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彦島のけしき

山口県下関市彦島から、風景・歴史・ものがたりなど…

塩のように好き 

塩のように好き
スペインの昔話


 むかしむかし、ある国の王さまが旅に出るとき、三人の娘にたずねました。
「王女たちよ。おみやげは何がいいかね?」
 すると、一番目の王女と二番目の王女が言いました。
「わたしは、絹(きぬ)のドレスがほしいですわ」
「わたしは、真珠(しんじゅ)の首かざりをお願いします」
 そして最後に、末の王女が言いました。
「わたしは魔法のほら穴のそばに立つ、木の枝を一つお願いいたします」
 魔法のほら穴のそばに立つ木の枝は、魔法の杖(つえ)になるのです。
「では行ってくるから、おみやげを楽しみにしていなさい」
 王さまは旅に出かけると、約束通り三人の娘におみやげを持って帰ってきました。
「どうだい、うれしいかね。お前たちはわしがどのくらい好きか、言ってごらん」
「わたしの命と、同じくらい好きですわ。お父さま」
「わたしの宝物より、もっと好きですわ。お父さま」
 一番目の王女と二番目の王女は、そう答えました。
 そして末の王女は、魔法の木の枝をもらって言いました。
「わたしはお父さまが、塩と同じくらい好きですわ」
 それを聞いた王さまは、びっくりです。
「なに、塩だと! このわしを、塩と同じぐらいしか好きでないと言うのだな。そんな娘は、とっとと出て行け!」
「お父さま、わたしにとって塩は」
「うるさい! 出て行け!」
 王さまに追い出された末の王女は魔法の木の枝を持つと、泣きながらお城を出て行きました。

 追い出された王女が森をトボトボ歩いていると、むこうからヒツジ飼いの娘が来ました。
 王女は涙をふきながら、ヒツジ飼いの娘に言いました。
「娘さん。あなたの着ている毛皮とわたしのドレスを、取り替えてくださいな。わたしはお城を追い出されて、自分の力で生きていかなくてはならないの。ドレスは、いらないの」
 ヒツジ飼いの娘はおどろきましたが、自分のボロボロ毛皮と王女のドレスを取り替えてあげました。
 王女はボロボロの毛皮を着ると、また歩き出しました。
 そして途中で馬車(ばしゃ)に乗った人に道を教えてもらい、となりの国へ行きました。
 となりの国へ行った王女は、となりの国のお城で働く事にしました。
 となりの国の王さまはまだ若く、これからおきさきさまを選ぶためのパーティーを開くところでした。
 それを知った王女は、王さまの近くへ行くとわざとぶつかりました。
「これ、気をつけなさい。毛皮の娘よ」
「ごめんなさい」
 王女は顔を見せないようにして、あやまりました。
 そしてお城を抜け出して自分の小さな部屋に行くと、ボロボロの毛皮を脱いで魔法の木の枝をふりました。
「魔法のつえよ、魔法のつえよ。うす桃色の絹のドレスと、二頭立ての馬車がほしいの」
 するとたちまち、はだかだった王女はうす桃色のドレスを着ていました。
 そして外には、白い二頭のウマと馬車が待っていました。
 王女は馬車に乗ると、お城の広間へ行きました。
 うす桃色のドレスを着た王女が現れると、みんなはその美しさに声をあげました。
「なんと、美しい人だ」
「どこの国の王女さまだろうか?」
 するとそれに気づいた若い王さまが、王女にダンスをもうしこみました。
 王女は羽のようにかるく踊り、咲たての花のような笑顔でほほえみました。
  王さまはすぐに、王女のことが好きになりました。
「あなたは、どこの国の王女さまですか?」
「わたしは、毛皮の国の王女です」
 王さまは王女に指輪をおくり、明日の晩も必ず来てくれるようにと言いました。

 次の夜、王女は青いラシャ(→羊毛で、厚くて密な毛織物)のドレスを着て、四頭立ての馬車で出かけました。
 王さまは王女に首飾りをおくり、明日の晩も来てくれるようにたのみました。

 次の夜は、王女は黒いドレスで、六頭立ての馬車でお城へ出かけました。
 王さまは、王女とダンスをしながら言いました。
「おきさきを決めるパーティーは、今夜でお終いです。なぜならわたしのおきさきが、決まったからです。どうかわたしと、結婚してください」
 けれど王女はニコニコ笑うと魔法の木の枝をふり、風のように六頭立ての馬車を走らせて帰ってしまいました。
 好きになった王女に逃げられた王さまは、その日から寝込んでしまいました。
 王さまが何も食べなくなったので、召使いたちは王さまの体を心配しました。
 すると毛皮を着た王女が、料理長にたのみました。
「わたしに、ケーキを作らせてください。わたしのケーキを王さまが一口でも食べたら、きっとお元気になられますわ」
 料理長は、
「じゃあ、一度だけだぞ」
と、ケーキの材料をそろえてくれました。
 王女は手早くケーキを作り、王さまのもとへとどけてもらいました。
「王さま、ケーキをお持ちしました」
 召使いの娘が王さまに言いましたが、王さまはケーキを食べようとはしません。
「王さま、少しでも食べないと、体に悪いですよ」
「・・・そうだな」
 王さまはベッドの上で、王女の作ったケーキにフォークをさしました。
 するとケーキの中から、毛皮の国の王女にあげた指輪がコロリと出てきたのです。
 王さまは目をかがやかせて、召使いの娘に命じました。
「このケーキを作った者に、もう一度ケーキを作らせよ」
 ふたたびケーキを作ることになった王女は、今度はケーキに首飾りを入れておきました。
 そしてその首飾りを見つけた王さまが、召使いに言いました。
「間違いない。このケーキを作った者を、ここへ連れてまいれ!」
「しかし。王さま、このケーキを作ったのは、きたない毛皮娘ですよ」
「きたない毛皮娘? そう言えばバーティーの最初の晩、わたしにぶつかったのはボロボロの毛皮を着た娘は。・・・そうだったのか! それでよい。はやくここへ」
 王さまがそう言ったとき、部屋の扉が開きました。
 そこに立っていたのは、まっ白なドレスを着た美しい王女です。
 王さまは涙を流して喜び、そして家来たちに言いました。
「結婚式だ! すぐに用意しろ!」

 若い王さまと王女は結婚することになり、色々な国の王さまたちが結婚式によばれました。
 その中には王女のお父さんもいましたが、まさか自分の娘の結婚式とは知りません。
 色々な国の王さまたちの前に、料理長がうでをふるったごちそうが並べられました。
 色々な国の王さまたちは、
「おいしい、これほどおいしい料理は始めてだ」
と、言って、喜んで食べ始めました。
 王女のお父さんも、出されたごちそうを口にはこびました。
 しかしそのとたんに、お父さんは変な顔をしました。
「・・・なんだ、この料理は?」
 王女のお父さんが食べた料理には、全然味がしなかったのです。
 なぜなら王女が、
「あの王さまのお料理には、塩を絶対に入れないでください」
と、料理長にたのんだからです。
 そのうちに王女のお父さんは、自分の料理には塩が入っていないことが分かりました。
 すると王女のお父さんは、ボロボロと涙を流しながらとなりの席の王さまに話し出しました。
「わたしの末の王女は、わたしの事を塩と同じくらい好きと言いました。
 それを聞いたわたしは怒って、末の王女を追い出してしまいました。
 しかし今日、塩の入っていない料理を食べて、塩がどれほど大切な物かを知りました。
 そして末の王女が、どれほどわたしを愛していたかも」
 そのとき、結婚する王女が近づいて来て、お父さんのほっぺたにキスをしました。
「お父さま、わかっていただけてうれしいですわ」
 そして王女は、料理長ににっこり笑ってたのみました。、
「お父さまのために、わたしの作った料理を持ってきてくださいな」
 その料理は塩を上手に使った、とてもおいしい料理だったそうです。

おしまい
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Posted on 2013/10/04 Fri. 09:34 [edit]

category: 世界昔話

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