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彦島のけしき

山口県下関市彦島から、風景・歴史・ものがたりなど…

若侍に恋をした白狐 

若侍に恋をした白狐


江戸時代の終わりごろの話です。

長府に武術にすぐれたなかなかの美男の若侍がいました。この若侍はたまたま稲荷町に立ち寄ったさい遊女と親しくなり、それからというものひまをみつけては長府から野久留米街道を通り稲荷町へ通うようになりました。
その日も夜更けて稲荷町をでて、だんのうらの立石神社を通り過ぎるころから、だれかが、後を付けて来るような気配がします。立ち止まって後を振り向いて見ると、何か白いものが、ボーっと立っています。剣術のすぐれている若侍ですが、やはりぶきみで、小走りに歩むと、その白いものもやはり、間隔をおいてついてきます。

こうしたことが毎回続くので、ある月明かりの夜、よし今夜こそ正体をみやぶってやろうと、若侍はひそかに計画をねりました。

またいつもの通り、立石稲荷神社をすぎたころから、白いものがついてきます。前田、野久留米を通り、長府の町へ入る少し手前で若侍は、急に腹が痛くなったふりをして地面にうずくまりました。
そうしてようすをうかがっていると、例の白いボーとしたものも、いっしゅん立ち止まって、それからしだいに倒れている若侍の方へ近づいてきます。
若侍がよくみると、それは、白い着物を着て女性の姿をしていました。
「いつもつけてきたのは、この女性だったのか、それにしても、こんな時間… そうか、さては、狐か狸のしわざだな…」
と、若侍は、それならば一刀のもとにきりすててやろうと、呼吸をととのえ、刀の柄を手にあてて近づくのを待ちました。

白い着物をきた女性は、そんなこととは知らずに近づいてきます。若侍はここぞとばかりに、地面にひざをつけたままの姿から、刀を抜き、切り伏せました。
「キャウン」
という悲鳴がおこり、その女性は、空中に飛び上がりました。若侍が起き上がってみましたが、もうその姿はどこにも見当たりません。しかし、その晩の月明かりで、真黒い血が点々として流れているのを見つけました。

若侍がその血の流れを追っていくと、血は野久留米から前田、だんのうらと街道に沿って流れていましたが、みもすそ川を渡って立石稲荷の前までくると急に右に曲がって鳥居の下、石段をくぐり神殿奥深く消えていました。

若侍は、そこまで来ると急に寒気がして、そのまま家に帰り、床につきましたが、寒気はなおらず十日くらい寝付きました。
しかし、体はもとに回復しても、あの白い着物を着た女性を切ったことがいつまでも目の前にちらつき、次第に元気を失い、とうとう若くして死んでしまいました。

恐らく狐のたたりだったのでしょう。
それにしても、あの切られた狐は、きっと若侍に恋をして若侍がだんのうらを通るたびにつきまとったのでしょう。


(注)
狐が人に恋をしたり、神様のおつげをしたり、あるいは人をだましたりするお話は、各地にたくさん残っています。
この「下関の伝説」の中にある、「立石稲荷の大石」の話や、「赤田代のキツネ」「キツネのくれた刀」なども、そうした狐のお話です。
内日地区などでは、今でも狐がよく人家の近くまで出てくるそうです。


『下関の民話』下関教育委員会編
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Posted on 2019/03/22 Fri. 11:13 [edit]

category: 下関の民話

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