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彦島のけしき

山口県下関市彦島から、風景・歴史・ものがたりなど…

お夏ダコ 

お夏ダコ


 西山に、お夏という娘が居た。娘の家は漁師だが、大変貧乏で、その上、両親がとかく病気がちで寝込むことが多かった。お夏は自分の手一つで家計を支え、朝早くから海に出て働かなければならなかった。

 ある寒い日のこと、お夏がいつものように海岸でワカメをとっていると、岩の肌に異様なものがからんでいた。それは、人間よりも大きなタコだった。お夏は、ギョッとしたが、こんな立派なタコを両親に見せると、どんなに喜んでもらえるかわからないと思い、さっそく、抜き足さし足で岩に近づくや、手早に鎌でその足を一本だけ切りとり、うしろも見ずに家に帰った。

 あまり大きな足なので、むろん両親にも食べさせたが、残りはぜんぶ近所の人に分け与えた。ほほが落ちるほどおいしかったので、みんなに喜ばれた。

 そのあくる日、お夏がまた海岸に出てみると、昨日の大ダコが傷あともなまなましく、同じ岩にからみついていた。お夏は今日もまた一本だけ足を切り取って帰り、みんなを喜ばせようと思った。忍び足で、ジリ、ジリッと岩のそばに近づいた。
 ところが、やにわにおどり上がったタコは、お夏にかぶさるように襲いかかった。お夏は逃げるまが無く、ついに七本の大きな足で、がんじがらめに巻きつかれてしまった。そして海の中へズルズルと吸い込まれていき、その明くる日も、また明くる日も、ついに大ダコは現れず、お夏のなきがらも見つからなかった。

 それからというもの、この海岸では、どんな小さなタコも『お夏ダコ』と呼び、ここの漁師たちは、そのたたりを恐れてか、この付近のタコを決して口にしなくなった。


富田義弘著「平家最後の砦 ひこしま昔ばなし」より

(注)
この話は、佐藤治氏著『ながとの民話』から写した。
下関図書館刊行の『下関の伝説』にも『お夏ダコ』の話が書かれている。
このほうは、お夏が、二、三日おきに足を切り取っていって、最期の一本でお夏の命が奪われたとなっている。
伝説としては、凄味があって面白い。

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Posted on 2020/02/26 Wed. 10:18 [edit]

category: ひこしま昔ばなし

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