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彦島のけしき

山口県下関市彦島から、風景・歴史・ものがたりなど…

下関の地名7 姫ノ水 

きぬかけ岩


 むかし、河野権之進という人が、田ノ首という村からの帰り道、小さな山すそにさしかかると、そこに今まで見たこともない流れがありました。
 不思議に思って流れにさかのぼって行くと林の中に湧き水があり、妙齢の姫が衣を濯いでいました。それはそれは美しい姫で、権之進は思わず声をかけました。
『あなたさまは、どこからおいでなされたのかな』
 すると姫は眼をうるませて答えました。
『私は、伊予の国に住んでいましたが、さる戦いで敗れ、夫と生き別れになりました。そこで、こうして諸国を尋ね歩いていますが、かいもく消息を掴めません。もし、何かお心当たりでもございましたらお教えください』
 権之進は哀れに思って姫を自分の家に連れて帰り、その夜はゆっくり休ませました。
 ところが翌朝、眼をさましてみると、姫の姿が見当たりません。驚いた権之進は八方手分けして捜しましたが、とうとう行く方をつかむことが出来ませんでした。

 そのうち権之進は、忘れるともなく忘れてしまっていましたが、数十日たったある日、姫の衣が小戸の大岩にかけられてあるのを、浦びとが見つけて大騒ぎになりました。
 そこで初めて権之進は、姫が急潮に身を投げたことを知り、その岩に地蔵尊を建てて冥福を祈りました。

 いつの頃からか、浦びとたちは、姫が衣を濯いでいた流れを『姫ノ水』、衣がかけられてあった大岩を『きぬかけ岩』と呼ぶようになりました。


富田義弘著「平家最後の砦 ひこしま昔ばなし」より

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Posted on 2017/08/09 Wed. 10:14 [edit]

category: 下関の地名

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