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彦島のけしき

山口県下関市彦島から、風景・歴史・ものがたりなど…

みょうがの宿 

みょうがの宿


むかし、むかし、吉敷(よしき)郡の嘉川(かがわ)という宿場に、欲の深い夫婦が宿屋を営んでおりました。

しかしそのわりにはもうからず、夫婦は番頭や女中たちに小言ばかりいっていました。

そうしたある夏の日の夕方のことです。
客引きに出ていた番頭があわてて帰って来て
「今、えろう景気のいい客人を七人もおつれしました」と、にこにこ得意顔で申すのでした。

表を見ると、身なりのよい客人たちが着いたばかりのところです。
「何でも宮島様へのお礼詣り(おれいまいり)じゃそうで、たんまり銭子(ぜにこ)はあるから、ええ部屋に通してくれとおっしゃるのです」

聞いて、宿の主人はとたんにほくほく顔。
番頭に座敷へ案内させると、女房を呼んで相談しました。

「今夜の客は、えろう持っとるそうじゃで、何かごっそりとつかわせる手はないもんかいの」
というと、女房は
「そうそう、みょうがをたくさん食べると、もの忘れをするということじゃ。みょうがのごちそう責めで、客人のさいふを忘れさせることにすりゃええじゃないかいの」
といいました。

すると主人は、奥の座敷へ飛んで行き
「手前ども自慢の暑気払い(しょきばらい)の料理“みょうがの重喰い(かさねぐい)”というものを差し上げることにいたしとうござります」
と、うまいこと挨拶しました。

客人たちは
「空腹じゃで、一刻も早う、それで頼みますじゃ」と、機嫌のよい返事をしてくれました。
主人はほっと安心し、すぐさま帳場にいってみょうが料理の指図をしました。

「うまい具合にいったわい」
と、欲の深い夫婦はわくわくしながら互いに顔を見合わせて、うなずき合いました。

その翌朝、客人たちはまだうっすらと暗いうちに、支度もそこそこに、たって行きました。

客人を送り出して、みんながほっとしていたころ
「忠助や、忠助や」呼ばれて番頭の忠助が主人の前にかしこまると
「あれだけみょうがを食べりゃ、さいふの四つや五つぐらいは忘れていったに違いない。早う座敷を見てくるんじゃ」
主人にいわれて番頭は、奥の座敷へ飛んで行きました。

しばらくして帳場に戻ってきた番頭に主人がたずねますと
「座布団や布団の下、押し入れまでみましたが客人たちの忘れもんは、何一つござりません」と、両手を鼻の先で振るばかりでした。

「そんなことあるもんかい」主人が女房と奥の座敷に行こうとすると
「旦那さま、それはそうと客人たちからゆうべの泊まり賃もらいうけましたかい」番頭がたずねましたが
「いや、わしは知らんが、お前もらってくれたかい」女房にたずねますと、女房は女房で
「いやぁ、わたしゃお前さんがもろうたもんと思っちょりました」といったので
「しもうた。あんまりみょうがを食べさせたんでかえって宿賃はらうのを忘れて行ってしもうたわい」
宿屋のみんなは大騒ぎし、あわてだしたということです。

(吉敷郡)


山口銀行編纂 山口むかし話より転載
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Posted on 2019/07/04 Thu. 11:30 [edit]

category: 山口むかし話

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