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彦島のけしき

山口県下関市彦島から、風景・歴史・ものがたりなど…

カニの恩返し 

カニの恩返し


 むかし、お寺に女のお手伝いさんがいて、いつも、お寺のうしろの川でおかまを洗ってたんやと。
 川には、カニがぎょうさんいたんで、お手伝いさんは、
「もつけねえの。食べるもんが、なあもねえんやろ」
って言うて、かま落としのままつぶを、カニにやっていたんやと。
 カニは、ひどう喜んで、毎日ぎょうさんよってきて、ままつぶを食べてたんやと。

 ある日のことやの。
 お手伝いさんが、おかまの底のスミをながたんでごしごしと落といていたら、空がいっぺんにくもってもて、竜(りゅう)が、黒雲をまきたてながら空へと上がっていったんやと。
 ほいたら、お手伝いさんが、
「ああ、竜があがっていく!」
って言うて、手に持ってたながたんを、思わずふりあげたんやと。
 ほいたら、竜は、ながたんの金気(かなけ)にあたって、じんつう力を失ってもて、みてる間に空から落ちてもたんやと。
 ほんで、竜は、おこってもて、
「わしのしゅぎょうをじゃましたのは、だれじゃ!」
って、大声でどなると、いけえぃ目ん玉をひからかいて、お手伝いさんめがけてむこてきたんやと。
 お手伝いさんは、もう、びっくりしてもて、いちもくさんににげだし、お寺の高い石段を、ハアハア言いながらかけのぼってって、けいだいまでくると、ほこにふせてあったおけの中に身をかくいてもたんやと。
 ほんでも、竜は追っかけてきて、お手伝いさんがぶるぶるふるえながらかくれてるおけを、長い体でぐるぐるまいてまうと、しめつけてしっぽでピシンピシン、ピシンピシンとたたきつけたんやと。
 お手伝いさんは、おけの中で、ピシンピシン、ピシンピシンと竜のしっぽで打たれるたんべに、
「いてえ、いてえ」
って、泣いてさわいでたんやと。

 ほいたら、その声を聞きつけたカニが、川からぎょうさんはいあがってきて、ぞろぞろ、ぞろぞろとけいだいまでやってくると、いっぺんに竜にむこてって、とうとう、カニのはさみで竜の体をちょんぎってしもたんやと。
 ほんで、やっとお手伝いさんは、おけの中から外に出ることができて、いのちが助かったんやと。
 カニは、いつも、お手伝いさんからままつぶをもろて食べていたさけ、恩(おん)返しにお手伝いさんのいのちを助けたんや。
 何でもかわいがっておくと、どんなちっちぇいもんでも、必ず恩を返すんやの。


「読みがたり 福井のむかし話」(株式会社 日本標準)より
協力/福井のむかしばなし研究会©
福井県小学校長会 黒田 不二夫
福井市豊公民館 中島 美千代(敬称略)
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Posted on 2013/06/27 Thu. 15:30 [edit]

category: 日本の民話

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