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彦島のけしき

山口県下関市彦島から、風景・歴史・ものがたりなど…

長者ヶ渕 

長者ヶ渕


 むかしむかし、ずっとむかしのことです。
 おじいさんが宮川(みやがわ)へ魚をとりにいきました。強い日差しの下で、わき目もふらずに魚をとっていました。
「おゃ!へんなものが見えるぞ」
川底に大きなかたまりがあるのを見つけました。
「やゃ!これはなんじゃ?」
よく見るとそれは、うるしあぶらのかたまりでした。上流の山や谷から、うるしの木から出る白っぽいえきが、しずくとなってたれ落ち、川底にしずみ長い月日の間に大きなかたまりになっていたのです。
 そのころ、うるしのえきは、刀のさやや、馬のくらなどにぬり、たいへんきちょうなものでした。なにしろ一本のうるしの木から、ほんのわずかのえきしか出ないのですから、牛ほどのかたまりを見つけたおじいさんは、魚をとることもわすれてうるしのかたまりをとって売りにいきました。
「ひぇーこんなにもらっていいのかのう。」
びっくりするくらいの小ばんをもらったおじいさんは、はな歌で家へ帰りました。

 くる日もくる日も、うるしのかたまりをとってきては売って、笑いも止まらないほどの大金持ちになりました。わき目もふらず一生けんめい魚をとっていたのに、大変ぜいたくなくらしをするようになりました。
 さぁ、村では大変なうわさです。みるみるうちに大金持ちになったおじいさん。村人たちはふしぎに思いました。
 みんなのうわさを耳にしたおじいさんは、うるしのありかを村人たちに知られると大変だと思い、もけいのヘビをつくり川底にしずめ村人たちに「あのふちには大蛇(だいじゃ)がいる」
と言いふらしました。びっくりした村人たちは
「そんなところへはこわくって行けねぇ」とおそれて、だれもよりつこうとしませんでした。
「これでおれが一人じめできる」
と安心したおじいさんは、こっそりとうるしをとりに出かけました。
「へへぇ、これでまた小ばんがふえるわい」
よくを出して川底に手を入れようとしたとき、風が川の上にうずをまいてふきあれ
「ウォー!」
といううめき声とともに、おじいさんの作ったもけいのヘビが、本物の大蛇となってあらわれ、おじいさんを一気にのみこんでしまいました。
 そのおじいさんを市守長者(いちもりちょうじゃ)といい、うるしのかたまりがあったところを長者ヶ渕(ちょうじゃがふち)とよんでいます。


著作/野田 那智子(敬称略)
協力/玉城町
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Posted on 2013/04/28 Sun. 10:03 [edit]

category: 日本の民話

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