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彦島のけしき

山口県下関市彦島から、風景・歴史・ものがたりなど…

姫ノ水 

姫ノ水


 壇ノ浦の合戦で、悲しくも平家は敗れました。その時、四人の官女が一門から離れて彦島にかくれましたが、数日もしないうちに欠乏の生活に耐えられなくなってしまいました。彼女たちは、このまま島にかくれていても貧するばかりと、思いあまって大瀬戸の流れに身を投げました。

 しかし、そのうちの一人は死ぬことも出来ず、砂浜に押し上げられてしまいました。
 里人に助けられたその女は、三人の官女や一門の人びとの幸せを羨み、平家全盛のころの華やかな毎日を思い出しては、日夜泣き通しました。そして、日に日にやせおとろえていきましたが、ある朝、こつぜんと姿を消してしまいました。

 里人たちが手分けをして探しまわりましたところ、浜辺からかなり奥まった山中に、のどをかききった官女のなきがらがありました。
 人びとは、彼女の死をひどくいたんで、その地に手厚く葬り、一本の杉を植えました。そして、どこにでもあるような山石を運んできて、官女の墓を建てました。

 ところが、不思議なことにいつの頃からか、墓石の下から冷たい水が湧きはじめたのです。そればかりか、杉の木はぐんぐん伸びて何年もたたないうちに見上げるような大樹に成長しました。

 人びとは、この水のことを『姫ノ水』と呼び、杉の木の付近を開拓して『杉田』と名付けました。


富田義弘著「平家最後の砦 ひこしま昔ばなし」より

(注)
古老の話によれば、姫ノ水の墓石は明治中頃までその場に建っていたが、どこかの蓮屋がその付近の田を買い占めた際に、取り払ってしまったという。
ところで、これに似た話が下関にもある。『官女の水』というのがそれであるが、話の舞台は金比羅付近ということになっている。
面白いことに金比羅から幡生へかけては、蓮田が広がっている。そこで私は、何年か前に、この付近の蓮田の所有者を尋ね歩いた。そして、ようやくKという蓮根業者を捜しあてた所、その庭には『平家塚』と呼ばれる祠がまつられてあった。
Kさんの話によれば、それは昔からただ『平家塚』とだけ呼ばれていたそうであるが、私にはこの塚石が『官女の水』であり『姫ノ水』であると思えてならない。
例えば『姫ノ水』の墓石が、金比羅に移され、その時、彦島で聞いた伝説が、そのまま石のいわれとして伝えられたため、『官女の水』という話に変わっていったのかもしれないのである。因みにKさんは、戦前まで、杉田、角倉一帯にも手広く蓮田を持っていたという。
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Posted on 2019/02/02 Sat. 10:07 [edit]

category: ひこしま昔ばなし

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