という声に変わり、あたりはすっかり静まりかえってきました。

 まもなくひとりの百姓が馬をひいて「淵」へやってきました。汗とほこりにまみれた馬を、冷たい川の水につけ、百姓はやさしく馬の背中を洗ってやりました。馬は気もちよさそうに目を細め、緑の葉が鳴る風の音と、馬を洗う水の音だけが響いていました。

 突然、その静けさを破って、一匹のえんこうが淵の水面に姿を現しました。と見る間に馬のしっぽにつかまり、長くのびる手を馬のおしりから突っ込んで、生き肝をとろうとしたのです。馬は驚いて、前足を高くあげていななくやら、身ぶるいをするやら大あばれをはじめ、えんこうをしっぽにぶらさげたまま、たいへんな勢いで走り出し、お寺の境内にかけこみました。

 さわぎにおどろいてお坊さんが庭に出てみると、あばれまわっている馬のしっぽに、必死にしがみついているえんこうが、「オンオン」泣いているではありませんか。
 ほどなく、馬も疲れたとみえておとなしくなりました。お坊さんはえんこうに向かって重々しくいいました。
「おまえは人間を困らせるような悪いことばかりしている。重いおしおきをしなければ。」
 すると、えんこうは泣きべそをかきながらいやいやをしました。
「今日は許してやろう。そのかわり、川辺りに杉を植えること。その杉がある間は決して悪いことをしてはならない。もしも今度、人間を困らせるようなことをしたら、ただではすまさんぞ。」
 と、おどすようにお坊さんはいいました。
 えんこうは、首を何度も下げて、うれしそうに川へ帰っていきました。

 次の日、朝早くから、えんこうは一生けんめい川辺りに杉を植えました。
 それからというもの、えんこうは人間の前に出ることもなくなり、だんだんと忘れられていきました。しかし、えんこうがお坊さんと約束を守って植えた杉の木は、どんどん大きくなりました。

 そして、大雨で洪水が出たとき、護岸の役目をし、村を救ってくれました。
 お坊さんは、ちゃんと村の将来のことを考えていたのでしょう。


「徳地の昔ばなし」(徳地町教育委員会編集 平成3年発行)より引用

Posted on 2019/06/21 Fri. 11:44 [edit]

category: 山口むかし話

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21

天人女房 

天人女房(てんにんにょうぼう)


 むかしむかし、あるところに、一人の若い木こりが住んでいました。
 ある日の事、木こりは仕事に出かける途中で、一匹のチョウがクモの巣にかかって苦しんでいるのを見つけました。
「おや? これは可哀想に」
 木こりはクモの巣を払って、チョウを逃がしてやりました。
 それから少し行くと、一匹のキツネが罠(わな)にかかっていたので、
「おや? これは可哀想に」
と、木こりは罠からキツネをはすして助けてやりました。
 またしばらく行くと、今度は一羽のキジが藤かずらにからまってもがいていましたので、
「おや? これは可哀想に」
と、木こりはナタで藤かずらを切り払い、キジを助け逃がしてやりました。
 さて、その日の昼近くです。
 木こりが泉へ水をくみに行くと、三人の天女が水を浴びていました。
 天女の美しさに心奪われた木こりは、泉のほとりに天女が脱ぎすてている羽衣(はごろも)の一枚を盗みとって、木の間に隠れました。
 やがて三人の天女は水から出てきましたが、そのうちの一人だけは天に舞いあがるための羽衣が見つかりません。
 二人の天女はしかたなく、一人を残して天に帰って行きました。
 残された天女は、しくしく泣き出しました。
 これを見た木こりは木の間から出て行って、天女をなぐさめて家へ連れて帰りました。
 そして羽衣は、天井裏へしまいこみました。
 そして何年かが過ぎて、二人は夫婦になったのですが、ある日木こりが山から戻ってみると、天女の姿が見あたりません。
 天井裏の羽衣も消えています。
 ふと見ると、部屋のまん中に手紙と、豆が二粒ころがっていました。
 手紙には、こう書いてありました。
《天の父が、あたしを連れ戻しに来ました。あたしに会いたいのなら、この豆を庭にまいてください》
 木こりがその豆を庭にまいてみると、豆のつるがぐんぐんのびて、ひと月もすると天まで届いたのです。
「待っていろ、今行くからな」
 木こりは天女に会いたくて、高い高い豆のつるをどんどん登って行きました。
 何とか無事に天に着いたのですが、しかし天は広くて、木こりは道に迷ってしまいました。
 すると一羽のキジが飛んで来て、木こりを天女の家に案内してくれたのです。
 しかし、天女に会う前に父親が出て来て
「娘に会いたいのなら、この一升の金の胡麻(ごま)を明日までに全部拾ってこい」
と、言って、天から地上へ金の胡麻をばらまいたのです。
 天から落とした胡麻を全て拾うなんて、出来るはずがありません。
 とりあえず金の胡麻探しに出かけた木こりが、どうしたらよいかわからずに困っていると、あの時のキツネがやって来て、森中の動物たちに命令して、天からばらまいた金の胡麻を一つ残らず集めてくれたのです。
 木こりが持ってきた金の胡麻の数を数えた天女の父親は、仕方なく三人の娘の天女を連れてくると、
「おまえが地上で暮していた娘を選べ、間違えたら、お前を天から突き落としてやる」
と、いうのです。
 ところが三人の顔が全く同じなので、どの娘が木こりの探している娘かわかりません。
 するとチョウがひらひらと飛んで来て、まん中の娘の肩にとまりました。
「わかりました。わたしの妻は、まん中の娘です」
 見事に自分の妻を言い当てた木こりは、その天女と幸福に暮らしたということです。


山口県の民話 福娘童話集より
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Posted on 2019/06/20 Thu. 11:55 [edit]

category: 山口むかし話

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20

化けもの退治 

化けもの退治(ばけものたいじ)
~阿武郡阿東町~


 JR山口線山口駅から北へ向かって五つめに、長門峡駅(ちょうもんきょうえき)がある。その近くの阿武川(あぶがわ)の山あいに、長門峡というけしきのよいところがある。

  むかし、この長門峡に、年とった母と漁師のむすこが住んでいた。冬のある日、漁師はえものをもとめて、長門峡の中ほどの淵(ふち)を通りかかった。その淵は、淵の中に竜宮があるといいつたえられていることから、竜宮淵(りゅうぐうぶち)とよばれていた。

「もうし、もうし。」
 どこからともなく、やさしい声がした。
 漁師は、なんだろうと耳をすまして立ち止まった。
 すると、すうっとひとりの女があらわれた。わかくて美しいむすめだ。

 むすめは、「この淵のあたりは、化けものが出ます。通りかかる人をとっては食べ、今までになん人もの多くの人が食べられました。どうか、あなたの弓と矢で化けものを退治してください。りっぱに退治してくださったなら、どんな望みでもかなえてあげましょう。」
 といったかと思うと、またすうっと消えてしまった。

  漁師はふしぎに思いながらも、むすめのねがいをかなえようと、その日から毎日、竜宮淵のまわりを化けものをもとめてさがし歩いた。
 みぞれのふるある夕ぐれどきのことであった。
「きょうもだめか。」
 と、漁師は、ひとりごとをいいながら帰りをいそいでいた。みぞれまじりの冷たい風が、ようしゃなく顔にふきつける。
「おお寒。」
  思わず首をちじめ、背をまるめて走り出そうとしたとき、漁師のゆくえをえたいのしれないまっ黒なかたまりが、にゅうっとふさいだ。はっとして、漁師は弓をかまえた。黒いかたまりは、目の前にせまっている。大きな口をあけ、目をらんらんとかがやかせ、今にもとびかかろうとしている。
 漁師はとっさに横にとんで、化けものをにらみつけた。これこそさがしもとめていた化けものにちがいない。
「おのれ化けものめ。」
  漁師は、弓をひきしぼると、のどのあたりめがけて矢をひょうとはなった。
 ギャーッという声があって、化けものはどうとたおれた。
「やったあ。」
  漁師は、たおれた化けもののそばへかけよった。化けものは首に矢を立てたまま、長々と横たわっている。よくよく見ると、それは、全身を銀色の毛でおおわれた大カワウソであった。

 漁師は、そのカワウソを鈴ケ茶屋(すずがちゃや)とよばれるあたりの淵まで引きずっていった。
 そして、そこから川に投げすてた。
 岩にこしかけて休むうちに、さっきのつかれがどっと出て、漁師はついうとうととした。

 と、どこからともなくいいにおいがただよいはじめた。
 ふえやたいこのこころよい音も聞こえてきた。
 みぞれはまわたのような雪に変わっていた。

 漁師がわれにかえって川を見ると、この前の美しいむすめが、金銀、宝石をちりばめた船に乗って近づいてきた。
「化けものを退治してくださったお礼に参りました。どうぞこの船にお乗りください。」
 漁師は、むすめに言われるままに、ゆめごこちで船に乗りこんだ。船は音もなく川を下り、まもなくりっぱな御殿(ごてん)についた。

 それからというもの、漁師は月日のたつのもわすれ、毎日をゆめのようにすごした。
 美しい音楽と見たこともないごちそう。
 おとひめという美しい姫と侍女たちにもてなされる毎日。
 何ひとつ不自由のない、楽しい毎日だった。

 そのうち、漁師は、ふと年とった母と家のことを思い出した。するとやもたてもたまらず家へ帰りたくなった。おとひめたちがとめるのをふりきって、漁師はとうとう帰ることにした。
 おとひめは、みやげにたくさんの宝物をつんだ船を漁師におくってくれた。

 わが家へ帰った漁師は、それから村いちばんの長者になり、年とった母としあわせにくらしたということである。

 のちに、漁師が大カワウソを投げこんだ淵を「カワウソ淵」、長者になった漁師が住んでいたあたりを「長者が原」、とよぶようになった。
「カワウソ淵」と「長者が原」は、その後佐々並ダムができたために、今は水底にしずんでいる。
 また、竜宮へ向けて船を出したあたりは「江舟(えぶね)」と名づけられ、今もその地名は残っている。


題名:山口の伝説 出版社:(株)日本標準
編集:山口県小学校教育研究会国語部

豊徳園ホームページより

Posted on 2019/06/19 Wed. 10:34 [edit]

category: 山口むかし話

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鳳凰五斗もってこい 

鳳凰五斗もってこい


むかし、むかし、大むかしのことです。
大きな大きな森のなかに、動物たちと鳥たちとが、たくさんすんでおりました。

あるときのこと、どちらがすぐれているか、ということでいいあらそいがおこりました。
しかし、いいあらそいでは、どちらがすぐれているのか、きりがつきません。

とうとう、たたかって勝ち負けをつけよう、ということになりました。

さっそく、動物たちは、あつまって相談しました。
知恵のあるきつねを指揮者にして、作戦をいいわたしました。
「わしが相手のようすをみて、ここじゃというときにゃぁ尻っぽをあげる。そしたらみんなは前に進み、尻っぽをうしろにさげたらあとにさがる、ちゅうことにしよう」

このとき1ぴきの蜂がまぎれこんでいて、この作戦をすっかりきいていました。

いっぽう、鳥たちもあつまって話し合い、いちばん年よりで、考え深いふくろうが指揮者にきまりました。

その夜のこと、鳳凰がふくろうの家をたずねてきて
「ふくろうさん、あんたはまこと年をとっちょって考え深かろうが、昼はよう目がみえんじゃないか、それじゃ、ちいとみんなをさしずするちゅうのはむずかしかろう。なんならこのわしがかわっちゃげてもええが。そうじゃ、来年のとりいれになったら、あんたに大豆を五斗さしあげよう」
と、ふくろうの大すきな大豆五斗をやる約束をして、ふくろうからのすいせんで、かわって鳳凰が鳥たちの指揮者になりました。

さて、そのあくる日、蜂が鳳凰のとこにやってきて、
「わたしゃぁ、鳥じゃござりませんが、羽をもっちょりますけえ、どうぞ鳥さんたちの仲間にいれてつかぁされ。そのかわり、きっと勝つ手を知っちょりますが」といって、きつねの作戦をささやきました。
鳳凰はよろこんで、蜂を仲間にいれてやりました。

いよいよたたかいがはじまりました。
動物たちは、どんどんせめたててきました。
みると、蜂がいったように、きつねが尻っぽをしゃっきりと立てています。

そこで蜂が飛んでいって、その尻っぽをチクリとさしました。
「いたいッ」と、きつねは尻っぽをおろしてしまいました。
それを見て、動物たちはうしろにさがりはじめ、きつねはあわてて尻っぽをあげました。
するとすぐに、蜂がチクリとさしました。
きつねはまた、「いたいッ」とおろしました。
動物たちは、どんどんうしろにさがっていきます。
「しまった」ときつねは尻っぽをあげようとしますが、そのたびに、何かが、チクリ、チクリとさすものですから、とうとうあげることができません。

そこへ、ここぞとばかりに鳥たちがせめたてましたので、動物たちはさんざんに負けてしまいました。
鳥たちは大勝利にばんざいをさけびました。

気の毒なのはきつねでした。無理をして尻っぽをあげようとしては蜂にさされたので、細い尻っぽがはれあがって、今のように大きな尻っぽになってしまいました。

そして、鳳凰はふくろうとの約束などすっかり忘れてしまったのでしょうか、あくる年のとり入れがすんでも、約束の大豆を持ってはきませんでした。

それでふくろうは、鳳凰に約束を思い出させるために、
「鳳凰大豆を五斗もってこい、鳳凰五斗もってこい、鳳凰、鳳凰、ホーオー、ホーオー」といつまでもないているのだ、ということです。

(厚狭郡)

(注)鳳凰…古来中国で竜などとともに、四瑞として尊ばれた想像上の瑞鳥。


山口銀行編纂 山口むかし話より転載

Posted on 2019/06/18 Tue. 11:33 [edit]

category: 山口むかし話

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