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彦島のけしき

山口県下関市彦島から、風景・歴史・ものがたりなど…

白蛇伝 

白蛇伝


むかし、むかし、岩国の今津というところに、平太という漁師が母親と暮らしていました。

あるどんよりとした空模様の日のこと、平太は漁に出るのをためらっていましたが
「今日一日ぐらい大丈夫じゃろう」と、誘いにきた仲間といっしょに船を出しました。

漁を始めると、面白いように魚がとれます。
平太たちは、ぐんぐん沖へ向かってしまいました。

やがて、近くの島で昼飯をすますと、仲間の一人が白蛇をみつけました。

今までにみたこともない蛇なので、めずらしいやら、気味が悪いやら、仲間は手に木切れをもって、いたずらをはじめました。
右に行けば左へ、左にいけば右へはねつけられ、白蛇はとうとう傷ついたからだをまるめて、じっと動かなくなりました。

その様子をみた平太はかわいそうになって
「おい、みんな、もうよさんかい。この白蛇は、この島の主かも知れんぞな」
そういって、平太はおそれもなく白蛇をつかむと、草のしげみの中に逃がしてやりました。

それからまた、平太たちは漁を始めることになりました。
ところが、そのころになると、空はすっかり雨雲に覆われ、風も強くなって、たいへんなしけ模様となりました。
「あぶないぞっ」と、誰かが叫んだときには、もう皆は海に放り出され、波にのまれてしまいました。

それから、しばらくたって、平太がふっと気が付くと、さっき昼飯を食べた島の浜辺に打ち上げられていました。
あたりをみまわすと、あらしは止んでいて、空はからりと晴れわたっています。
「わしは助かったのじゃ」と、平太は喜びました。

しかし、よくよく考えてみると、この島には誰も住んでおらず、帰る船も助けを呼ぶこともできません。

思案にくれ、じっと岩に腰をおろしていると
「平太さん、平太さん…」と呼ぶ声が聞こえます。

「あ、さっきの白蛇じゃ」
平太が振りかえってみると、白蛇は平太の前を通りすぎて、海の中へはいっていきました。

すると、白蛇が通ったあとには、ざわざわと波がわかれて小道ができ、それはずーっと今津の浜まで向かっているのです。

「これで今津に帰れるかもしれん」
平太は、白蛇の後について、ずんずん歩き、とうとう今津まで帰り着くことができました。
「ほんとうにわしは助かったぞ」
ありがたいと思って、後ろを振りかえってみますと、通ってきた道は跡形もなく消えていました。
平太は、白蛇をそっとふところに入れて家に帰り、大切に飼うことにしました。

こうして、白蛇は今津に住みつき、平太は末長く幸せに暮らしたということです。

(玖珂郡)


山口銀行編纂 山口むかし話より転載
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Posted on 2019/07/08 Mon. 11:51 [edit]

category: 山口むかし話

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