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彦島のけしき

山口県下関市彦島から、風景・歴史・ものがたりなど…

シルクロードから伝来した“ローマ” 

シルクロードから伝来した“ローマ”


フクの本場、南風泊市場が活気づく冬。
海峡に舞う粉雪をながめながら、熱燗で“フクにて一酌”の贅沢はいかがでしょう。

最高のフクといえば、トラフクの生きもの、特に、腹ビレの白い“白イキ”であることはよく知られていますが、フクはえ縄船が、これを一尾でも多く、南風泊市場に持ち帰る方法として、意外に知られていない秘策があります。

その秘策とは、フクのお腹の膨らませぐあいを調整することにあります。

微妙に調整する道具は「フキ」という、長さ40センチの火箸のような金属です。
直径1センチほどで、手元から尖った先端まで管になっていて、先端には小さな三つの穴が並んでいます。

フクはえ縄船には“フキの名人”がいて。.、釣り上げたフクの口から、フキをお腹まで入れ、大きく膨らんだお腹の空気を微妙に吸い取り、膨らみ加減を調整するのです。

では、なぜその調整が必要なのでしょうか。
フクは、お腹の膨らみぐあいで、生簀の中を泳ぐ層、つまり水深が違うからです。

満杯にお腹を膨らませたフクは、生簀の最上部、八分目に膨らんだフクは、やや深い層、五分目は中ほどの層、スリムなお腹のものは、最も深い底の辺りを泳ぐことになり、ぶつかることもなく、快適に、効率的に泳ぐことができます。

これは生きたフクを大切に持ち帰るための、秘策なのです。

さて、フクの賞味にはいろいろあり、関東がフク刺しを好み、関西がフクチリを好んでいることも、承知のことですが、フクチリを彩るのが、白菜やネギ、そしてシュンギクです。

下関を含め北浦一帯では、このシュンギクを“ローマ”と呼んでいました。

数年前のこと、そのローマのことで、テレビ取材の相談を受けました。
それも、黒柳徹子さんで有名な「世界ふしぎ発見」のスタッフからです。
「ローマは、シルクロードを経て伝来したもので、山口県の西部、下関地方に限って呼ばれている。そのローマを歌い込んだ“数え歌”があると聞く。その数え歌を歌える人を探して欲しい」
とのことです。

早速、方々へ尋ねると、シュンギクのことをローマと確かにいっていた、という人は多くいめねのの、ローマを織り込んだ数え歌となると「知らない」の一言で、電話は切れてしまいます。

下関市連合婦人会発刊の「ふるさとのうた」には、数え歌が幾つか収録され、その中に、
「いちじく にんじん さんしょに しいたけ ごんぼう ろーま なすびに はったけ くわい とうがん」
と、確かに記述はありますが、さて火と探しです。

一度はあきらめたものの、数日後、再びスタッフから「ぜひ、もう一度探索してほしい」とのことです。

そして二日後、おばあちゃんが、電話のむこうで思い出しながら歌ってくださったのです。
もちろん、ロケに訪れたスタッフ一同も、喜びの笑顔のうちに収録することができました。

78歳になるおばあちゃんは、10歳のころ、学校から帰ると妹を背負っての子守が仕事で、近くの子どもと、手まりをつきながら歌っていたとのことです。
他にも手まり歌や、手あそび歌を披露してくださいました。

この取材には、意外にももう一つの発見がありました。
おばあちゃんのご主人、浜口二郎さんの登場です。

昭和11年発刊の「安岡町経済更正計画書」に、
「ローマは羅馬の国から渡来した意味であろう…」
の記述を発見。
シュンギクは、安岡町横野で古くから栽培され、明治18年ころ、門出又吉という人が、大葉の改良に成功しています。
その後、大正・昭和になって、日本全国へと広まり、栽培されるようになったのです。

また、昭和10年、安岡町では、約60万束が販売され、6000円の売り上げがあったことも記されています。

テレビ取材から、ローマの栽培が、遠くイタリアのローマからシルクロード・中国を伝来、下関の横野で始まったこと、そして、ローマと呼ぶ地域が、下関地方に限られている理由の大発見ともなったのです。

フクチリを賞味されるひととき、シュンギクが、シルクロードを渡って来たことを思いめぐらすと、フクの味、ヒレ酒の味も、また格別のものとなることでしょう。


安富静夫著「関門海峡雑記帳」(増補版)より
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Posted on 2017/07/19 Wed. 10:24 [edit]

category: 下関あれこれ

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