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彦島のけしき

山口県下関市彦島から、風景・歴史・ものがたりなど…

五年神 

五年神


むかし、内日の赤田代に、顔の醜い山の神が住んでいました。

山の神は、あまり自分の顔が醜いのでひっそりと祠に閉じこもり、ふさぎこんでいました。
大体山の神は、秋の収穫が終わると、近くの山にいて山を守り、春になると里に出て田の神となるのですが、赤田代の山の神は恥ずかしがって、いっこうに姿をあらわしませんでした。

そのため、村の田んぼは荒れ、山の木も少しも大きくならず、村人達はたいへん困ってしまいました。
どうかして、山の神様に里におりてもらい、山や田んぼを守ってもらわねば、この村は今に全滅すると、村人達はたびたび話し合いました。
「山の神様は、きっとお腹がすいているのだ、おいしいものを供えてみよう」
「みんなで歌ったり踊ったりしておなぐさめしよう」
ということになり、さっそく川で魚をとり、おいしいだんごを作ったりして、山の神のひそむ祠に供えました。
山の神様は、女性がきらいです。そこで若い男たちが着飾って賑やかに踊っているとき、急に地鳴りがしたかと思うと、山全体が揺れ動き、大木が次々に折れて、村人たちの頭に落ちてきました。

びっくりした村人たちは、一目散で里に逃げ帰り、
「山の神が怒った、山の神が怒った、みんな早く逃げろ」
と、みんなは、あわてふためいてめぼしい家財道具を担ぎ、隣の村へ避難しました。

その村には、村で一番の物知りの老婆がいました。みんなは、その老婆のところへいき、
「おばあ、どうしたもんだろうのう、お前さまに早くたずねりゃよかったんじゃが…、いい智恵はましもんかのう」
と、相談しました。ところが老婆は、とたんにクックッと笑い出し、
「それは、きっときれいな魚を供えたり、女の着物を着て踊ったんで、気を悪くされたんじゃ、気の弱い神様じゃな…。そしたら、山の神よりもっときりょうの悪いドロバエを供えてみなさい、きっとおよろこびになるから…」

村人達は、物知りばあさんの言うことを信じて、また山の神の住む森に入りました。
そして、恐る恐るドロバエを供えて…
しばらく待っていましたが、今度は前のように山が揺れるようなことはありません。
村人達はほっとして、では、おまつりをこれから何年ごとに行なったらいいでしょうと、伺ったところ、耳の遠い山の神は、
「なに、五年ごとだと…」
と聞き返され、逆らっては恐ろしいので、村人達は、
「ハイ、それでは五年ごとにおまつりします」
といって、大急ぎで山を降りました。

それからは、五年目ごとの十一月初申の日に、山の神のおまつりをするようになったといいます。


(注)
五年目ごとにおまつりをする家が決まっていて、それは、上田勇、上田隆士、稗田勉、福田一男さんら四戸の祖先が代々受け継いでいます。
神の森は、村のすぐ裏にあり、清い場所としてあがめられています。
森の中央にあるトリモチの巨木がご神体で、木の根元には一個の壷が置かれており、石の蓋がしてあります。


『下関の民話』下関教育委員会編
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Posted on 2020/06/15 Mon. 11:24 [edit]

category: 下関の民話

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