彦島のけしき
山口県下関市彦島から、風景・歴史・ものがたりなど…
あとがき 3
あとがき 3
さて、今年は下関の「ひとり出版社」赤間関書房が創業十周年を迎える。
一口に十年と言っても、文化不毛と陰口を叩かれる下関の地で、たったひとりでその灯を守り続けてこられた書房主、藤野幸平氏の努力と情熱は並大抵ではなかったはずだ。
そのことについては、私ごときものの筆舌では如何ともし難いが、NHKテレビが「郷土出版に生きる」と題して放映したり、読売新聞もまた大型企画「人は行く」に登場させたりした事実などにより、同氏の労苦も少しは報われつつあると言えるであろう。
その藤野氏自身「満鉄教育への回想」につづいて、昨年は好著「うにと私」を上梓されたが、今年は赤間関書房創業十周年記念出版として、この「下関の方言」を採り上げてくださった。
私にとってはこの上ない光栄だが、それだけに責任の重さもずっしりと感じる。
しかし、私は言語学者でもなければ民俗学者でもない。
ただ、ふるさとの言葉のなつかしさに惹かれて下関とその近郊の言葉をかき集めてきたにすぎない。
だから不備な点も多く、誤りや考え違いも多いことであろう。
それについては諸賢のご教示とご叱正を待ちたい。
冨田義弘著「下関の方言」赤間関書房刊より
さて、今年は下関の「ひとり出版社」赤間関書房が創業十周年を迎える。
一口に十年と言っても、文化不毛と陰口を叩かれる下関の地で、たったひとりでその灯を守り続けてこられた書房主、藤野幸平氏の努力と情熱は並大抵ではなかったはずだ。
そのことについては、私ごときものの筆舌では如何ともし難いが、NHKテレビが「郷土出版に生きる」と題して放映したり、読売新聞もまた大型企画「人は行く」に登場させたりした事実などにより、同氏の労苦も少しは報われつつあると言えるであろう。
その藤野氏自身「満鉄教育への回想」につづいて、昨年は好著「うにと私」を上梓されたが、今年は赤間関書房創業十周年記念出版として、この「下関の方言」を採り上げてくださった。
私にとってはこの上ない光栄だが、それだけに責任の重さもずっしりと感じる。
しかし、私は言語学者でもなければ民俗学者でもない。
ただ、ふるさとの言葉のなつかしさに惹かれて下関とその近郊の言葉をかき集めてきたにすぎない。
だから不備な点も多く、誤りや考え違いも多いことであろう。
それについては諸賢のご教示とご叱正を待ちたい。
冨田義弘著「下関の方言」赤間関書房刊より
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Posted on 2021/05/24 Mon. 09:33 [edit]
category: 下関弁辞典
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24
あとがき 2
あとがき 2
それまでの私は、彦島の古老達の昔語りを聞き集めてはノートするとき、いつも、その方言まる出しの語り口調を、私なりに消化したつもりで標準語による口語体に書き改めたものであった。
しかし、書き換える作業自体に、わけもなく、うしろめたいものを感じることがあって、それは一体、どこから来るのだろう、と私は時々自問自答していた。
その私も、やがては都会の空気に馴染むことになるが、「だからサア」とか「だからヨオ」という東京弁を聞くたびに、むしろ、ふるさとの下関弁の良さを探り始める回数が多くなってくるのであった。
だから、砂漠のような索漠とした都会生活に耐えられなくなると、ふらっと出かけて同郷の悪友達を訪ね、思いっきり下関弁を駆使した。
昔話や民話を集めるときに、老人の語り口調を尊重して、そのまま記録し始めたのもその頃からである。
つまり、私は下関という自分のふるさとを離れてみて、初めて自分のお国ことばの良さ、素晴らしさを知ったのであった。
あれから二十余年が経過して、今、こうして方言の数々をまとめてみると、伝説や民話を話してくれた古老達の死とともに、なつかしい下関ことばの大半が、すでに死語となっていることに気づいて愕然とせざるをえなかった。
方言は急速に、廃れつつあるのだ。
冨田義弘著「下関の方言」赤間関書房刊より
それまでの私は、彦島の古老達の昔語りを聞き集めてはノートするとき、いつも、その方言まる出しの語り口調を、私なりに消化したつもりで標準語による口語体に書き改めたものであった。
しかし、書き換える作業自体に、わけもなく、うしろめたいものを感じることがあって、それは一体、どこから来るのだろう、と私は時々自問自答していた。
その私も、やがては都会の空気に馴染むことになるが、「だからサア」とか「だからヨオ」という東京弁を聞くたびに、むしろ、ふるさとの下関弁の良さを探り始める回数が多くなってくるのであった。
だから、砂漠のような索漠とした都会生活に耐えられなくなると、ふらっと出かけて同郷の悪友達を訪ね、思いっきり下関弁を駆使した。
昔話や民話を集めるときに、老人の語り口調を尊重して、そのまま記録し始めたのもその頃からである。
つまり、私は下関という自分のふるさとを離れてみて、初めて自分のお国ことばの良さ、素晴らしさを知ったのであった。
あれから二十余年が経過して、今、こうして方言の数々をまとめてみると、伝説や民話を話してくれた古老達の死とともに、なつかしい下関ことばの大半が、すでに死語となっていることに気づいて愕然とせざるをえなかった。
方言は急速に、廃れつつあるのだ。
冨田義弘著「下関の方言」赤間関書房刊より
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Posted on 2021/05/21 Fri. 10:08 [edit]
category: 下関弁辞典
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21
あとがき 1
あとがき 1
方言が見直されているという。
裏返して言えば、地方色豊かな、そして、土の匂いのする方言は、今や瀕死の状態にあるわけだ。
私が「ふるさとのことば」に興味を持ち始めたのは、受験のために上京する満員の車中で同郷の女子大生が、しきりに連発する「だからサア」を、耳障りに思ったそのときからである。
当時九州から東京へ直通の列車は急行がわずか三本で、下関仕立ての「霧島号」の十一号車は、当然、下関弁だけが渦巻いていた。
そのような雰囲気の中で、一年先輩のその女子学生は、鈴を転がしたような美しい声で、東京弁をまくしたてていた。
それはまるで、故郷の言葉を忘れてしまったかのような流暢さであったが、私には、その美しい声が哀れに思えるほど、都会かぶれの軽薄さが心に残った。
冨田義弘著「下関の方言」赤間関書房刊より
方言が見直されているという。
裏返して言えば、地方色豊かな、そして、土の匂いのする方言は、今や瀕死の状態にあるわけだ。
私が「ふるさとのことば」に興味を持ち始めたのは、受験のために上京する満員の車中で同郷の女子大生が、しきりに連発する「だからサア」を、耳障りに思ったそのときからである。
当時九州から東京へ直通の列車は急行がわずか三本で、下関仕立ての「霧島号」の十一号車は、当然、下関弁だけが渦巻いていた。
そのような雰囲気の中で、一年先輩のその女子学生は、鈴を転がしたような美しい声で、東京弁をまくしたてていた。
それはまるで、故郷の言葉を忘れてしまったかのような流暢さであったが、私には、その美しい声が哀れに思えるほど、都会かぶれの軽薄さが心に残った。
冨田義弘著「下関の方言」赤間関書房刊より
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- 下関の方言 わ…の部 (2021/05/19)
Posted on 2021/05/20 Thu. 10:11 [edit]
category: 下関弁辞典
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20
下関の方言 わ…の部
下関の方言 わ…の部
わしゃー
私は。
わすれんずく
忘れないで。
わっち
私。
わや
無茶。デタラメ。乱暴。
わやく
無茶。
冗談。
わやくちゃ
無茶苦茶。
わらしび
わらしべ。
わらわかす
笑わせる。
わりい
悪い。
痛い。
気の毒。
粗末。
わりと
わりに。比較的。
わりゃー
お前。貴様。
わるがる
気の毒がる。
恥ずかしがる。
わるき
焚き物用の木。
われ
お前。あなた。君。
下関の方言 を…の部
をばち
魚の尻尾。
下関の方言 ん…の部
ん
…したの。
…しない。
冨田義弘著「下関の方言」赤間関書房刊より
わしゃー
私は。
わすれんずく
忘れないで。
わっち
私。
わや
無茶。デタラメ。乱暴。
わやく
無茶。
冗談。
わやくちゃ
無茶苦茶。
わらしび
わらしべ。
わらわかす
笑わせる。
わりい
悪い。
痛い。
気の毒。
粗末。
わりと
わりに。比較的。
わりゃー
お前。貴様。
わるがる
気の毒がる。
恥ずかしがる。
わるき
焚き物用の木。
われ
お前。あなた。君。
下関の方言 を…の部
をばち
魚の尻尾。
下関の方言 ん…の部
ん
…したの。
…しない。
冨田義弘著「下関の方言」赤間関書房刊より
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- 下関の方言 わ…の部 (2021/05/19)
- 下関の方言 わ…の部 (2021/05/18)
Posted on 2021/05/19 Wed. 10:10 [edit]
category: 下関弁辞典
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19
下関の方言 わ…の部
下関の方言 わ…の部
わ
桶などのたが。
わーや
…だよ。
わあかける
輪をかけて大げさに言う。
わが
私。
お前。
わかいし
若い衆。若者。
わき
そば。隣。
副。
わく
発酵する。
割る。
引く。
わくど
ガマガエル。
わけぎ
小葱。細ネギ。
わきゃーない
訳はない。簡単。
わざっと
わざと。故意に。
わし
私。俺。
冨田義弘著「下関の方言」赤間関書房刊より
わ
桶などのたが。
わーや
…だよ。
わあかける
輪をかけて大げさに言う。
わが
私。
お前。
わかいし
若い衆。若者。
わき
そば。隣。
副。
わく
発酵する。
割る。
引く。
わくど
ガマガエル。
わけぎ
小葱。細ネギ。
わきゃーない
訳はない。簡単。
わざっと
わざと。故意に。
わし
私。俺。
冨田義弘著「下関の方言」赤間関書房刊より
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- 下関の方言 わ…の部 (2021/05/18)
- 下関の方言 る…の部 (2021/05/17)
Posted on 2021/05/18 Tue. 10:42 [edit]
category: 下関弁辞典
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18