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彦島のけしき

山口県下関市彦島から、風景・歴史・ものがたりなど…

下関の地名25 福浦 

瓢六(ひょうろく)ばなし


 福浦金比羅宮の下の港は、むかしから天然の良港として栄えて来ました。江戸時代末期には船宿が何十軒も並び、遊女は二百五十人以上も居たといわれています。


 これは、そのころの話です。

 ある船宿に瓢六という生まれつき少し脳の弱い息子が居ました。船宿の主人は、あと取り息子がこんなことでは、と心配のあまり夜も眠れない日がつづきました。

 瓢六が十五歳になった春、主人は息子を呼んでこう言いました。
『お前ももう十五、いつまでも親に甘えていては大成しない。この船宿を継ぐ為には、もう少し勉強しなきゃあ駄目だ。番頭をつけてやるから、都へ行ってみっちり学問を仕込んで来い』
 もともと少し足りない瓢六、勉強ということよりも、何彼とうるさい父親のそばを離れる喜びで上機嫌。胸をふくらませて福浦を発ちました。

 都は、話に聞く以上のにぎわいで、見るもの聞くものみな珍しく、瓢六はキョロキョロ。ウロウロ、浮き浮きの毎日でした。だから、ともすれば都に来た目的など忘れがちでしたが、時々、尻を叩く番頭さんの忠告で、しぶしぶ聞き覚えの言葉を紙に書き留めました。

 都に着いた夜、宿に入った瓢六に、女中さんがにこにこして、むつかしいことを聞きました。
『お客さん、どこから上洛しやはりましたん』
 瓢六は、キョトンとして番頭さんを振り返りました。すかさず、番頭さんが答えてくれました。
『ヘイ、馬関からです』

 夜、寝床に入ってから、瓢六は気にかかってならないことを、番頭さんに訊ねました。
『上洛って、一体、何や』
『のぼる、つまり、都にのぼることです』
 番頭さんは、ただそれだけ言って眠ってしまいました。瓢六は、ごそごそ起き出ると紙を取り出して『のぼること 上洛』と書きました。

 あくる日、町を歩いていると、大きな屋敷の門前に人だかりがあって、みんな、オイオイと声をあげて泣いています。
『あれは何で、泣くんやろう』
『誰方か亡くなったんでしょうな。これから葬儀が始まるようです』
 と、番頭さんが答えました。瓢六は、紙を出して『泣くこと 葬儀』と書きました。

 少し歩いて行くと、大きな卸問屋の前で、一人の乞食が、何やらぶつぶつ言いながら、店の中をのぞき込んでいました。
『あの、ゴニャゴニャ言いよる男は、何をしょるんやろう』
『何か食べるものを貰おうと思って、ああして、ぶつぶつ独り言を言ってるんですよ。あんな人間を乞食と言います』
 瓢六は、また、紙を出しました。そして、下手くそな字で書きました。『貰うこと ゴニャゴニャ』

 宿に帰り着いて、裏木戸から入ろうとすると、女中さんが、イリコの頭ばかりをざるに入れているのが眼につきました。
『それは、何ですか』
『煮出しです。おつゆを作った残りかすですよって、もう捨てようと思いまして』
 瓢六は部屋に帰って大急ぎで書きました。『頭のこと 煮出し』

 さて、楽しい夕食です。昨晩と同じように赤いお椀、赤いお皿、そして赤いお膳に、おいしそうなご馳走が並べられていました。
『きれいやなあ。この茶碗は何というんですか』
『それは茶碗ではありません。赤いでしょう。だから、朱椀といいます』
 番頭さんは、やさしく教えてやりました。ご飯がすんで、瓢六は『赤いもの 朱椀』と書いて、ニーッと笑いました。

 そのまたあくる日、町を歩いていると、十人ばかりの男女が、牛ほどもある大きな石に網をかけて、
『エンヤラヤ、エンヤラヤ』
 と引っぱっていました。瓢六は眼をパチクリさせて、
『都ちゅう所は、面白い所じゃのう。あんな石にまで、別の呼び名があるんじゃけえ』
 と、ぶつぶつ言いながら『石のこと エンヤ』と書きました。

 また、ある日、いつものようにぶらぶらと町を見物していると、道ばたで母親が五、六歳くらいの男の子の尻を叩いていました。
『痛いよう、痛いよう』
 と、しきりに男の子は泣いていましたが、母親はなかなか許そうともしません。瓢六は、珍しそうに口を開けたまま眺めていました。すると番頭さんが寄って来て、そっと小さな声で言いました。
『あまり見るものではありません。あの子は何かいたずらをして叱られているのですよ。あれほど折檻しなくても良さそうなものを』
 おしまいのほうは独り言のようでしたが、瓢六は耳ざとく聞きつけて『痛いこと 折檻』と書きました。
 どんなことを書いても、番頭さんはもう諦めているのか、ただ笑うだけで、何も言いません。

 そして何ヶ月かが夢のように過ぎて、いよいよ都ともお別れの日が来ました。瓢六は番頭さんに連れられて、名残惜しそうに宿を出ました。二人は川舟に乗って、だんだん遠くなってゆく都を、悲しそうにじっと眺めていましたが、ふと思い出したように瓢六が紙を取り出しました。
『のぼることの反対は、くだること。うん、よし、解ったぞ、上洛の反対やから下洛やな。わしも偉ろうなったもんや』
 小声で、そんなことをつぶやきながら『くだること 下洛』と書いて、ふところに入れました。


 さて、久し振りに福浦の港に帰って来た瓢六は、風待ちで停泊中の千石船がひっくり返るような大声で、
『おとっつあん、ようけ勉強して、今帰ったぞっ』
 と、叫んで家に入りました。ちょうど屋根にあがって、瓦の手入れをしていた父親はその声に驚いて、思わず足を踏みはずし、すってーん、と裏庭に落ちて頭を打ちました。

 さあ大変、瓢六は、駆け寄ろうとする番頭さんを蹴飛ばして医者を呼びに走りました。あわてふためいて医者の玄関を大きな音を立てて開けると、見たこともないような美しい娘さんが出てきました。
 とっさに瓢六は、せっかく勉強して来たから、都の言葉で話してやろう、と思い、ふところから紙を出して、ゆっくり拾い読みをしながら娘に言いました。

『お父さんが、屋根に上洛し、下洛して、エンヤに煮出しを砕き、朱腕かっかと散り、折檻、折檻と葬儀ゆえ、くすり一服ゴニャゴニャ』

 すると、さすがは利口そうな美しい娘さん、都の言葉が通じたのか、ニコッと笑って、ていねいに頭をさげました。
『わかりました。少々お待ちを…』
 そう言って奧に消えましたが、とたんに、廊下をころぶように走って叫びました。


『先生、大変です。船宿から借金取りが来ました。それもポルトガル人で、オランダ語をしゃべり、急いで払えと怒鳴っています。ふところには証文も持っていますので、もう駄目です。どうしましょう』


富田義弘著「平家最後の砦 ひこしま昔ばなし」より

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Posted on 2017/08/31 Thu. 11:50 [edit]

category: 下関の地名

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乗り合い自動車 

徳山・下松・光・新南陽の100年より
乗り合い自動車(大正12年)
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Posted on 2017/08/31 Thu. 11:49 [edit]

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県警の自動車 

徳山・下松・光・新南陽の100年より
県警の自動車(明治33年)
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Posted on 2017/08/31 Thu. 11:46 [edit]

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馬車 

徳山・下松・光・新南陽の100年より
馬車(明治31年)
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Posted on 2017/08/31 Thu. 11:44 [edit]

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普賢山沖 

徳山・下松・光・新南陽の100年より
普賢山沖
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Posted on 2017/08/31 Thu. 11:41 [edit]

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室津湾 

徳山・下松・光・新南陽の100年より
室津湾(明治26年)
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Posted on 2017/08/31 Thu. 11:40 [edit]

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ヒメダラ 

瀬戸内海のさかな より
ヒメダラ
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Posted on 2017/08/31 Thu. 11:33 [edit]

category: 瀬戸内海のさかな

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オキエソ 

瀬戸内海のさかな より
オキエソ
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Posted on 2017/08/31 Thu. 11:31 [edit]

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ワニエソ 

瀬戸内海のさかな より
ワニエソ
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Posted on 2017/08/31 Thu. 11:30 [edit]

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マエソ 

瀬戸内海のさかな より
マエソ
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Posted on 2017/08/31 Thu. 11:28 [edit]

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トカゲエソ 

瀬戸内海のさかな より
トカゲエソ
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Posted on 2017/08/31 Thu. 11:26 [edit]

category: 瀬戸内海のさかな

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下関の方言 や…の部 

下関の方言 や…の部

やっぱ
 やはり。

やでかましい
 うるさい。
 面倒な。

やでない
 忙しい。
 気ぜわしい。

やといど
 日雇人夫。使用人。

やねこい
 気むづかしくてしつこい。
 陰気で執拗な。

やぶつ
 破る。

やまがる
 苦にする。
 張り合う。
 羨ましがる。

やましお
 津波。山津波。

やまねらみ
 斜視。

やまのお
 峰。屋根。

やまんばあ
 強風を吹かせるという伝説の動物。

やむし
 青大将。

ややくろしい
 ややこしい。面倒な。

やらかす
 やってしまう。してしまう。

やられる
 叱られる。殴られる。

やりえん
 できない。

やれそら
 早く。急いで。

やん
 …さん。

やんくも
 やみくもに。

やんこーい
 ヤンマ釣りの掛け声。

やんば
 親方。親分。

やんや
 急がせる。せかせる。
 
冨田義弘著「下関の方言」赤間関書房刊より
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Posted on 2017/08/31 Thu. 11:02 [edit]

category: 下関弁辞典

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佐波川ダム 

山口・防府の100年より
佐波川ダム(昭和31年)
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Posted on 2017/08/31 Thu. 10:58 [edit]

category: 山口・防府の100年

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小郡駅前 

山口・防府の100年より
小郡駅前(昭和30年代)
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Posted on 2017/08/31 Thu. 10:52 [edit]

category: 山口・防府の100年

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宮野駅 

山口・防府の100年より
宮野駅(昭和26年)
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Posted on 2017/08/31 Thu. 10:50 [edit]

category: 山口・防府の100年

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