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彦島のけしき

山口県下関市彦島から、風景・歴史・ものがたりなど…

金の鶴 

金の鶴


 田の首の泥田には、毎年、冬になると鶴がやって来た。
 ある年、その中に一羽だけ、金色に輝く鶴が居た。村びとたちは驚いてワイワイ集まって来たが、よく見ると羽が折れていて、歩くのがやっとらしい。
『これは可哀そうだ。掴まえて手当てをしてやろう』 
 と、近寄ろうとすると、鶴たちは金の鶴を囲み、羽をバタバタ広げて寄せ付けない。
 こんなことが毎日つづいたので、鶴たちはエサを捕りに行くことも出来ず、一羽、二羽と飢え死んでいった。
 村びとたちは、ようやくそれに気がついて、しばらくは鶴に近寄らないことにした。
 鶴たちは安心して、またもとのように四方へ飛び立ってはエサを捕り、金の鶴のところへ運びはじめた。
 しかし、正月が来て、寒もさめたというのに、金の鶴の羽は折れたままで、見るも痛々しい。
『何とかしてやりたいものだ』
 と、村びとたちは集まってラチのあかない話ばかりし合っていた。
 ある夜のこと、鶴たちが寝静まったころ、一人の老人が、そっと忍び寄って、金の鶴を掴まえた。村びとたちは大喜びで手分けをして、ドジョウを捕ってきたり、羽の手当てをしたりして、毎日、田畠に出かけるのも忘れた。
 その甲斐あって、春が近づいたある日、金の鶴は飛び立つことが出来るまでになった。そして鶴たちは、金の鶴をかばうようにして田の首を飛び立った。
 大勢の鶴が名残りを惜しんで、田の首の空をグルーッと一回りした時であった。沖を通る船から弓矢が放たれて、金の鶴の首を射ち抜いた。金の鶴は、まっさかさまに落ちて岩礁に消えた。
 あくる年から、心待ちにする人びとの前に、とうとう鶴は姿を見せなくなった。


富田義弘著「平家最後の砦 ひこしま昔ばなし」より


(注)
『よそ者が鶴を撃った』という話はつい最近まで、田の首あたりで聞くことが出来たという。
鶴は『たづ』とも呼び、『田鶴の首』が転じて『田の首』となったという説がある。
また、散木集に、たつの居る亀の首より漕ぎ出て心細くも眺めつるかな
と歌われていて『亀の首』が『田の首』のことであるという説もある。

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Posted on 2017/05/11 Thu. 10:29 [edit]

category: ひこしま昔ばなし

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