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彦島のけしき

山口県下関市彦島から、風景・歴史・ものがたりなど…

きぬかけ石 

きぬかけ石


 むかし、源氏に追われた平家一門は、壇ノ浦の流れにことごとく沈んで滅びました。

 しかし、ある武将の妻は、不思議に助かって彦島に落ちのびました。
 妻は、毎日、夫の消息を訊ねてあちこち歩きまわっていましたが、夫が、一門と共に海峡の藻屑と消えたと知ると、小戸の大岩にすがって泣きくずれました。

 そして翌日から、朝に夕に、この岩の上から壇ノ浦の空をみつめながら夫の名を呼びつづけました。島びとたちはその姿に貰い泣きするばかりでしたが、どうすることも出来ません。

 やがて妻は、痩せおとろえ、狂ったようになってしまいました。

 ある嵐の吹きすさぶ日でした。

 病人さながらのその女は、頭からずぶぬれのまま、よろよろとこの大岩にのぼり、ゆっくりと衣をぬぎました。そしてこれを、夫の肩にやさしく掛けるかのようにふわっと置いて、壇ノ浦の方を拝んだかと思うと、小瀬戸の渦潮に飛び込んでしまいました。


 嵐は三日三晩つづいて、ようやく去りました。ところが、岩の上には女の衣が、あの大風に吹き飛ばされることもなく、ひらひらと舞っていたといいます。


 それから誰いうとなく、この岩のことを『きぬかけ石』と呼ぶようになりました。



富田義弘著「平家最後の砦 ひこしま昔ばなし」より
(注)
『身投げ石』とよく似た話であるが、古老たちは、全く別の物語として記憶している。
そして、最も東側の岩が身投げ石で、次が身投げ岩、三番目がきぬかけ石、四番にあるのが、きぬかけ岩だというのである。


参考サイト
http://www.hikoshima.com/heike/story/kinukake.htm
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Posted on 2020/04/06 Mon. 07:47 [edit]

category: ひこしま昔ばなし

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