彦島のけしき
山口県下関市彦島から、風景・歴史・ものがたりなど…
えんこうの一文銭
えんこうの一文銭
むかし、むかし、大きな河をはさんで東と西の岸に、それぞれおじいさんとおばあさんが住んでおりました。
東のおじいさんとおばあさんは、たいへん正直者で、一匹の猫をかわいがっていましたが、貧しいので充分食べさせることができませんでした。
そこで、何とかゆとりができますようにと、毎晩お祈りしていたところ、河の竜宮さまから、えんこうの一文銭(いちもんせん)を授かりました。
ふたりはたいへん喜んで、天井裏に祀(まつ)ったところ、東のおじいさんとおばあさんは日増しにお金持ちになりました。
ある日のこと、東のおばあさんは西のおばあさんにこのことを話して聞かせました。
すると、欲の深い西のおじいさんとおばあさんは
「縁起の良い、えんこうの一文銭をちょっと貸してくれまいか」
と、頼み、正直者の東のおじいさんは貸してやりました。
西のおじいさんは、ほくほく喜んでもって帰り、さっそく天井裏につるしましたところ、その日から、身代(しんだい)がしだいに盛りかえしてきました。
するとこんどは、東のおじいさんたちの家は、また昔のように貧乏になっていきました。
東のおじいさんは、西のおじいさんに返してもらうよう催促にいきましたが、どうしても返してくれません。
困り果てた東のおじいさんは、とうとう家の猫に
「えんこうの一文銭を、西からもってきてくれんか」と、頼みました。
日頃のご恩返しにと、猫はさっそく出かけましたが、大きな河を渡れずに困っていました。
そこへ、犬が通りかかったので、猫はわけを話し、犬の背にのって、河を渡してもらいました。
そうして西につくと、ちょうど鼠(ねずみ)がおりました。
猫は鼠を呼び止めて、一文銭を西のおじいさんの家の天井裏からもってきてもらうよう頼みました。
鼠は天井裏にあがると、一文銭のひもをかみきって、もってくると、猫に渡しました。
猫は鼠にお礼をいって、一文銭を口にくわえると、また犬の背に乗って河を渡りました。
ちょうど河の中ほどに来たときのことです。
犬が話しかけたため、猫はつられて口を開けてしまい、一文銭を河の中に落としてしまいました。
「あっ、大変」と、猫は犬の背でわめきましたが、いくら泳ぎが得意な犬でも水の中にはもぐれません。
とにかく、東の岸まで泳ぎついたところへ、一羽の鳶(とんび)が舞い降りてきました。
猫と犬は、鳶に一文銭をとってもらうよう頼みました。
そこで鳶は、河の上にいた鵜(う)の鳥に、鵜の鳥は、河の中にいた鮎(あゆ)に頼んで、ようやく水底の一文銭を探し出し、猫に渡しました。
猫は、ていねいにお礼をいうと、一文銭を拾いあげたよろこびのあまり
猫に鼠(ねずみ)に空たつ鳶(とんび) 河にゃ鵜(う)の鳥、鮎(あゆ)の魚
猫に鼠に空たつ鳶、河にゃ鵜の鳥、鮎の魚
と、歌をうたいながら帰って行きました。
しかし、歌の中には、大切な一文銭を落とすようなことをさせたので、河を渡してくれた犬のことは一言もはいっていません。
河を渡してくれた犬の有り難さを忘れてしまったのです。
この歌を聞いた犬は、猫の恩知らずと、たいへん腹をたてました。
それ以来、猫は何かひとつ忘れるくせがつき、犬は猫をみれば、そのときのくやしさが忘れられず、歯をむきだして追い回すようになった、ということです。
(阿武郡)
山口銀行編纂 山口むかし話より転載
むかし、むかし、大きな河をはさんで東と西の岸に、それぞれおじいさんとおばあさんが住んでおりました。
東のおじいさんとおばあさんは、たいへん正直者で、一匹の猫をかわいがっていましたが、貧しいので充分食べさせることができませんでした。
そこで、何とかゆとりができますようにと、毎晩お祈りしていたところ、河の竜宮さまから、えんこうの一文銭(いちもんせん)を授かりました。
ふたりはたいへん喜んで、天井裏に祀(まつ)ったところ、東のおじいさんとおばあさんは日増しにお金持ちになりました。
ある日のこと、東のおばあさんは西のおばあさんにこのことを話して聞かせました。
すると、欲の深い西のおじいさんとおばあさんは
「縁起の良い、えんこうの一文銭をちょっと貸してくれまいか」
と、頼み、正直者の東のおじいさんは貸してやりました。
西のおじいさんは、ほくほく喜んでもって帰り、さっそく天井裏につるしましたところ、その日から、身代(しんだい)がしだいに盛りかえしてきました。
するとこんどは、東のおじいさんたちの家は、また昔のように貧乏になっていきました。
東のおじいさんは、西のおじいさんに返してもらうよう催促にいきましたが、どうしても返してくれません。
困り果てた東のおじいさんは、とうとう家の猫に
「えんこうの一文銭を、西からもってきてくれんか」と、頼みました。
日頃のご恩返しにと、猫はさっそく出かけましたが、大きな河を渡れずに困っていました。
そこへ、犬が通りかかったので、猫はわけを話し、犬の背にのって、河を渡してもらいました。
そうして西につくと、ちょうど鼠(ねずみ)がおりました。
猫は鼠を呼び止めて、一文銭を西のおじいさんの家の天井裏からもってきてもらうよう頼みました。
鼠は天井裏にあがると、一文銭のひもをかみきって、もってくると、猫に渡しました。
猫は鼠にお礼をいって、一文銭を口にくわえると、また犬の背に乗って河を渡りました。
ちょうど河の中ほどに来たときのことです。
犬が話しかけたため、猫はつられて口を開けてしまい、一文銭を河の中に落としてしまいました。
「あっ、大変」と、猫は犬の背でわめきましたが、いくら泳ぎが得意な犬でも水の中にはもぐれません。
とにかく、東の岸まで泳ぎついたところへ、一羽の鳶(とんび)が舞い降りてきました。
猫と犬は、鳶に一文銭をとってもらうよう頼みました。
そこで鳶は、河の上にいた鵜(う)の鳥に、鵜の鳥は、河の中にいた鮎(あゆ)に頼んで、ようやく水底の一文銭を探し出し、猫に渡しました。
猫は、ていねいにお礼をいうと、一文銭を拾いあげたよろこびのあまり
猫に鼠(ねずみ)に空たつ鳶(とんび) 河にゃ鵜(う)の鳥、鮎(あゆ)の魚
猫に鼠に空たつ鳶、河にゃ鵜の鳥、鮎の魚
と、歌をうたいながら帰って行きました。
しかし、歌の中には、大切な一文銭を落とすようなことをさせたので、河を渡してくれた犬のことは一言もはいっていません。
河を渡してくれた犬の有り難さを忘れてしまったのです。
この歌を聞いた犬は、猫の恩知らずと、たいへん腹をたてました。
それ以来、猫は何かひとつ忘れるくせがつき、犬は猫をみれば、そのときのくやしさが忘れられず、歯をむきだして追い回すようになった、ということです。
(阿武郡)
山口銀行編纂 山口むかし話より転載
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