彦島のけしき
山口県下関市彦島から、風景・歴史・ものがたりなど…
恩知らずの男
恩知らずの男
むかしむかしのある冬の日。その年はいつもよりたくさんの雪がふり、人のせたけほどの雪がつもりました。
一人の男が町にでかけた帰り、あまりの雪に道がわからなくなってしまいました。雪はようしゃなくふり続き、足元さえもみえません。
すると前のほうに大きなかげがあらわれました。
「クマだ」
男ははっとしましたが、大雪で思うように動けません。このままでは食べられてしまうと思ったとき何やらクマが立ち上がり、おいでおいでと手まねきをするではありませんか。
何だろう、と思った男はクマのあとをついていきました。クマはゆっくり歩いていき、大きな木のそばで止まりました。そして男のほうをむいてから首を上下にふってみせると姿が見えなくなりました。
男がおそるおそる木に近づくとクマが大きな穴の中に入っていました。どうせこごえて死んでしまうんだ、と半分やけになった男は決心して穴に入っていきました。
クマはごろりと横になると大きな前足を男のほうにさし出します。男が顔を近づけてみると、クマが前足をぺろぺろなめるマネをしました。男が勇気を出してクマの足をなめてみると、何やら甘い甘いはちみつのような味がします。こうして男は穴の中でうとうとしながら、おなかが減るとクマの足をなめてすごしました。
雪がやみ男が元気に山を下りて来たので村中がびっくりしました。もう死んでしまったんだろう、とだれもが思っていたからです。男は穴の中でクマといっしょにいたこと、クマの足をなめてすごしたことを話しました。
これを聞いていた一人の猟師(りょうし)が
「しめしめ、この男についていけばクマをしとめることができるぞ」
と思い、男に言いました。
「クマのおかげで助かったんだ。お礼をしたらどうだろう。おれもいっしょに連れてってくれ」
男は、それもそうだ、クマにお礼をしよう、と猟師を連れて大木の穴に出かけました。
猟師はクマを見つけると銃(じゅう)をかまえてねらいをさだめました。
「やめてくれ」
男はさけびましたが猟師は引き金をひこうとしています。
すると、クマがものすごいいきおいで飛びかかり、男の顔を大きな手でばりばりと引っかきました。これを見た猟師はおそろしくなって銃をすて、後ろもふり返らずいちもくさんに逃げました。
村の人たちは
「助けてやったのに猟師なんか連れて行って。男があんまり恩(おん)知らずだからこんなことになったんだ」
「いくら相手が動物でも恩知らずなことをしてはいけない」
とみんなで言い合ったそうです。
むかしむかしのある冬の日。その年はいつもよりたくさんの雪がふり、人のせたけほどの雪がつもりました。
一人の男が町にでかけた帰り、あまりの雪に道がわからなくなってしまいました。雪はようしゃなくふり続き、足元さえもみえません。
すると前のほうに大きなかげがあらわれました。
「クマだ」
男ははっとしましたが、大雪で思うように動けません。このままでは食べられてしまうと思ったとき何やらクマが立ち上がり、おいでおいでと手まねきをするではありませんか。
何だろう、と思った男はクマのあとをついていきました。クマはゆっくり歩いていき、大きな木のそばで止まりました。そして男のほうをむいてから首を上下にふってみせると姿が見えなくなりました。
男がおそるおそる木に近づくとクマが大きな穴の中に入っていました。どうせこごえて死んでしまうんだ、と半分やけになった男は決心して穴に入っていきました。
クマはごろりと横になると大きな前足を男のほうにさし出します。男が顔を近づけてみると、クマが前足をぺろぺろなめるマネをしました。男が勇気を出してクマの足をなめてみると、何やら甘い甘いはちみつのような味がします。こうして男は穴の中でうとうとしながら、おなかが減るとクマの足をなめてすごしました。
雪がやみ男が元気に山を下りて来たので村中がびっくりしました。もう死んでしまったんだろう、とだれもが思っていたからです。男は穴の中でクマといっしょにいたこと、クマの足をなめてすごしたことを話しました。
これを聞いていた一人の猟師(りょうし)が
「しめしめ、この男についていけばクマをしとめることができるぞ」
と思い、男に言いました。
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男は、それもそうだ、クマにお礼をしよう、と猟師を連れて大木の穴に出かけました。
猟師はクマを見つけると銃(じゅう)をかまえてねらいをさだめました。
「やめてくれ」
男はさけびましたが猟師は引き金をひこうとしています。
すると、クマがものすごいいきおいで飛びかかり、男の顔を大きな手でばりばりと引っかきました。これを見た猟師はおそろしくなって銃をすて、後ろもふり返らずいちもくさんに逃げました。
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牛に引かれて、善光寺参り
牛に引かれて、善光寺参り
長野県の民話
むかしむかし、布引山(ぬのびきやま)という山のふもとのある村に、とてもケチなおばあさんが住んでいました。
おばあさんは、いつも一人ぼっちでしたが、それをさびしいと思った事は一度もありません。
(誰かと仲良くしたら、お茶やお菓子を出して、わしが損をする。それに家にあげれば、部屋が汚れる。だから、一人がいい)
さて、今日は村の近くの善光寺(ぜんこうじ)というお寺で、お祭りがある日です。
おばあさんが庭で白い布を干していると、お祭りへ行く村人たちが声をかけて来ました。
「おばあさん、今日は善光寺へ行く日よ」
「ねえ、みんなとお参りしましょう」
でもおばあさんは返事もしないで、白い布を干し続けていました。
「やれやれ、やっぱり駄目か」
村人たちは誘うのをあきらめて、行ってしまいました。
その後ろ姿を見ながら、おばあさんは言いました。
「寺に行って金を使うなんて、もったいないねえ。それにわたしゃあ、神も仏も大嫌いさ。拝んだところで、腹一杯になるわけじゃなし、お布施(ふせ)を取られて大損だよ」
するとその時、どこから来たのか、おばあさんの目の前に大きな牛が現れたのです。
「うひゃーっ!」
おばあさんがびっくりして声を上げると、その声に驚いた牛が、おばあさんの干していた白い布を角に引っかけて駆け出しました。
「ああ、こら、待て!」
おばあさんは、牛を追いかけます。
牛は白い布を角に引っかけたまま、どんどん走って行きます。
その早い事。
菜の花畑を駆け抜けて、桜林を駆け抜けて、まるで風の様に走ります。
そして牛は善光寺まで来ると、門をくぐって境内へ走り込みました。
その後を、おばあさんも叫びながら走り込みました。
「こらー! 牛ー! わたしの布を返せー!」
ところが不思議な事に、牛の姿が突然消えてしまったのです。
「ああ、わたしの布が・・・」
がっかりしたおばあさんは、その場へ座り込みました。
もう疲れ切って、へとへとです。
するとどこからか、やさしい声が聞こえて来ました。
それは、お経を唱える声です。
その声は、おばあさんをやさしく包み込みました。
それはまるで、春の光が体の奥からゆっくりと広がって行く様です。
「おや、こんなにいい気持ちは初めてだ。心が暖かいよ」
おばあさんは、目を閉じました。
するとおばあさんの目から、涙がどんどんあふれました。
その涙は、おばあさんの心をきれいにしていく様でした。
やがてお経が終わる頃には涙も止まり、おばあさんの心はすっきりと晴れていました。
おばあさんは、生まれて初めて手を合わせました。
「きっと仏さまが、わしをここへ連れて来て下さったんじゃ」
それからというもの、おばあさんは村人たちに優しくする様に努めました。
出来る手伝いがあれば、自分から進んで手を貸しました。
そうすればするほど心が暖かくなるのを、おばあさんは知ったのです。
おばあさんは、もう一人ぼっちではありません。
いつも村人たちに囲まれる、心優しいおばあさんになったのです。
さて、その事があってから、布引山には白いすじが見られるようになりました。
それはおばあさんの白い布を引っかけて走って行った牛が白い布を山に残して、それがそのまま白い岩になったのだと言われています。
おしまい
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おばあさんは、いつも一人ぼっちでしたが、それをさびしいと思った事は一度もありません。
(誰かと仲良くしたら、お茶やお菓子を出して、わしが損をする。それに家にあげれば、部屋が汚れる。だから、一人がいい)
さて、今日は村の近くの善光寺(ぜんこうじ)というお寺で、お祭りがある日です。
おばあさんが庭で白い布を干していると、お祭りへ行く村人たちが声をかけて来ました。
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「ねえ、みんなとお参りしましょう」
でもおばあさんは返事もしないで、白い布を干し続けていました。
「やれやれ、やっぱり駄目か」
村人たちは誘うのをあきらめて、行ってしまいました。
その後ろ姿を見ながら、おばあさんは言いました。
「寺に行って金を使うなんて、もったいないねえ。それにわたしゃあ、神も仏も大嫌いさ。拝んだところで、腹一杯になるわけじゃなし、お布施(ふせ)を取られて大損だよ」
するとその時、どこから来たのか、おばあさんの目の前に大きな牛が現れたのです。
「うひゃーっ!」
おばあさんがびっくりして声を上げると、その声に驚いた牛が、おばあさんの干していた白い布を角に引っかけて駆け出しました。
「ああ、こら、待て!」
おばあさんは、牛を追いかけます。
牛は白い布を角に引っかけたまま、どんどん走って行きます。
その早い事。
菜の花畑を駆け抜けて、桜林を駆け抜けて、まるで風の様に走ります。
そして牛は善光寺まで来ると、門をくぐって境内へ走り込みました。
その後を、おばあさんも叫びながら走り込みました。
「こらー! 牛ー! わたしの布を返せー!」
ところが不思議な事に、牛の姿が突然消えてしまったのです。
「ああ、わたしの布が・・・」
がっかりしたおばあさんは、その場へ座り込みました。
もう疲れ切って、へとへとです。
するとどこからか、やさしい声が聞こえて来ました。
それは、お経を唱える声です。
その声は、おばあさんをやさしく包み込みました。
それはまるで、春の光が体の奥からゆっくりと広がって行く様です。
「おや、こんなにいい気持ちは初めてだ。心が暖かいよ」
おばあさんは、目を閉じました。
するとおばあさんの目から、涙がどんどんあふれました。
その涙は、おばあさんの心をきれいにしていく様でした。
やがてお経が終わる頃には涙も止まり、おばあさんの心はすっきりと晴れていました。
おばあさんは、生まれて初めて手を合わせました。
「きっと仏さまが、わしをここへ連れて来て下さったんじゃ」
それからというもの、おばあさんは村人たちに優しくする様に努めました。
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そうすればするほど心が暖かくなるのを、おばあさんは知ったのです。
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