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彦島のけしき

山口県下関市彦島から、風景・歴史・ものがたりなど…

トラになった王さま 

トラになった王さま
モンゴルの昔話


 むかしむかし、モンゴルの草原に、貧しいヒツジ飼いの夫婦が住んでいました。
 夫婦には子どもがいないので、二人はさびしい思いをしていましたが、ある日突然、男の子が生まれたのです。
 喜んだ二人は、男の子にグナンという名前をつけました。

 このグナンはとても不思議な子どもで、生まれるとすぐに歩き出しました。
 そして見る見るうちに成長して、次の日には普通の大人よりも大きくなってしまったのです。
 お父さんとお母さんは、こんなに大きな子どもを、どうやって育てたらいいのか心配になりました。
 すると三日目に、グナンが言いました。
「お母さん、家は貧乏ですから、ぼくがいたら食べ物に困るでしょう。だから、ぼくをどこかへ働きに行かせてください」
「そんな、生まれたばかりのお前を、働きに行かせるなんて」
 でも、確かにこのままでは、家の食べ物はすぐに無くなってしまいます。
 お母さんは色々と考えたあげく、王さまならグナンを使って下さるだろうと思いました。
 そしてお父さんとお母さんは、涙を流しながらグナンを旅に出してやりました。

 さて、旅に出たグナンは、途中でお腹がペコペコになりました。
「何か、食べる物はないかな?」
 グナンが思っていると、ふいに一匹のオオカミが飛びかかってきました。
「やった! お昼ご飯がやって来た」
 グナンは大喜びでオオカミをやっつけると、丸焼きにして食べてしまいました。
 それからグナンは、どんどん歩いて王さまのご殿につきました。
「ほう。大きな体をしておるな。さぞかし、よく食べるのであろう」
 グナンの体を見て王さまが言うと、グナンはひもじそうにお腹を押さえて言いました。
「はい。先ほどオオカミの丸焼きを食べたのですが、もうお腹が空いてきました」
「何と、オオカミの丸焼きを一人で食べたのか?」
 そこで王さまはグナンを試してやろうと、ウシの丸焼きを用意しました。
 するとグナンはニコニコしながら、ウシの丸焼きをペロリとたいらげてしまったのです。
 これを見て王さまはグナンを気に入り、自分のお側付きの家来にしたのです。
 お側付きの家来になったグナンは、それからはいつも王さまのお供をして狩りに出かけては、大きな体で見事な獲物を仕留めたのです。

 ある日の事、グナンが王さまと一緒に狩りに行くと、しげみの中から目を光らせたトラが飛びかかってきました。
 王さまはビックリして、馬にムチをあてると命からがら逃げ出しました。
 けれどグナンは落ち着いたもので、飛びかかってきたトラの片足をつかんで、ブルンブルンと振り回すと、そばの大きな木に叩きつけました。
 これにはさすがの大トラも、そのまま死んでしまいました。

 ご殿に帰り着いた王さまは、さっきのトラがまだ怖くて、馬から降りる事が出来ません。
 そこで家来たちが、何とか王さまを馬から降ろしてやりました。
 ちょうどそこへ、グナンが死んだトラをかついで戻ってきたのです。
 それを見ると、王さまは腰を抜かすほど驚いて、家来たちに言いました。
「皆の者、早く入り口を守れ! トラを中に入れるな。グナン! お前はそれ以上近づくな!」
「あのう、王さま。トラは死んでいるのですが」
 グナンが、そう言うと、
「何だ、それならそうと、早く言え」
と、王さまはそのトラの皮を家来にはがせて、立派な敷物を作りました。
 こんな敷物は、どの国の王さまも持っていないでしょう。
(なかなかに素晴らしい敷物だ。よし、今度はトラの王の皮で、わしの着物を作ってみよう。そうすれば、世界中の王たちに威張れるぞ)
 そこで王さまは、グナンを呼んで命令しました。
「三日の間に、トラの王を捕らえて来い。捕らえて来なければ、お前の命はないぞ」
 さあ、グナンは困ってしまいました。
 何しろ、トラの王さまがどんな姿で、どこにいるのか分からないのです。
 しかも、三日の間に捕らえて来なければ、命はないのです。
 グナンが、ほとほと困っていると、
「グナンや。心配する事はない。この、あし毛の馬に乗っていきなさい」
と、言う声がしました。
 振り返ってみると、一人のおじいさんが、あし毛の馬と一緒に立っていました。
「トラの王は、遠い北の山のほら穴の中にいる。さあ、これに乗って行きなさい」
 おじいさんはそう言うと、煙のように姿が消えてしまいました。
 グナンはさっそく、そのあし毛のウマに乗って出発しました。
 馬はとても足の速い馬で、まるで放たれた矢のように走りました。
 しばらく走って行くと、ふいに、
「助けてえ!」
と、子どもの声がしました。
 見ると、小さな家のそばにいる女の子に、一匹のオオカミが襲いかかろうとしていました。
 グナンはウマに乗ったまま、急いで弓に矢をつがえて放ちました。
 矢は見事にオオカミに命中して、女の子は無事に助かりました。
 この時、家の中から女の子のお母さんが駆け出してきました。
 そして子どもを助けてくれたお礼に、ヒツジの骨を差し出しました。
「家は貧乏なので、何もお礼をする事が出来ませんが、せめて、このヒツジの骨をお持ち下さい。きっと、お役に立つ時が来ます」
 グナンはそれを受け取ると、また北ヘ向かってウマを走らせました。
 しばらくすると、グナンは大きな川に出ました。
 川には橋も、船もありません。
 その時、川の中から大きなカメが現れて言いました。
「お前には、この川は渡れないだろう。早く家に帰りなさい」
「いや、何とかして、渡ってみせる」
 それを聞くと、大ガメは川の中からはい出して来て、グナンに言いました。
「なかなか、しっかりした若者だな。ひとつ、お前に頼みがある」
「はい。ぼくに出来る事なら」
「実は、わしの左目を新しい物に取り替えたいのだが、どうしても左目が取れないんだ。どうか取ってくれないか?」
「いいですとも」
 グナンは、カメの左目をほじくり出してやりました。
 そのとたん、カメは一匹のリュウになって、
「ありがとう。おかげで新しいのに取り替えられる。お礼に、その目玉を持って川を進みなさい」
と、言うと、天高く飛び去って行きました。
 グナンが手の中の目玉を見ると、目玉はキラキラと光り輝く水晶の玉に変わっていました。
 グナンは言われた通り玉を持って、馬と一緒に川に飛び込みました。
 すると不思議な事に川の水が二つに分かれて、川の真ん中に道が現れたのです。
 おかげでグナンは馬に乗ったまま、川を渡る事が出来ました。

 しばらく行くと、ある家の前で、ヒツジ飼いのおじいさんが涙を流していました。
「おじいさん。どうかしたのですか?」
「はい。実は昨日、娘がトラの王にさらわれてしまいました」
「トラの王だって?! では、奴の住みかも近いにちがいない。おじいさん、わたしがきっと、娘さんを助け出してあげます」
 そう言うとグナンは馬にムチを当てて、飛ぶように駆けていきました。

 それからしばらくして、グナンはトラの住みかを見つけました。
 その入り口には、何十匹ものトラが見張りをしています。
 さすがのグナンでも、何十匹のトラを相手にする事は出来ません。
 そこでグナンは、持っていたヒツジの骨をトラが見えるところに投げました。
 するとトラは、一斉に骨へと集まりました。
(よし、今の間だ)
 グナンはその隙に、ほら穴の中へと飛び込みました。
 ほら穴の奥では、一人の美しい娘が座っていました。
 娘はグナンを見ると、ビックリして言いました。
「早く逃げて下さい。トラの王が、もうすぐ帰ってきます」
「いや、あなたを助けるのが先です。さあ、この馬に乗ってください」
 二人がほら穴を出ると、見張りのトラたちは、まだヒツジの骨を奪い合って食べています。
 グナンは馬にムチを当てて、風の様に山を駆け下りました。
 この時、突然あやしい風が吹き出しました。
 振り返ると、全身に光り輝く金色の毛が生えている、大きな体のトラが追いかけてくるのです。
 これが、トラの王です。
 グナンは馬を走らせたまま振り向くと、トラ目掛けて矢を放ちました。
 矢はトラ王の片目に当たりましたが、怒ったトラ王はひと声吠えると、鋭いツメでグナンを馬から引きずり下ろしました。
 しかしグナンは怪力でトラ王を頭上に持ち上げると、トラ王の体を地面に叩きつけました。
 そして、フラフラと起き上がったトラ王の頭の上に、そばにあった大きな岩を、
 ドシン!
と、投げつけたのです。
 これにはさすがのトラ王も、死んでしまいました。

 こうしてトラ王をやっつけたグナンは、死んだトラ王を引きずって娘の家に戻りました。
 するとおじいさんは、
「娘を助けてくださって、お礼の言葉もありません。どうか、この娘を嫁にもらってください」
と、言って、娘をグナンのお嫁さんにしてくれたのです。
 トラ王を殺したグナンは、美しいお嫁さんを連れて王さまの元に帰ってきました。
 王さまはそれを見るとグナンの美しいお嫁さんが欲しくなり、グナンに言いつけました。
「お前の妻に、トラ王の皮でわしの着物を作らせろ。その時、トラの毛が一本でも抜け落ちたら、罰として妻を差し出せ」
 グナンのお嫁さんは、その命令通りに、トラ王の皮で着物を縫い上げました。
 確かに注文通りの着物なので、王さまはグナンのお嫁さんを手に入れる事は出来ませんでしたが、そのトラ王の皮の着物を見ると、すっかり機嫌を直して喜びました。
 そして国中の人々に、この着物を着た自分の姿を見せてやろうと、命令を出して国中の人々をご殿に呼び集めました。

 そして国中の人々が注目する中、王さまは台の上に登ると、家来たちに命じて金色に光るトラ王の皮の着物を持ってこさせました。
 そして王さまの体に、家来たちが金色に光るトラ王の着物を着せたとたん、王さまの口が見る見る大きく裂けて、王さまは本物のトラになってしまったのです。
「ウォーッ!」
 トラになった王さまは、大きく吠えると、びっくりして逃げ出す人々を次々と襲いました。
「あなた、人々を助けてあげて」
「よし、わかった!」
 グナンは、お嫁さんの言葉に飛び出しましたが、この時のグナンは、弓矢を持っていません。
 どうしようかと思っているうちに、そのトラがグナン目掛けて襲いかかってきました。
 けれどグナンは、少しも恐れません。
 グナンはトラの尻尾を両手で捕まえると、トラをブンブンと振り回して地面へと叩きつけました。
 そしてグナンはトラの頭を踏みつけて、トラになった王さまをやっつけたのです。

 それからのち、この国の新しい王さまになった若い王さまは、グナンを英雄だと褒め称えて、グナンに山の様な褒美を与えました。
 そしてグナンは、美しい妻とあし毛の馬に乗って、お父さんお母さんの待っている我が家へと帰り、新しい王さまにもらった褒美でいつまでも幸せに暮らしたのです。

おしまい
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Posted on 2013/04/25 Thu. 14:41 [edit]

category: 世界昔話

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ふるさと散歩166-19 長府庭園 

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Posted on 2013/04/25 Thu. 14:35 [edit]

category: ふるさと散歩

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ふるさと散歩166-18 長府庭園 

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Posted on 2013/04/25 Thu. 14:33 [edit]

category: ふるさと散歩

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ふるさと散歩166-17 長府庭園 

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Posted on 2013/04/25 Thu. 14:31 [edit]

category: ふるさと散歩

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ふるさと散歩166-16 長府庭園 

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Posted on 2013/04/25 Thu. 14:30 [edit]

category: ふるさと散歩

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赤いしゃもじの滝 

赤いしゃもじの滝


 むかし木をきるきこりたちが山に小屋をつくり、そこにとまって炭焼きをしていました。その小屋でごはんを食べるときは赤い上等のしゃもじを使っていました。

 ある日いつものように一人のきこりがごはんをよそおうとしたとき、赤いしゃもじが思わず手からはなれ、はるか下の滝つぼに落ちてしまいました。するとどうしたことでしょう。赤いしゃもじは滝つぼからはなれようとせず水の中でくるくるとまい続けています。

 それからというもの、雨風で滝つぼがあふれようが、滝の水が少なくなろうが一年中しゃもじはまい続けました。
 滝つぼから決して流れ出ていかないしゃもじの様子を見て、村人たちはいつしか
「滝つぼに住む竜(りゅう)が赤いしゃもじにすいよせられて、ついに竜のたましいが乗りうつったのだ」
と言い伝えるようになりました。

 そんな言い伝えが広まるにつれ、きこりたちは山に炭を焼きにいくときは赤いしゃもじを持って行かないようにしました。ごはんをよそうときのしゃもじには、上等な赤いしゃもじではなく、近くの木で手づくりしたものを使うようになったということです。
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Posted on 2013/04/25 Thu. 09:38 [edit]

category: 日本の民話

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ふるさと散歩166-15 長府庭園 

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Posted on 2013/04/25 Thu. 09:36 [edit]

category: ふるさと散歩

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ふるさと散歩166-14 長府庭園 

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Posted on 2013/04/25 Thu. 09:34 [edit]

category: ふるさと散歩

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ふるさと散歩166-13 長府庭園 

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Posted on 2013/04/25 Thu. 09:33 [edit]

category: ふるさと散歩

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ふるさと散歩166-12 長府庭園 

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Posted on 2013/04/25 Thu. 09:31 [edit]

category: ふるさと散歩

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