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彦島のけしき

山口県下関市彦島から、風景・歴史・ものがたりなど…

金の弦(きんのつる) 

金の弦(きんのつる)


 彦島の南端、田の首には『カネガツル』という岬があるが、少し東よりの弟子待がわにも『金の弦岬』と呼ばれる岩山がある。

 むかし、この岩山に一本の桂の木が枝を伸ばしていた。春になれば紅色の花を咲かせたが、その実は不思議にも金色に輝いていた。
 浦びとは、この桂の木を、月からの贈り物に違いないと喜び、木の回りに、しめ縄を張ってお供え物を欠かさなかった。
 ところが、ある年の秋、この付近を襲った台風が、桂の木を根こそぎ抜いて海に流してしまった。
 浦びとたちは、嘆き悲しんだが、
『わしらの信仰が足りなかったから』
 と、同じ場所に、もう一本の桂の木を植えて、以前にもまして、日夜おがんだ。

 あくる年の春、三日月がだんだん円くなりかけたある夜のことである。桂の苗木が金色に輝いているのを一人の浦びとが見つけて、みんなを呼び集めた。
 あの浜この村から多くの人びとが集まって来た時は、桂の苗木はぐんぐん大きく伸びはじめていた。
 あれよあれよと浦びとたちが驚きの声をあげている間に、桂は三日月のように半円を描きはじめ、やがて、スポンと音がして、根が抜けた。それから、そのままゆっくりと宙を舞い、浦びとたち一人一人の肩にそっとふれて、ゆっくりと空高く昇っていった。

 それからというもの、浦びとたちは三度び桂の木を植えないことを話し合い、岩山にしめ縄だけを張って『金の弓弦の岬』と呼び信仰をおこたらなかった。


富田義弘著「平家最後の砦 ひこしま昔ばなし」より

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Posted on 2019/03/18 Mon. 10:37 [edit]

category: ひこしま昔ばなし

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