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彦島のけしき

山口県下関市彦島から、風景・歴史・ものがたりなど…

豊関ことばについて 3 

豊関ことばについて 3

さて、これらの山口弁にくらべて、下関周辺の言葉には、特徴のある訛りはほとんど見当たらない。
すなわち「アリマス」も無ければ「ノンタ」も無い。

むしろ、アクセントの少ない、平板な言葉、それが下関周辺の方言の特徴と言えば言えそうである。

だから、下関駅や市内の観光地などに「フク笛」の歓迎塔を建てて「オイデマセ」と平仮名で大書している関係者に対して不満の声を漏らす市民は多い。

また下関の旧称「馬関」や宇部、萩なども、平たくバカン、ウべ、ハギと呼ぶべきだが、放送関係のアナウンサーは必ず「馬関」のバ、宇部のウ、萩のハにアクセントを付ける。
これなどは、明らかに地元を無視した呼び方で、不快この上ない。

抑揚の少ない下関とその周辺の言葉は、山口県内でも特異な地域であるが、それは何故だろうか。

関門海峡という僅か一キロ足らずの潮の流れを隔てた門司の町は九州の一角だから、当然、九州弁の町である。

しかし、下関という土地は、目と鼻の先で聞かれる九州言葉でさえも、その侵入を許していない。
とちらかと言えば下関コトバは、本州に共通するものであって、九州弁らしい匂いさえ受け入れないのである。


冨田義弘著「下関の方言」赤間関書房刊より
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Posted on 2021/06/10 Thu. 12:00 [edit]

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豊関ことばについて 2 

豊関ことばについて 2

私は、方言を使って都会人に笑われるたびに、「この言葉の意味は何だろう。語源はどこから来ているのだろうか」と考えるようになった。
そして、時には図書館で方言や語源学の書をひもとき、時には国文や国漢の教授に教えを乞うたものである。

だから「コップがメゲタ」と言って笑われたりすると、「冗談じゃない。メゲルというのは砕けるとか割れるとかの意味で、一般にも、逆境にメゲズ頑張る。という言葉もあろうが」と言い返せるようになった。

そのころ、私は教えを乞うた何人もの先生に、「山口県は、方言はあっても、訛りは少ないですね」と言われたものである。

それは、同じ山口県でも、下関周辺の言葉を指しているのではあるまいか。

小野田、厚狭、美祢地区から東へ行けば、山口、防府、萩を中心に、山口県下の大半は「ええですィノンタ」とか、「オイデマセ」、「…デアリマス」「…デゴザイマス」など、なんとなく雅やかなアクセントが付けられることになる。

もっとも「アリマス」「ゴザイマス」は、言葉として聞かずに、文章に表現すれば立派な標準語で、これほど美しい言葉は他の地に見当たらない。

余談になるが、「アリマス」「チョル」「チョラン」なとせのいわゆる長州言葉は、かつての軍隊における標準語であった。
それは、我が国の帝国陸軍が長州閥によって作られたことに起因するという暗さがあるが、これも一つの歴史の所産で如何ともしがたい。


冨田義弘著「下関の方言」赤間関書房刊より
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Posted on 2021/06/10 Thu. 09:11 [edit]

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