彦島のけしき
山口県下関市彦島から、風景・歴史・ものがたりなど…
舟島怪談 あしおと
舟島怪談 あしおと
むかし、舟島には、わずかながら人も住んでいました。
ある年の、うら盆も近くなった蒸し暑い夜のことです。突然、家の回りを、人の走る音が聞こえました。何事だろう、と人びとは外に出てみましたが、誰も居ません。
そんなことが毎晩つづいたので、人びとは気味悪がって島を離れるようになり、ついには、一組の老夫婦だけが取り残されてしまいました。
しかし、不思議なことに、うら盆が過ぎて涼しい海風が吹きはじめる秋の気配と共に、その足音はぷっつりと消えました。
ところが、またその翌年、お盆が近づいた蒸し暑い夜のことです。
家の回りをバタバタと足音高く人が走るので、老夫婦は一年前のことを思い出し、寝床の中でじっと耳をすましていました。しかし、いつまでたっても足音は消えません。
二人は恐る恐る起き出て、そっと表戸を開けました。すると、そのとたん、ぱったり足音はとだえましたが、人の姿はありませんでした。
あくる日も、またそのあくる日も、毎晩そんなことがつづいて、老婆はついに発狂して死んでしまいました。
その年も盆が過ぎると、その不思議な足音は聞かれなくなりましたが、たった一人残された老爺も、あとを追うように海に飛び込んでしまいました。
それから何年か経って、誰も居なくなったこの島に、彦島の庄屋が渡ってみますと、老夫婦の住んでいた家の床下から、古ぼけた小さな墓石が出てきたということです。
富田義弘著「平家最後の砦 ひこしま昔ばなし」より
むかし、舟島には、わずかながら人も住んでいました。
ある年の、うら盆も近くなった蒸し暑い夜のことです。突然、家の回りを、人の走る音が聞こえました。何事だろう、と人びとは外に出てみましたが、誰も居ません。
そんなことが毎晩つづいたので、人びとは気味悪がって島を離れるようになり、ついには、一組の老夫婦だけが取り残されてしまいました。
しかし、不思議なことに、うら盆が過ぎて涼しい海風が吹きはじめる秋の気配と共に、その足音はぷっつりと消えました。
ところが、またその翌年、お盆が近づいた蒸し暑い夜のことです。
家の回りをバタバタと足音高く人が走るので、老夫婦は一年前のことを思い出し、寝床の中でじっと耳をすましていました。しかし、いつまでたっても足音は消えません。
二人は恐る恐る起き出て、そっと表戸を開けました。すると、そのとたん、ぱったり足音はとだえましたが、人の姿はありませんでした。
あくる日も、またそのあくる日も、毎晩そんなことがつづいて、老婆はついに発狂して死んでしまいました。
その年も盆が過ぎると、その不思議な足音は聞かれなくなりましたが、たった一人残された老爺も、あとを追うように海に飛び込んでしまいました。
それから何年か経って、誰も居なくなったこの島に、彦島の庄屋が渡ってみますと、老夫婦の住んでいた家の床下から、古ぼけた小さな墓石が出てきたということです。
富田義弘著「平家最後の砦 ひこしま昔ばなし」より
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