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彦島のけしき

山口県下関市彦島から、風景・歴史・ものがたりなど…

手取りガンス 

手取りガンス


 小倉長浜の商人二人が船に荷を積んで下関へ向かうとき、ちょうどテトリガンスの沖合いにさしかかったところ、岸辺に何かキラキラ光るものがありました。二人の商人は、さっそく船をその岸に着けて調べてみますと、二つの大きなつぼがテトリガンスの中にありました。あけて見ると目もまばゆいほどの金銀財宝が入っていました。
 驚いた二人は、そこで話し合いをし、一応財宝をここにうまく隠しておき、下関で商売が終わったあと、取りに戻り、持ち帰って山分けにすることにしました。

 そして二人は、また船に乗りましたが、彦島西山を回って小門に入ったところで、どうしたことか、一人が急に頭が痛くなったので、陸にあげてくれと言い出し、仕方なく、もう一人の商人は病気の商人を彦島側に上陸させ、急いで唐戸に向かいました。

 しかし、船の中でふと考えて、
『うん、あいつの頭痛は、きっと仮病に違いない。わしをだまして先回りし、あのつぼの財宝を取りにいったのだ。いけない』
 さっそく船をもとに戻し、あとを追いかけ、テトリガンスに急ぎました。

 そして財宝のあったところへ来てみますと、思ったとおり、つぼの一つは、蓋があいており、その中は瓦ばかりが詰めてありました。と、そのそばを見ると、あの先回りした商人が死んでいるではありませんか。次第に、あとから来た商人も恐ろしくなりましたが、もう一つのつぼに何が入っているのか、見たくてたまりません。
 こわごわと、つぼの蓋を取り、中をのぞいてみると、これも瓦や石ばかりです。
 あまりのことに、商人は発狂してしまい、海の中に飛び込んで死んでしまいました。


富田義弘著「平家最後の砦 ひこしま昔ばなし」より

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Posted on 2020/03/16 Mon. 09:03 [edit]

category: ひこしま昔ばなし

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