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彦島のけしき

山口県下関市彦島から、風景・歴史・ものがたりなど…

豊関ことばについて 9 

豊関ことばについて 9

非常にアクセントの強い言葉で、それでいて、どことなく、雅やかな響きがあった。
その上、田ノ首ことばによる老人たちの会話は、彦島に住んでいる者にさえも通じないことが多かった。

アクセント… その抑揚の激しさは、例えば、驚いた時に発する「オリョリョー」という感嘆詞の一種にも見ることが出来る。

この言葉は、北浦地方に土地の名を折り込んで
「矢玉タアタア、和久チューチュー、湯玉オリョリョー、小串ナッチュマアエエ」
という言葉遊びがあるので、湯玉やその近辺でも使われているはずだが、田ノ首の「オリョリョー」には、まるでソプラノ歌手によるアリアのような響きがあった。

この抑揚ぶりを文字で表現するのは極めてむずかしい。
一字ごとに説明すれば「オォ」と少し下がって「リョ」とやや上がり、次の「リョー」は犬があくびをするように驚きを強調して高く突き放してしまう言い方であった。

今、田ノ首ことばは、殆ど滅びてしまった。
七十歳以上の老人を集めて何時間も好き勝手なことを喋らせれば、案外、なつかしいアクセントの数々と、田ノ首方言が出てくるかもしれないが、テレビによる影響もあって、標準語に慣れてしまった現在では、それもむずかしい話ではないだろうか。


冨田義弘著「下関の方言」赤間関書房刊より

Posted on 2019/01/03 Thu. 12:14 [edit]

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豊関ことばについて 8 

豊関ことばについて 8

その三 田ノ首ことば

年々失われつつある下関とその近郊のことばの中で、最も惜しいと思われるのは「田ノ首ことば」であろう。

田ノ首は彦島の南端にあって小倉の延命寺と対峙する半農半漁の小さな村であったが、今では林兼造船の第三工場があり、広大な宅地造成などによって大きく拓けようとしている。

もともとこの地は、平家の落人部落だと伝えられ、同じ彦島の中でも閉鎖的で、島内他地区との交流はほとんどなかった所である。
そして、生活圏も門司の大里や小倉、若松のそれに入っていたようで、田ノ首の農家の人たちは、つい三十年前までは、小舟で九州に向かって物売りに出かけていた。
その上、藩制時代のある時期には、彦島のうち田ノ首だけが豊前藩によって支配されていたふしもある。

そのせいかどうかは知らないが、田ノ首ことばには九州弁のニュアンスがあったと惜しむ人も居るくらいである。

私には、田ノ首ことばに九州弁のイメージはダブらないが、しかし、確かに変わった語感があって、それが失われてしまったのが、残念でならない。


冨田義弘著「下関の方言」赤間関書房刊より

Posted on 2019/01/02 Wed. 12:02 [edit]

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豊関ことばについて 7 

豊関ことばについて 7

むかし、伊崎、安岡、安岡、吉見あたりの漁師たちは、
「オダンダーワッチは島でも聞くが、ワシらは沖ィ出て波に聞く」と唄ったものだという。
「オダン」「ダー」「ワッチ」は、いずれも、「私」という意味である。
「オダン」は、主として男性が用い、「ワッチ」は女性、あるいは老人用語であった。
使用範囲は下関全域と北浦、菊川、西市、小月と、かなり広い。

しかし、この場合の「ダー」だけは彦島の海士郷と田ノ首の漁師の間でのみ使われていた。
同じ彦島でもこの二地区以外では全く聞かれなかった「ダー」という一人称は確かに珍しい言葉で、
「オダン・ダー・ワッチは島ことば」
とも唄われたというその背景には「ダー」を使う島びとに対する優越感があったのかもしれない。
しかし、今、海士郷に行って古老を訪ね「ダー」を聞こうとしても、とうてい無理であろう。
それほど方言は、急速にすたれつつある訳だ。


冨田義弘著「下関の方言」赤間関書房刊より

Posted on 2019/01/01 Tue. 11:16 [edit]

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豊関ことばについて 6 

豊関ことばについて 6

「その本、買ったのかい」「うん借ったよ」
「これは、借りたんだろ」「いんにゃ、買うたんや」

これなどは、字に書けば納得いくものの、会話だけならどこまでも意志が通じない。
しかし、「買う」が「買った」と変化するだけではあまりにも単純すぎはしないだろうか。
ここはやはり「買う」は「こうた」と活用されてこそ言葉の味が出ようというものだ。

「行っチョル、見チョル、しチョル」
「ええっチャ、いけんっチャ、駄目っチャ」

これらの「チョル」と「チャ」は、下関だけの言葉でなく、山口県全域で使う。
それは前項の「軍隊で云々」の所でも書いた。


冨田義弘著「下関の方言」赤間関書房刊より

Posted on 2018/12/31 Mon. 11:36 [edit]

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豊関ことばについて 5 

豊関ことばについて 5

その二 下関弁の特徴

「下関に来て最初に腹が立ったのは、あいづちを打つのに『ああそうだ』と言わずに『アア、ソレソレ』と言われた時ですよ。まるで自分がからかわれているように思えてねぇ」

国鉄のSさんは遠い昔を思い出すような眼で私にこう言った。
何気なく口をついて出る言葉「アアソレカネ」とか「ソレソレ」とか「ホントデスカ」などは、聞きなれない人にとっては馬鹿にされているように聞こえるものらしい。

「行くホ」「どうするソ」などのように語尾に付ける「ホ」や「ソ」は、疑問、否定、肯定、いずれの場合にも使い分けるが、これはアクセントによって区分する。
「行くの、行かないの」と言う場合の「の」が、「ソ」「ホ」にあたる訳である。

「フン好き」という言葉も最近では死語になりつつあるが、下関らしいものの一つであろう。
この場合の「フン」は「とても」という意味である。
「フン好かん」となれば「大嫌い」。

「頭がワルイし、体はエライ」と言えば関東の人は驚くが、これなどは、頭痛はするし、体はだるい、という意味で愛嬌がある。

「壊れたラジオ、なおしとけよ」と言われて、
「ああ、洗濯物と一緒に、なおしたよ」と答えが返ってくれば、まるで通じていなかったことになる。
これは「修理しておけ」と言われて、「取り込んだ洗濯物と一緒に片付けた」と答えたからだ。

「背中をスッテやろうか」と親切に言って、
「スルんじゃなくて、流すんだろッ」と言われたことがある。
確かに「流す」が標準語になっているが、タオルに石鹸をなすりつけて「スッテ」から、湯で洗い「流す」から、「スル」という言葉もあやまりではない筈だ。


冨田義弘著「下関の方言」赤間関書房刊より

Posted on 2018/12/30 Sun. 10:57 [edit]

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