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彦島のけしき

山口県下関市彦島から、風景・歴史・ものがたりなど…

下関の地名19 福浦 

ボロ吉奉公


 むかし、福浦の船宿に、宗吉という一人息子がいた。宗吉は大変ノロマで、何をしても人の五倍も十倍も時間を費やしたので、人びとは宗吉と呼ばすノロ吉と呼んでいた。
 しかし、ノロ吉はとても気のやさしい男で、ある日のこと、金比羅様に参詣して、その境内で傷ついたフクロウを見つけ、連れて帰り手厚く介抱した。やがてフクロウの傷は元通りに良くなったが、山に放してやっても、すぐにノロ吉のそばに戻ってきて、そのうち、とうとう船宿に居ついてしまった。

 そんなある日、西国の海賊が彦島を襲い、福浦を根城にして近海を荒らしはじめた。船宿の人びとは慌てふためいて下関へ避難したが、ノロマのノロ吉は逃げおくれた為、海賊に殺され、海に捨てられてしまった。

 何年かたって、海賊は退治され、人びとも戻って来たが、空き家となっていたノロ吉の家からフクロウが飛び出て来た。毎日、ノロ吉を探しまわっていたことに気づいた人びとは、その姿があまりいじらしいので、
『おぅ、おう可哀そうに、お前はたった一人で留守番しちょったんかい。ノロ吉はのぅ、下関からそのまま都へ奉公に行ったんじゃ、当分は帰って来れんじゃろう』
 と、フクロウに告げた。
 フクロウは首をかしげて『ホウ、ホウ』と、その話を聞いていたが、その日からどこともなく飛び去ってしまった。
 その夜から、彦島のあちこちで啼くフクロウの声は、『ノロキチホウコウ』と聞こえたが、人びとはフクロウのことを『ボロ吉奉公』と呼ぶようになったという。


富田義弘著「平家最後の砦 ひこしま昔ばなし」より

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Posted on 2019/02/03 Sun. 10:02 [edit]

category: 下関の地名

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