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彦島のけしき

山口県下関市彦島から、風景・歴史・ものがたりなど…

長祖生きつね 

長祖生きつね


むかし、むかし、長祖生(ながそう)というところに、いたずらもののきつねが住んでいました。

そのきつねは、夜になると、道をとおる人をだましては、もち物をとりあげたり、わざと道をまちがえさせたりするので、人びとからは「長祖生きつね」といわれて、ひょうばんになっていました。

ある晩、たくましい若者四、五人が町から帰るとちゅう
「今夜あたりきつねが出んもんかのう」
「わしらがこらしめてやるのにのう」などといいながら、長祖生(ながそう)までやってきました。

すると、そのとき、船が岩に乗りあげたらしく、浜のほうから、船頭(せんどう)がしきりに助けをもとめていました。
若者たちは、海にはいり、岩から船をおろそうと、力をあわせて船をおしました。
しかし、船はなかなかうごきません。

そのうち、夜が明けてみると、なんと今までいっしょうけんめいおしていたのは、船ではなく浜の大岩でした。

「わしらも、きつねにいっぱいくわされたわい」
と、若者たちは、たいそうくやしがりました。

また、ある晩のこと、おしょうさんが長祖生(ながそう)を通りかかると、女の子がひとりで、しくしく泣いていました。
おしょうさんは「長祖生きつねにちがいない」と見やぶり、こらしめてやろうと声をかけ、背なかに背おいました。

しかし、おしょうさんが寺に帰りつくと、きつねは背なかからすりぬけてしまいました。

部屋を見まわすと、床の間のほていさんが二つになっています。
そこで、ほていさんを線香でいぶすと、一つがとびだしました。

すると、こんどは茶がまが二つになっています。
しかし、一つはかたちが長いので、それを火にかけました。
さすがのきつねもたまらず、とうとうすがたをあらわし、おしょうさんに手をついてあやまりました。

そこで、おしょうさんは、念のために、きつねから「わび証文(しょうもん)」をとって、ゆるしてやりました。

(注)ほていさん…七福神(しちふくじん)の一人で弥勒菩薩(みろくぼさつ)の化身(けしん)。ここでは置物のこと。

その、よく晩のことでした。
おしょうさんのへやのしょうじをたたくものがいるので、あけてみると、きつねがおりました。
そして、ゆるしてもらったお礼にと、みごとな鯛を二尾おいて帰っていきました。
「なるほど、きつねも本心に返ったようじゃな。もう、これからは、いたずらもしまい」

そして、そのあくる朝のことです。
きつねがわざわざもってきてくれた鯛をと、しまっておいた戸だなの中をのぞいてみると、そこに鯛のすがたはなく、大きな葉っぱが二枚かさなっていた、ということです。

(玖珂郡)
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Posted on 2019/07/06 Sat. 10:01 [edit]

category: 山口むかし話

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