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彦島のけしき

山口県下関市彦島から、風景・歴史・ものがたりなど…

あまいあめのあめ 

あまいあめのあめ
インドの昔話


 むかしむかし、インドのある村に、ラクシュミとラーマという姉弟が住んでいました。
 姉のラクシュミは十二歳で、弟のラーマは八歳です。
 かわいそうな事に姉弟のお父さんもお母さんも病気で死んでしまい、二人に残されたのは庭のある家と、ほんの少しのお金だけです。
 ラクシュミは村の家々のお手伝いをして、わずかなお金をもらうことにしたのですが、それだけではその日の食べ物を買うだけでお金は無くなってしまいます。
 そこでラクシュミは、弟のラーマに言いました。
「ねえ、ラーマ。
 これからは庭に野菜をつくって、市場に売りに行きましよう。
 この家の土地はとってもいい土だって、お母さんが言っていたから」
 すると弟は、こう答えました。
「いいけど、おやつにアメを買っておくれよ」
 そこで姉は家にあるお金をかき集めると、市場へ行って野菜の種とアメを買って来ました。
 そして二人は、庭を耕し始めました。
 でも小さな庭でしたから、子どもでもそんなに時間はかかりません。
 もう少しで、耕し終わる時、
 カキン!
と、クワに何か固い物が当たった様な音がしました。
「何だろう?」
 二人が掘ってみると、何と金貨や宝石がたくさん入ったつぼが出てきたではありませんか。
「すごい・・・」
 姉は驚きの余り、それ以上の言葉が出ません。
 これだけあれば、一生食べるには困らないでしょう。
 弟は大喜びで駆け出しながら、言いました。
「すごいよ! ぼくたちは大金持ちだ! さっそく、みんなに自慢しなくちゃ!」
「・・・えっ? あっ、言いふらしては駄目よ!」
 姉はあわてて弟を止めようとしましたが、もう弟の姿はありません。
「大変だわ!
 ラーマの事だから、村中に宝物の事をしゃべってしまう。
 そうしたら欲張りな大人たちがやって来て、この宝物を横取りしてしまうかもしれない。
 どうしよう?
 何か良い方法・・・。そうだわ!」
 かしこい姉は急いでつぼを取り出すと、だれにも見つからない場所に隠しました。
 そしてつぼがあった穴を埋めて平らにすると、そこに野菜の種をまいて水をやりました。
 それから買ってきたアメを鍋に入れて、水と一緒に煮溶かしました。

 さて、しばらくして戻ってきた弟は村中を走り回って疲れたのか、庭のマンゴーの木の下のベッドでたちまち寝てしまいました。
 姉は溶かしたアメをおわんに入れてマンゴーの木に登ると、上からパラパラと振りまきました。
 溶けたアメは太陽の光にキラキラと輝きながら、弟のまわりに降り注ぎます。
 アメをまき終えた姉は、木から下りると弟に言いました。
「ラーマ、ラーマ、起きてよ。空からアメの雨が降ってきたのよ」
「えっ?!」
 弟はびっくりして目を覚ますと、手に付いたアメをなめながら言いました。
「本当だ。この雨、とっても甘いや」
 うれしそうに手をなめる弟に、姉は言いました。
「さあ、アメの雨でべたべただから、はやく水浴びをしていらっしゃい」
「はーい」
 そして弟が水浴びに出かけたすきに、姉は降らしたアメの雨をきれいに拭き取りました。

 ちょうどその時、大勢の村人たちが二人の家にやってきたのです。
(何とか、間にあったわね)
 姉は何食わぬ顔で、村人たちを出迎えました。
「あら? みなさんおそろいで、どうしたのですか?」
 すると村人たちは、口々に言いました。
「宝が出たんだってな。出てきた宝を見せてくれよ」
「かわいいラクシュミ、ラーマ。わたしはあんたたちの遠い親戚だよ。だから宝物をわけておくれ」
「その宝は、おれが以前に埋めた物だ。早く返してくれ!」
「宝は王さまの物だ。ネコババすると、死刑だぞ」
 村人たちは、自分勝手な事を言い出します。
 でも姉は慌てることなく、不思議そうな顔で言いました。
「まあ、うちのラーマが宝が出たと言ったのですか?
 でもみなさん、あわてんぼうですね。
 ラーマがどんなにおしゃべりで、ある事ない事何でも言いふらすのはご存じでしょう?」
 ちょうどそこへ水浴びを終えた弟がやってきたので、姉は弟に言いました。
「ラーマ、今日何があったのか、お姉ちゃんに話してごらんなさい」
 すると弟は、得意になって言いました。
「うん。今日、ぼくとお姉ちゃんが畑を耕していたら、ものすごい宝物が出てきたんだよ」
「それから?」
「うん。それから、さっきお昼寝をしていたら、空からアメの雨が降ってきたんだ。とっても甘かったよ」
 それを聞いた村人は、弟に尋ねました。
「空から、アメの雨が降ってきたって?!」
「うん、そうだよ。甘いアメの雨が空から降ってきたんだ」
 それを聞いたみんなは、ゲラゲラと笑い出しました。
「あははははっ。ラクシュミの言う通り、おれたちはあわてんぼうだったよ」
「そうねえ、まさかこんなところに、宝物があるわけがないものね」
「馬鹿馬鹿しい。帰ろう、帰ろう」
 そう言って、村人たちは帰って行きました。

 その後、姉は隠しておいた宝を村人が怪しまない程度に少しずつ取り出して使い、二人とも末永く幸せに暮らしたということです。

おしまい

Posted on 2014/08/20 Wed. 09:53 [edit]

category: 世界昔話

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20

おくびょうウサギ 

おくびょうウサギ
ジャータカ物語


 むかしむかし、インドの西の海岸のヤシの木の林に、ビルバという木が生えていました。
 そこにはとてもおくびょうなウサギが住んで、昼寝をしながらこんなことを考えました。
「もしもこの地面がわれたら、いったいぼくはどうなるんだろう?」
 するとそのとき、すぐそばの地面で、バシンと、ものすごい音がしました。
「そらきた! 地面がとうとうわれたぞ!」
 おくびょうなウサギははね起きて、いちもくさんに逃げ出しました。
「どうしたの? なにかあったの?」
 ほかのウサギたちが聞くと、おくびょうなウサギはふり向きもせずに走りながら答えました。 「地面がわれたんだ! 大急ぎで安全な場所へ逃げるんだ!」
「何と、それは大変だ!」
 ウサギたちはおくびょうなウサギのあとに続いて、いっせいにかけ出しました。
 それを見た、森や野原のけものたちが、
「どうしたんだ? どうしたんだ?」
と、言いながら、ウサギたちのあとに続いてかけ出しました。
 ウサギの次にシカ、次にイノシシ、次に大シカ、次に水牛(すいぎゅう)、次に野牛(やぎゅう)、次にサイ、次にトラ、そして最後にゾウです。
 おくびょうなウサギを先頭にして、それはもう大変なさわぎです。

 森の奥には、一頭の大きなライオンが住んでいました。
 ライオンは、逃げていくけものたちを見て、
「止まれ、止まれ、止まれ! いったい何事だ!」
と、ものすごい声で怒鳴りました。
 するとみんなはびっくりして、その場に止まりました。
 ライオンの質問に、ゾウが答えました。
「はい、地面がわれたのです」
「地面がわれた? お前はそれを見たのか?」
「いいえ。わたしはトラに聞きました」
 すると、トラが言いました。
「わたしは、サイに聞きました」
 次に、サイが言いました。
「わたしは、野牛に聞きました」
 野牛が、言いました。
「わたしは、水牛に聞きました」
 水牛が、言いました。
「わたしは、大シカに聞きました」
 大シカが、言いました。
「わたしは、イノシシに聞きました」
 イノシシが、言いました。
「わたしは、シカに聞きました」
 シカが、言いました。
「わたしは、ウサギに聞きました」
 ウサギが、言いました。
「わたしたちは、先頭のウサギに聞きました」
 ライオンは、先頭のおくびょうなウサギに聞きました。
「お前は、本当に地面がわれるのを見たのか?」
「はい、聞きました。たしかに、バリリリッ! と地面のわれる音がしました」
「見ていないのか? 聞いただけでは、あてにならない。どれ、わしが調べてきてやる。みんなはここで待っていなさい」
 大きなライオンはおくびょうなウサギを背中に乗せて風よりも速く走り、ビルバの木がまじって生えたヤシの林に着きました。
「ここです。この木の下で聞いたのです」
「・・・やれやれ。よくごらん。どこの地面が割れているというのだね。お前が聞いた音というのは、これが落ちた音だったのではないのかね?」
 ライオンはそばに落ちている、大きなビルバの実をころがしていいました。
「あっ。・・・そうかも、しれません」
 おくびょうなウサギは、恥ずかしそうに答えました。
 ライオンはおくびょうなウサギを乗せて、大急ぎでけものたちのところへ帰りました。
 そして、見てきたことを話しました。
「いいかね。よく確かめもせずに、ほかの者が言った言葉を信じてはいけないよ」
 ライオンにしかられて、けものたちはすごすごと自分たちの住み家に帰っていきました。

おしまい

Posted on 2014/08/19 Tue. 10:15 [edit]

category: 世界昔話

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19

おばあさんの家 

おばあさんの家
ドイツの昔話


 むかしむかし、海を見おろす丘の上の小さな家で、貧乏(びんぼう)なおばあさんが一人ぼっちで住んでいました。
 おばあさんは体が悪くて、何年も寝たきりでした。
「暗くなってきたわ。日が暮れるのかしら?」
 おばあさんは、海を見ました。
「おや? あの雲(くも)・・・」
 水平線の上に、黒い小さい雲が浮かんでいます。
「おじいさんが、よく雲の話をしてくれたけれど」
 なくなったおじいさんは船乗りで、大きい船に乗って世界中を回っていたのです。
 おばあさんは、ハッとしました。
「たいへん! あの雲はあらしの前ぶれ。もうすぐ恐ろしいあらしが、大波をつれて押し寄せてくるわ。町の人に早く知らせないと」
 おばあさんはなんとかして、少しでも早く町の人たちに知らせなければと思いました。
 でも体の悪いおばあさんには、町まで行く力がありません。
 おばあさんはベッドからずり落ちると、動かない体を引きずって窓の所まではっていきました。
「町の人たち! あらしが来るよ、早く逃げて!」
 おばあさんは、窓につかまってさけびました。
 でも誰も、おばあさんの声に気がついてくれません。
 そうしているうちにも、雲はまっ黒にふくれあがってきました。
 もうすぐ山のような大波が、町の人たちをのみ込むでしょう。
「ああ、どうしたらいいんだろう?」
 おばあさんは、自分の部屋を見回しました。
「そうだわ! ベッドに火をつけましょう。この家が燃えれば、町の人たちも気づくはず」
 おばあさんはストーブの火をとってきて、ベッドのワラにつけました。
 ワラはたちまち、真っ赤に燃え上がりました。
「燃えておくれ! 大きく燃え上がって、町の人たちを呼んでおくれ!」
 おばあさんは、何とか家の外へはい出しました。
 ベッドの火は強くなってきた風にあおられて、メラメラと屋根に燃えうつりました。
「火事だ! 丘の上の家が燃えてるぞ!」
 町の人たちが、火事に気づいてさけびました。
「火事だ! 火事だ!」
「あの家には、病気のおばあさんが一人で寝ているんだ!」
「早く助けに行こう!」
 町の人たちはみんな、丘へ向かってかけ出しました。
「おばあさん、大丈夫か!」
 町の人たちがやって来ると、おばあさんは海を指さして言いました。
「大波が来るよ! みんな、はやく逃げるんだ」
「えっ! 大波が!?」
 見てみると海の上は真っ黒で、おそろしい風がうなり、山のような大波が姿を現しました。
「大変だ! みんなをこの丘に連れてくるんだ!」

 町に住む最後の一人が丘の途中までかけあがったとき、真っ黒い大波が町をのみ込みました。
 そのようすを、町の人はふるえながら見ていました。
「おばあさんが、わたしたちを助けてくれたんだ!」
「自分のベッドや、家まで焼いて」
「ありがとう。ありがとう」
 みんなの目に、うれし涙が光りました。
 おばあさんの目にも、同じ涙が光っていました。

おしまい

Posted on 2014/08/16 Sat. 08:35 [edit]

category: 世界昔話

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16

お茶のポット 

お茶のポット
アンデルセン童話


「こんにちわ。
 私はお茶のポットです。
 私は陶器(とうき)で出来ていますのよ。
 注ぎ口は、細くて長くてすてきでしょう。
 いつでしたか、どなたかがバレリーナのうでのようと、ほめてくださいましたわ。
 とってのはばの広さは、どう思いまして?
 何と申しましても、陶器は私のように上品(じょうひん)で、しかもおしゃれでなくては。
 何しろ私は、一流(いちりゅう)の職人(しょくにん)さんが、それはそれはていねいに作ってくださいましたのよ」
 お屋敷の台所で、お茶のポットはいつもじまんしていました。
 でも聞かされるクリーム入れやさとう入れは、ほめるよりも、もっと別の事をよく言いました。
「ところで、ポットさんのフタはどうされました?」
 その事を言われると、ポットはだまってしまいます。
 フタは前に一度こわされてつぎはぎにされ、つぎ目があるのです。
「そうね。
 誰でも悪いところに、目が行くものよね。
 でも何と言われても、私はテーブルの上の女王よ。
 だって、のどがかわいている人間を、助けてあげることが出来るんですもの。
 この注ぎ口が、女王のしょうこよ。
 クリーム入れもさとう入れも、言ってみれば家来じゃないの」

 そんな、ある日の事。
 食事の時に誰かがポットを持ちあげたひょうしに、床に落としてしまったのです。
 ポットは床で音をたてて、コナゴナになってしまいました。

「それから私は、貧しい家の人にもらわれて行きましたの。
 そこで土を入れられ、球根(きゅうこん)をうめられましたわ。
 私は、うれしく思いました。
 なぜって、球根は私の体の中でグングンと元気に育ち、芽(め)を出したのです。
 そして朝をむかえるたびに大きくなり、ある朝、見事な花が咲きましたの。
 花は、娘のようなもの。
 まあ、お礼はもうしてくれませんでしたが、私は幸福でしたわ。
 家の人たちは花を見て、その美しさをほめてくれました。
 誰かを生かすために自分の命を使うって、うれしいことです。
 そのとき初めて、そう思いました。
 でも、家の人たちは『こんなきれいな花は、もっとすてきな植木ばちに植えた方がいいね』と、花を連れて行き、私を庭のすみに放り投げましたの。
 でも、私をかわいそうなどと思わないでくださいね。
 ええ、私には思い出が、たくさんあるのですから。
 これだけは誰にもこわしたり、放り投げたり出来ませんのよ」

おしまい

Posted on 2014/08/12 Tue. 09:02 [edit]

category: 世界昔話

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12

ヒツジに生まれ変わった娘 

ヒツジに生まれ変わった娘
中国の昔話


 むかしむかし、中国の役人に、ケイソクという人がいました。
 彼には一人娘がいて、目に入れても痛くないほど可愛がっていたのですが、可哀想な事に、娘は十歳の時に死んでしまったのです。
 それから二年ほどが過ぎたある日、ケイソクがお客さんにふるまうために市場からヒツジを買ってきてつないでおくと、その夜、母親の夢枕に死んだ娘が現れたのです。
 娘が身につけている青い着物に青い玉のかんざしは、娘が死ぬ前に着ていた衣装です。
 娘は、母親に言いました。
「お母さん、お久しぶりです。
 わたしはお父さんやお母さんに可愛がってもらって、本当に幸せでした。
 でも、その思い上がりからか、わたしは親に黙って色々物を勝手に使ったり、人にあげたりしました。
 盗みではありませんが、その罪を償う前にわたしは死んでしまいました。
 そして神さまに、その罪は生きている間に償わなければならないと言われました。
 わたしは今、ヒツジに生まれ変わっており、その時の罪を今日償うことになりました。
 お客さんにふるまうために買ってこられたヒツジの中に、毛が青白いヒツジがいますが、それがわたしです。
 寿命で死ぬのは仕方ありませんが、殺されるのは嫌です。
 怖いです。
 お母さん、どうか、わたしを助けてください」
 目を覚ました母親はびっくりして、さっそく調理場に行ってみると、白いヒツジに混じって毛の青白いヒツジが一頭いるではありませんか。
 毛の青白いヒツジは母親と目が合うと、悲しそうに涙をこぼしました。
(このヒツジが、娘なのだわ!)
 母親はあわてて、調理人を呼びつけて
「このヒツジを殺すのは待ってちょうだい! 主人は出かけて留守ですが、今から探しに行って、主人に事情を話して殺すのは許してやるつもりです」
と、言いました。
 やがて母親と入れ違いに父親が出先から帰ってくると、宴の料理が遅れているのに気が付きました。
「何をしている。料理が遅れているではないか!」
 叱られた調理人たちは、
「ですが、奥さまがヒツジを殺すなとおっしゃったのです。ご主人さまがお帰りになったら、事情を話して、殺すのは許すつもりだと」
と、言いましたが、父親はすっかり腹を立てて、
「ヒツジを許す? 何を馬鹿な事を。お客さまが待っているのだぞ。さあ、早く仕事をすすめるのだ」
と、言うので、調理人たちは仕方なく、ヒツジを料理するために天井から吊り下げました。
 そこへ客人たちがやってきて、料理されようとしているヒツジを見てびっくりしました。
 客人の目にはそれがヒツジではなく、十歳ばかりの可愛らしい女の子を、髪に縄をつけてぶら下げているように見えたからです。
 しかもその女の子は、悲しげな顔をして、
「わたしはこの家の主の娘でしたが、ヒツジに生まれかわり、殺されようとしています。どうか皆さま、命をお助けくださいませ」
と、言うではありませんか。
 そこで客人たちは口々に、
「何て事だ。料理人よ、決してヒツジを殺してはなりませんぞ。はやく主人に言って、やめさせなければ」
と、あわてて出ていきました。
 けれど調理人には、つるしているのがどう見てもヒツジにしか見えませんし、その声も、ただのヒツジの鳴き声に聞こえるのです。
「奥さまも、お客さまも、おかしな人たちだ。さあ、はやく料理をしないと、ご主人さまに叱られてしまう」
 料理人はそう言うと、涙を流すヒツジを殺して、さまざまな料理を作りました。
 やがて客人の前に美味しそうなヒツジ料理が並べられましたが、客人たちは一口も箸をつけずに帰ってしまいました。
「おや? どうして料理を食べないのだろう?」
 遅れてやって来た主人が、不思議に思って客人にわけを聞くと、
「あれほど探していたのに、あなたは今までどこへ行っていたのですか? あのヒツジは、あなたの娘さんの生まれ変わりなのですよ」
と、いうではありませんか。
 ちょうどそこへやってきた母親は、料理されたヒツジを見て泣き崩れました。
 やがて母親から事情を聞いた主人は、悲しみの余り病気になり、そのまま死んでしまったそうです。

おしまい

Posted on 2014/08/10 Sun. 17:10 [edit]

category: 世界昔話

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10

かしこい大臣 

かしこい大臣
中国の昔話


 むかしむかし、唐の国(とうのくに→中国)に、それはそれは美しいお姫さまがいました。
 かしこくて優しい方だったので、どこの国の王さまも自分のおきさきにむかえたいと思っていました。
 そしてチベットの王さまも、このお姫さまをおきさきにむかえたいと思って、一番かしこい大臣を唐の都へお使いにやりました。

 唐の都には、六つの国からお使いが来ていました。
 唐の皇帝(こうてい→王さま)はチべットからのお使いが来たと聞いて、困ってしまいました。
 もしもそんな遠くの国へお姫さまをお嫁にやってしまっては、なかなか会う事が出来ないだろうと思ったからです。
 そこで皇帝は、家来たちを集めて相談しました。
「どうすれば、チベットからの申し出を断ることが出来るだろうか?」
 すると、一人の家来が言いました。
「チベットからの申し出だけを断ることも出来ませんから、使者たちに難しい問題を出して、それをといた者の国王に姫ぎみとのご結婚をお許しになるというのはいかがでしょう?
 チベットは田舎の国だから、きっと難しい問題はとけないでしょう 」
 この考えに、みんなは賛成しました。

 さて次の日、皇帝は五百頭の母ウマと、五百頭の子ウマを用意させました。
 そして母ウマだけをつなぐと、こう言いました。
「使者の方々、遠いところをごくろうでした。
 わたしに七人の娘があればよろしいのですが、ざんねんなことに娘はたった一人しかおりません。
 そこでわたしは、こう考えました。
 今ここには、五百頭の母ウマと五百頭の子ウマがいます。
 それぞれの親子を見分けた方の王さまに、姫をさしあげることにしましょうと」
 そこでお使いたちは子ウマを連れて、母ウマたちのそばへ行きました。
 けれども、どの母ウマと子ウマが親子かなんて、いくら見比べてもわかりません。
 お使いたちが頭を悩ませていると、チべットのお使いが皇帝に頼んで、おいしいウマのえさをたくさん用意してもらいました。
 そしてそのえさを、母ウマにお腹いっぱい食べさせたのです。
 チべット人はウマを扱いなれているので、ウマの性質もよく知っていたのです。
 母ウマたちはお腹がいっぱいになると、高く首をあげていななきました。
『さあ、はやくおいで。お乳をあげましょう』
 それを聞いた子ウマたちは、それぞれの母ウマのところへかけよってお乳を飲み始めました。
 こうしてチベットのお使いは、五百組のウマの親子を残らず見分けたのです。
 皇帝は、おどろきました。
(これは、まずい事になったぞ)
 そこで皇帝は家来たちと相談して、もうひとつ問題を出すことにしました。
「ここに、穴の開いたみどり色の玉があります。
 この玉の穴に糸を通すことの出来た者の国王に、姫をお嫁にやりましょう」
 お使いたちは、その玉を手にとってみました。
 ところがその玉の穴はとても小さくて、しかも玉の中ほどで穴がまがりくねっているのです。
 六人のお使いたちは、なんとか糸を通そうとしました。
 けれども半日たっても、誰一人通すことが出来ません。
 考えたチベットのお使いは、一匹のアリをつかまえてきました。
 その足に糸をむすびつけて、玉の穴に入れました。
 そして出口の穴に、あまいハチミツをぬっておきました。
 するとアリはハチミツのにおいにひかれて、糸をひっぱったまま穴を通り抜けたのです。
 それを見て皇帝は、困ってしまいました。
(またしても、チベットの使いか)
 皇帝はまた家来たちと相談して、別の問題を考えました。
 皇帝は大工を呼ぶと大きな木を切り倒させて、根元に近い方も上の方も同じ形にけずらせました。
 そしてその木を七人のお使いの前に運ばせて、
「この木は、どちらが根元で、どちらが先の方かな?」
と、問題を出しまた。
 まずは六人のお使いが木の両はしを調べてみましたが、どっちが根元でどっちが先の方か、さっぱりわかりません。
 そして今度も、チべットのお使いが見分けることになりました。
 チベットは高い山にかこまれた国ですから、木の事をよく知っています。
 チベットのお使いは、ご殿の庭を流れている川に木を浮かばせました。
 木は水面に浮かんだまま、ゆっくりと流れていきます。
 そのうちに軽い方が先になり、重い方が後ろになりました。
 チベットのお使いは、それを指さして言いました。
「後ろの方が根元で、前が木の先でございます。
 なぜなら木は、先のより根元が重いからです。
 水に流れるときは軽い方が先になって流れますから、簡単に見分けられます」
「・・・うむ。正解だ」
 こうなっては皇帝も、チベットのお使いのかしこさを認めないわけにはいきません。
 それでも、一人娘を遠い国ヘお嫁にやってしまうのはいやです。
 そこでもう一度家来たちを集めて、難しい問題を相談しました。
 一人の大臣が、言いました。
「よい考えが、ございます。
 お姫さまと同じように美しい娘たちを三百人集めて、お姫さまと同じ着物を着せるのです。
 そしてその中から、お姫さまを選び出させるのでございます」
「なるほど。
 七人の使いたちは、誰も姫の顔を知らないからな」
 そこで皇帝は、使いの人たちに言いました。
「明日、三百人の美しい娘の中から、姫を選び出してください。
 それが出来た人の国王こそ、姫にふさわしい方と考えます」
 これを聞いて、七人のお使いたちは驚きました。
 特にチベットは遠い国なので、お姫さまのことは何も知りません。
 そこでチベットのお使いは、ご殿のまわりをさんぽするようなふりをして、ご殿に出入りする人たちにお姫さまのことをたずねました。
 けれども、だれも知らないというのです。
 そのとき、ご殿の裏口から一人の洗濯ばあさんが出てきました。
 チベットのお使いは、このおばあさんにも聞いてみました。
 おばあさんは、顔色を変えて言いました。
「とんでもない。よその国のお方にお姫さまのことをお知らせしたら、わたしの命がなくなります」
 けれどもチべットのお使いは、このまま引き下がりません。
「おねがいだ。チベット王はすぐれた方です。姫ぎみに、ふさわしい人ですよ」
 おばあさんはチベットのお使いがとても熱心なので、つい心を動かされました。
「これは、お姫さまのおそばの人が話しているのを、聞いたんですがね」

 さて、あくる日。
 チベットのお使いがご殿に行くと、三百人の美しい娘たちがずらりとならんでいました。
 ほかの六人はとっくに来ていましたが、どうしてもお姫さまを探し出す事が出来なくて、あきらめたところでした。
 チベットのお使いは、一人一人をゆっくりとながめていきました。
 やがて一人の娘の頭の上を、金色のハチが飛んでいるのを見つけました。
 その娘はいやな顔もしないで、やさしくハチを見ています。
「このお方で、ございます!」
 チベットのお使いは、その娘を指さしました。
「みごとだ。そのとおり」
 皇帝は、すっかり感心してしまいました。
 実は、せんたくばあさんの話しによると、お姫さまは髪の毛にハチミツをぬるのが大好きだったのです。
 そのためハチやチョウチョウが集まってくるので、お姫さまはいつもムシをかわいがっていたのです。
 皇帝は、お姫さまをチべット王にお嫁にやることにきめました。
 チベットのお使いは喜んで、お礼をいいました。
 それから、お姫さまにむかって、
「お姫さま、チベット王のもとにお嫁入りなさいますときは、金銀や、おめしものなどはお持ちくださるにはおよびません。
 そのような物は、チべットにもたくさんございます。
 そのかわり穀物(こくもつ)のタネと、腕の良い職人をおねがいいたします」
と、頼みました。
 お姫さまはそれを、皇帝にお願いしました。

 さて、お嫁入りの日が来ました。
 皇帝はお姫さまの願い通り穀物のタネを五百頭のウマにつみ、すきや、くわを、千頭のウマにつんで持たせてやりました。
 ほかに腕のいい職人を、何百人もお供につけてやりました。

 こうしてチベットには穀物のタネがまかれて、おいしいムギなどがとれるようになったのです。
 連れて行った職人たちも腕をふるって、立派な織物や細工物(さいくもの)をつくりはじめました。
 今でもチベットでは、そのときに伝わった織物や細工物が名産となっています。

おしまい

Posted on 2014/08/09 Sat. 10:15 [edit]

category: 世界昔話

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09

レモンのごほうび 

レモンのごほうび
インドの昔話


 むかしむかし、インドのお城に、ラブダ・ダッタという正直者の門番がいました。
 門番は貧乏で着る物がないので、雨の日も日照りの時も、毛皮を腰にまいた姿で門に立っていました。
「あれは、何とまじめな門番だろう」
 王さまは、門番が気に入りました。
 そこで狩りに出かけるとき、王さまはその門番をお供として連れて行ったのです。

 門番は、はだしで腰に毛皮をまいたかっこうで、
「やあ! やあ! たあっ!」
と、棒を振り回してイノシシやシカをやっつけました。
「おかげで、えものが増えたぞ」
 王さまは、大喜びです。

 ある時、王さまは隣の国と戦争を始めました。
「王さま、わたくしもお供させてください」
 門番は、王さまにお願いしましたが、
「だめだ。お前は、弓が使えないだろう」
「はい。でも弓なんか使えなくても、大丈夫です」
 門番は太い腕を、王さまに見せました。
「これで敵を、やっつけてごらんにいれます」
 そして戦争に行くと門番は棒を振り回して戦い、誰よりもたくさんの敵をやっつけたではありませんか。
「なんと、いさましい男だろう」
 王さまは、また感心してしまいました。

 それから、数年がたちました。
 門番はあいかわらず、お城の門に立っていました。
 そんな門番を見て、王さまは、
「あの門番はまじめだし、いさましい男だ。
 それなのによほど運が悪いのか、出世も出来ずにまだ門番だ。
 何か、ほうびをやりたいものじゃ」
と、思いました。
 そして家来たちを大勢集めると、門番に言いました。
「ラブダ・ダッタよ。何か、歌をうたっておくれ」
「はい。わかりました」
 門番は大きな口を開けて、こんな歌をうたいました。
♪運の神さま えこひいき。
♪お金持ちには 親切で、
♪貧乏人には 知らん顔。
♪運の神さま えこひいき。
 王さまはおもしろそうに笑って、門番にレモンを一つあげました。

「ごほうびは、レモン一つか。やっぱりわたしは、運が悪いんだなあ」
 門番がしょんぼりと門に立っていると、坊さんが声をかけました。
「これは、見事なレモンだ。どうです。この着物と、取り替えてくれませんか?」
「いいですとも」
 門番は喜んで、レモンと着物を取り替えました。
 その後、坊さんは王さまのところへ行ってレモンを差し出しました。
「王さま。立派なレモンを手に入れました。めしあがってください」
 王さまは、そのレモンを見てビックリ。
「ああ、あの男は、まだ運がむいていないなあ」
 実はレモンの中には、たくさんの宝石がつめてあったのです。

 次の日、王さまはまたみんなを集めて、門番に歌をうたわせました。
♪運の神さま えこひいき。
♪お金持ちには 親切で、
♪貧乏人には 知らん顔。
♪運の神さま えこひいき。
 門番がうたうと、王さまはうれしそうに笑いました。
 そしてごほうびに、またレモンを門番にあげました。
「ああ、今日もレモンだった」
 門番はガッカリして、レモンを持ったまま門に立っていました。
 そこに、役人がやってきました。
「なんと、見事なレモンだろう。王さまに、差し上げよう。どうだ、着物二枚と取り替えてはくれないか?」
「いいですとも」
 門番は喜んで、レモンと着物二枚を取り替えました。
 王さまは役人が持ってきたレモンを見て、悲しくなりました。
「どこまで、運の悪い男だろう。このレモンを、着物二枚と取り替えるなんて」

 また次の日、王さまはみんなを集めて門番に歌をうたわせました。
 そしてまた、ごほうびにレモンをあげました。
 それを見て、家来たちは不思議に思いました。
「どうしていつも、王さまはレモンしかあげないのだろう? 王さまは、めぐみ深い方なのに」
 門番は、今度はレモンを王さまのおきさきさまにあげました。
「おいしそうなレモンだこと。王さまが、お喜びになるわ」
 おきさきさまはそう言って、門番に金のかたまりをくれました。
 門番はその金のかたまりを売って、ごちそうをお腹かいっぱい食べました。

「またか。何度やっても、宝石をつめたレモンが戻ってくるなあ」
 おきさきさまからレモンを受け取った王さまは、それでもまだあきらめません。

 次の日、王さまは、みんなを集めました。
 大臣も町の人々も、集まってきました。
 王さまはいつものように、門番に歌をうたわせました。
♪運の神さま えこひいき。
♪お金持ちには 親切で、
♪貧乏人には 知らん顔。
♪運の神さま えこひいき。
「うまいうまい。それでは、ほうびをあげよう」
 王さまはいつもより、もっと楽しそうに言いました。
「今度こそ、お金をどっさりあげるにちがいない」
 みんなは、ジッと王さまの顔を見つめました。
 ところが王さまがくれたのは、やっぱりレモン一つきりです。
 門番が受け取ろうとすると、王さまはわざとそのレモンを床に落としました。
 すると床に落ちたレモンはまっぷたつに割れて、中から光り輝く物がこぼれ出ました。
「あっ、宝石だ!」
「いっぱいつまっているぞ。これはすごい!」
「お金より、ずっといいじゃないか!」
 みんなは、ビックリして言いました。
 門番はあっけにとられて、口もきけません。
「そうだったのか。やっぱり王さまは、めぐみ深い方だったんだよ」
 家来たちは、口々に王さまをほめました。
 王さまは門番に宝石のつまったレモン一個のほかに、村を一つと金貨もたくさんあげたということです。

おしまい

Posted on 2014/08/08 Fri. 08:47 [edit]

category: 世界昔話

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08

金のカラス 

金のカラス
マャンマーの昔話


 むかしむかし、ある村に、夫に死なれた貧乏な女の人がいました。
 女の人には、きれいでやさしい一人娘がいます。

 ある日の事、女の人が娘に言いました。
「お米の入った箱を日なたに干しているから、取られないように見張り番をしておくれ」
「はい。わかりました」
 娘が米の箱の側に座って番をしていると、どこからか金色のカラスが飛んできました。
「あっ、だめよ。あっちに行って!」
 娘はカラスを追い払おうとしますが、カラスは平気で箱に入った米を全部食べてしまったのです。
「ああ、どうしましょう」
 娘が泣き出すと、金色のカラスが言いました。
「娘さん、心配しないで。代わりの物をあげるから。夕方、村はずれの大きな木のところへおいで」

 夕方、娘が大きな木の下へ行くと、木のてっぺんにある小さな金色の家から、金色のカラスが顔を出して言いました。
「いま、はしごを下ろしてあげるけど、金と銀とブリキのうち、どのはしごがいい?」
「わたしは、ブリキのはしごでいいわ」
 娘が答えると、カラスは金のはしごを下ろしてくれました。
 娘がはしごを登って小さな金色の家に行ってみると、カラスは夕ご飯の支度をしながら言いました。
「お皿は、金のお皿か、銀のお皿か、ブリキのお皿か、どれがいい?」
「ブリキのお皿でいいわ」
 娘が答えると、カラスは金のお皿に、おいしいごちそうを山の様に出してくれました。
 娘が食べ終わると、カラスは三つの箱を持って来て言いました。
「お土産をあげよう。大きい箱と、中くらいの箱と、小さい箱、どの箱がいい?」
「小さい箱でいいわ」
 娘は小さな箱をもらうと、カラスにお礼を言って家に帰りました。
 そして娘がお母さんと一緒に小さな箱を開けてみると、中から光り輝くルビーがたくさん出てきました。
 おかげでお母さんと娘は、お金持ちになって幸せになりました。

 さて、この二人の近所に、とても欲張りな母親と娘が住んでいました。
 欲張りな二人は金色のカラスの話を聞くと、自分たちも同じようにルビーがもらいたくてたまりません。
 そこで欲張りな二人は、さっそく日なたに米の箱を出しました。
 すると金色のカラスがやって来て、箱の米を食べ始めました。
 それを見つけた欲張り娘が、大声で叫びました。
「こら! よくもお米を食べたね。代わりに宝物を寄こさないと、ひどい目に会わせるよ!」
 こうして金色のカラスに無理矢理約束させた娘が、夕方に木の下に行ってみると、
「はしごを下ろすけれど、金と銀とブリキのうち、どのはしごがいい?」
と、金色のカラスが聞きました。
 すると欲張りな娘が、
「もちろん、金のはしごだよ」
と、答えると、カラスはわざとブリキのはしごを下ろしました。
 次にカラスは娘に、金と銀とブリキのうち、どのお皿がいいかと尋ねました。
「もちろん、金の皿だよ」
 娘が言うと、カラスはわざと、ブリキのお皿で少しのごちそうを食べさせました。
 娘が怒って、カラスに怒鳴りました。
「お前は、なんてけちなカラスだろう。もういいわ、早くお土産を持ってきなさい!」
 するとカラスは、大きい箱と、中くらいの箱と、小さな箱を持ってきました。
「大きい箱と、・・・」
 カラスが説明しようとすると、娘は大きい箱をつかんで、
「大きい箱に、決まっているでしょう!」
と、カラスに礼も言わずに、大きい箱を持って家に帰りました。
 欲張りな娘が家に帰ると、すぐに欲張りな母親が飛んできて言いました。
「よくやったね。しかも隣の家よりも、大きい箱じゃないの」
「当然でしょう。さあ、二人で箱を開けましょう」
  欲張りな娘と母親が、わくわくしながら大きな箱のふたを開けてみると。
「ぎゃあーーーー!」
 二人は叫んで、ブルブルと震え上がりました。
 何と大きな箱の中からは、毒ヘビや毒クモや毒トカゲなどが、次から次へとはい出てきたのです。

おしまい

Posted on 2014/08/04 Mon. 09:13 [edit]

category: 世界昔話

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04

銀の鼻 

銀の鼻
イタリアの昔話


 むかしむかし、イタリアのある町に、三人の娘がいる洗濯屋のおかみさんがいました。
 おかみさんと娘の四人は一生懸命に働きますが、暮らしは少しも楽になりません。
 ある日、一番上の娘がこんな事を言いました。
「いっそのこと、悪魔(あくま)のところでもいいから、奉公(ほうこう→住み込みではたらくこと)にいこうかしら」
 それを聞いて、お母さんが娘をしかりつけました。
「まあ、なんて事を言うんだい! そんな事をしたらどんな不幸な目に会うか、わからないのかい!」

 それからしばらくしたある日、黒い服を着て銀の鼻をした上品な紳士がやってきて、ていねいな言葉つきで言いました。
「おかみさん。おたくには娘さんが、三人もいますね。そのうちの一人を、わたしの家に奉公にお出しになりませんか?」
 お母さんは、その人が銀の鼻をしているのが気に入りませんでした。
 そこで姉娘に、こう言いました。
「世の中に、銀の鼻をしている人なんていないよ。あれはきっと、悪魔にちがいない。奉公に行ったら、きっと後悔することになるよ」
 でも姉娘は、
「悪魔なんて、馬鹿馬鹿しい。あたし、奉公に行くわ」
と、銀の鼻の紳士の家に、奉公に行く事にしたのです。

 二人はいくつもの山をこえ、長い道のりを歩いていきました。
 するとはるか遠くの方に、火事のようにボーッと明るくなっているところが見えました。
「あれは、なんですか?」
 姉娘は、少し怖くなって聞きました。
「わたしの家だよ」
「あそこが?」
「もう少しだ。さあ行こう」
「・・・・・・」
 姉娘は、しぶしぶとついていきました。
 やがて二人は、銀の鼻の大きな宮殿(きゅうでん)につきました。
 銀の鼻は宮殿の部屋を次々と案内して、最後の部屋の前へ来ると姉娘にカギを渡して言いました。
「ほかの部屋はいつでも入っていいが、この部屋だけは、どんな事があっても開けてはいけないよ」
 その晩、娘が部屋で眠っていると銀の鼻はそっと入ってきて、娘の髪にバラの花をさして出て行きました。

 あくる日、銀の鼻は用事で出かけていきました。
 一人になった姉娘は、あの部屋を開けてみたくてたまりません。
 そしてとうとう秘密の部屋のとびらに、かぎをさしこんでしまいました。
 とびらを開けると部屋の中はまっ赤な炎がふき出していて、中では焼けただれた人が大勢苦しんでいました。
 銀の鼻は、やっぱり悪魔だったのです。
 姉娘はすぐにとびらを閉めましたが、その時に髪のバラの花がこげてしまったのです。
 夜になって帰ってきた銀の鼻は、姉娘のバラの花がこげているのに気がつくと、
「よくも、いいつけにそむいたな!」
と、叫んで、娘を地獄の部屋に投げ込んでしまいました。

 あくる日、銀の鼻はまた、洗濯屋のおかみさんのところへ行きました。
「娘さんは、大変幸せに働いています。でも、まだ人手が足りません。二番目の娘さんもよこしてください」
 それで二番目の娘も、奉公することになりました。
 宮殿につくと銀の鼻は部屋を順番に案内し、最後の部屋の前でカギを渡して言いました。
「ほかの部屋はいつでも入っていいが、この部屋だけは、どんな事があっても開けてはいけないよ」
 その晩、二番目の娘が眠っていると銀の鼻はそっと入ってきて、髪の毛にカーネーションの花をさしました。

 あくる日、銀の鼻は用事で出かけました。
 二番目の娘は、あの部屋を開けてみたくてたまりません。
 そして秘密の部屋を開けて、炎の中にいるお姉さんを見つけました。
「妹よ。たすけて、たすけて」
 お姉さんの叫び声を聞くと、妹はあわててとびらを閉めて逃げ出しました。
 やがて帰ってきた銀の鼻は、二番目の娘のカーネーションがこげているのに気がつきました。
「よくも、いいつけにそむいたな!」
 悪魔は二番目の娘をつかまえると、地獄の部屋の中へ投げ込んでしまいました。

 あくる日、銀の鼻はまた洗濯屋に行って、一番りこうな末娘のルチーアを連れて行きました。
 銀の鼻は二人のお姉さんと同じように宮殿の部屋を案内してから、秘密の部屋のカギを渡しました。
 そしてルチーアが眠っているとき、今度は髪にジャスミンの花をさしました。

 あくる朝、ルチーアは髪のジャスミンに気づきました。
「まあ、きれいな花。でも、これではじきにしぼんじゃうから、コップにさしておきましょう」
 銀の鼻は、用事で出かけました。
 するとルチーアも、あの部屋を開けてみたくてたまりません。
 ルチーアが秘密の部屋のとびらを開けると、
「ルチーア。たすけて、たすけて」
と、炎の部屋から、お姉さんたちの悲しい声が聞こえました。
 ルチーアは自分の部屋へ逃げ帰ると、ジャスミンの花を髪にさして、お姉さんたちを助ける方法を考えました。
 やがて銀の鼻が帰ってきましたが、ルチーアのジャスミンの花はきれいなままです。
 銀の鼻は、にっこり笑って言いました。
「お前は、いいつけをよく守るよい子だ。これからもずっと、ここにいてくれるね」
「はい。でも、お母さんがどうしているか気がかりです」
「じゃあ、わたしが見てくるよ」
 銀の鼻が出かけると、ルチーアは一番上のお姉さんを地獄の部屋から助け出して袋の中に入れました。
 やがて銀の鼻が帰ってくると、ルチーアは言いました。
「ご主人さま。これは洗濯物です。家へ届けてください。重いですが、道の途中で開けて見てはいけません。わたしはここで、見張っていますから」
「いいとも。開けやしないよ」
 銀の鼻は、また出かけました。

 袋が重いので、銀の鼻は道の途中で中を見ようとしました。
 すると、
「見てるわよ。見てるわよ」
と、声が聞こえて来ました。
 ルチーアはお姉さんに、袋が開けられそうになったらそう言うようにいっておいたのです。
 銀の鼻はしかたなく、重い袋をかついでお母さんのところへ届けました。
 そして次の日は、二番目のお姉さんも家へ帰る事が出来ました。

 さて明日は、ルチーアが逃げるばんです。
 ルチーアはシーツで、自分そっくりの人形をつくりました。
「ご主人さま。わたしは体のぐあいが悪くて、明日は寝ているかもしれませんが、ベッドのわきの洗濯物をまた届けてください」
 そう言ってルチーアは人形をベッドに寝かせて、自分は袋の中に入りました。


 次の日、銀の鼻は袋をかついで出かけましたが、重くてたまりません。
 そこで袋をおろして、中を見ようとしました。
 すると中から、
「見てるわよ」
と、声が聞こえてきました。
「あの子には、かなわんな。まるで、そばで見ているようだ」
 銀の鼻はしかたなく、そのままかついでお母さんのところへ届けました。
「では、洗濯物はここへおくよ。ルチーアが病気なので、わたしはこれで帰るよ」
 銀の鼻はそう言うと、急いで帰っていきました。

 こうして三人は、無事に悪魔の家から逃げてきたのです。
 ルチーアは悪魔の家からお金をたくさん持ってきていたので、三人は幸せに暮らすことが出来ました。
 また、家の戸口に魔よけの十字架を立てたので、悪魔はもうやって来ませんでした。

おしまい

Posted on 2014/08/03 Sun. 08:05 [edit]

category: 世界昔話

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03

吸血鬼 

吸血鬼
ロシアの昔話


 むかしむかし、ロシアのある村に、バニアという男が住んでいました。
 バニアの仕事は、ナベやカマを売ったり直す事です。

 ある晩、仕事で帰るのが遅くなったバニアは、古い教会の前でウマをとめました。
 教会には誰も住んでおらず、教会のまわりは墓場(はかば)でした。
「気味が悪いが、今夜はここで寝るとしよう」
 バニアは毛布を広げると、グーグーと眠ってしまいました。
 今夜は星空のきれいな日で、空にはまるい月がかかっています。
♪ボーン、ボーン。
 教会の鐘(かね)が、十二時をうちました。
 その時です。
 墓場の地面が、地震のようにグラグラとゆれました。
「なっ、何だ?」
 バニアは飛び起きると、あわてて近くの木のかげにかくれました。
 するとゆれていた地面がバックリと割れ、中から白い服を着た恐ろしい顔の魔物が出て来たのです。
 頭には棺(かん)おけのふたをのせ、目は青白く光り、口からは鋭いキバが生えています。
 この魔物は人間の血を吸って殺してしまう、吸血鬼(きゅうけつき)に間違いありません。
 吸血鬼は月の明るい晩に墓場から現れて、人間の血を求めてさまよい歩くのです。
 吸血鬼は棺おけのふたを教会のかベに立てかけると、人間の血を求めて村の方へ行ってしまいました。
「このままでは、村人たちが殺されてしまう」
 その時バニアは、子どもの頃におばあさんから聞いた話しを思い出しました。
『いいかい、バニア。
 吸血鬼は恐ろしい魔物で、弓矢や剣では倒せないんだ。
 だけど太陽の光には弱くてね、明け方までに棺おけに入ってふたをしっかりしめないと、干物のようにひからびてしまうんだ。
 でも、それだけでは死なないよ。
 吸血鬼は夜になると、また生き返るからね。
 二度と生き返らないようにするには、とねりこ(→モクセイ科の落葉小高木)の木で作ったクイを、吸血鬼の心臓に突き刺すんだ 』
 バニアは教会のかべに立てかけてあった棺おけのふたをかかえると、木のかげに隠れて吸血鬼が帰って来るのを待ちました。

 夜明け近くになると、人間の血をたっぷりと吸ったのか、吸血鬼が満足そうな顔で帰ってきました。
 ところが、教会のかべを見てビックリ。
「ややっ、ふたがない! あれがなくては、おれは死んでしまう!」
 吸血鬼は必死になって、棺おけのふたを探します。
「どこだ、どこだ、どこだ、どこなんだー!」
 そのあわてたようすがおかしくて、バニアはクスッと笑ってしまいました。
 それに気づいた吸血鬼は、隠れているバニアを見つけました。
「さてはお前だな、棺おけのふたを盗んだのは!
 すぐ返さないと、お前の血を全部吸ってやるぞ!」
「ふん、その前に、この棺おけのふたをバラバラにしてやる!」
 バニアは棺おけのふたに、鉄のナベをふりかざしました。
「ああ、やめてくれ、やめてくれ!」
「じゃあ、今日は誰を殺してきたのか言うんだ!
 それからその人間を、生き返らせる方法も言うんだ!」
 吸血鬼は、かぼそい声で答えました。
「今日は、村のグレゴリじいさんの血を吸った。
 生き返らせるには、おれの服の左側を切り取って、死人の部屋で燃やせばいい。
 そのけむりを浴びれば、死人が生き返るのだ」
「よし、ではお前の服の左側と、棺おけのふたを交換だ」
 吸血鬼は自分の服の左側を破って渡すと、受け取った棺おけのふたを頭にのせて急いで墓に飛び込みました。
 ちょうどその時、ニワトリが『コケコッコー』と鳴きました。
 夜が、明けたのです。
「ギャアーー! ひと足おそかったか!」
 朝日をあびた吸血鬼は頭に棺おけのふたをのせたまま、干物(ひもの)のようにひからびてしまいました。

 バニアは吸血鬼の服の左側を持って、村へと急ぎました。
 そしてグレゴリじいさんの家を見つけると、吸血鬼の言った方法でグレゴリじいさんを生き返らせてやりました。
 それから村人たちを案内して、ひからびた吸血鬼を見せました。
 バニアは、とねりこの木の枝をとがらすと、おどろいている村人の前で吸血鬼の心臓に突き刺しました。
「さあ、これで安心。吸血鬼は、二度と生き返る事はありません」
 吸血鬼をやっつけたバニアに、村人たちはたくさんのお礼をしたそうです。

おしまい

Posted on 2014/08/01 Fri. 08:33 [edit]

category: 世界昔話

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01

死に神の恋人 

死に神の恋人
ジプシーの昔話


 むかしむかし、あるところに、女の人が一人で暮らしていました。

 ある晩の事、誰かが女の人の家の戸を叩きました。
「はーい、どなたですか?」
「わたしは、旅の者です。遠い道を歩いてきて、へとへとに疲れています。どうか一晩、わたしを泊めていただけませんか?」
 女の人が戸を開けると、そこには信じられないほど美しい男の人が立っていました。
「はい。こんな所でよかったら、どうぞお入りください。
 残り物ですが、食事の用意をしますね」
 女の人は久しぶりのお客さんに、とてもうれしくなりました。
「ありがとうございます。これでやっと、休むことが出来ます。このところ仕事がいそがしくて、休むのは千年ぶりです」
「まあ、千年ぶりだなんて、面白い人」

 次の日、旅人が女の人に言いました。
「どうやら、もうしばらくは仕事を休めそうです。すみませんが、今日も泊めてもらえませんか?」
「ええ、喜んで」
 女の人は旅人を好きになっていたので、うれしそうに言いました。
 それからも旅人は、しばらく仕事を休んで女の人の家に泊めてもらいました。
 旅人も女の人が好きになり、二人はとても幸せな日々を過ごしました。

 そんなある晩、女の人は夢でうなされて目を覚ましました。
 旅人は、女の人に優しく言いました。
「大丈夫ですか? とてもうなされていましたが」
「ええ、とっても恐ろしい夢を見たの。本当に、夢で良かったわ」
「それは、どんな夢ですか?」
「はい、あり得ないことだけど、夢の中のあなたはとても冷たくて、青白い顔をしていましたわ。そしてあなたが角笛を吹くと、大勢の死人があなたの後ろをついて行くの」
「!!!」
 それを聞いた旅人は、びっくりした顔で立ち上がりました。
 そして、かなしそうに言いました。
「残念ですが、あなたとはもうお別れです。早く仕事に戻らないと、この世が死人であふれてしまいます」
「えっ? それはどういう事? あなたのお仕事は、一体なんなの?」
「それは、言えません。それを知れば、あなたは死んでしまいます。わたしは、好きなあなたに死んで欲しくありません。・・・では、さようなら」
「待ってください! あなたがいなくなるのなら、わたしは死んだも同じです。お願いですから、あなたが何者なのか教えてください」
「しかし・・・」
「お願いします。このままあなたと別れるのは、死ぬよりもつらいです」
 女の人は、そう言って涙を流しました。
「・・・わかりました。そこまで言うのなら、教えてあげましょう。
 わたしの仕事は、死人をあの世に送ることです。
 わたしは、死神です」
「ああっ」
 女の人は驚きの声を上げると、その場に倒れて死んでしまいました。

おしまい

Posted on 2014/07/22 Tue. 10:59 [edit]

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22

水晶箱に入ったネズミ 

水晶箱に入ったネズミ
インドの昔話


 むかしむかし、ある国に、とても貧しい石切り職人のおじいさんがいました。
 おじいさんは石を切ったり石を磨いたりと、毎日せっせと働きましたが、暮らしは少しも楽になりません。

 ある日の事、おじいさんがいつもの様に石を磨いていると、一匹のネズミが仕事場に入ってきました。
 そしてネズミがおじいさんの足元を駆け抜けた時、キラリと何かが光りました。
「おや? 何だろう?」
 見てみると、何とネズミがお金をくわえているではありませんか。
 おじいさんは驚いて、ネズミに声をかけました。
「お金などくわえて、どこへ行くのかね?」
 するとネズミはペコリと頭を下げると、お金を下に置いてていねいに頼みました。
「お腹が空いて、死にそうなのです。どうかこのお金で、食べ物を買って来て下さい」
「それはいいが、このお金はどこから持って来たんだい? まさか、人から盗んで来たのかい?」
「いいえ。西に行くと誰も住んでいない古いお屋敷があるのですが、そこの蔵でお金の詰まったかめを見つけたのです。
 これからは毎日、お金を一枚ずつ運んできますから、わたしには肉を一切れ下さい。
 残りはおじいさんの、好きな物を買って下さい」
「よし、わかった。わしも食べる物がなくて困っていたところだ。助かるよ」
 おじいさんはお金を受け取ると、さっそく買い物に出かけました。

 次の日からネズミは毎日、お金をくわえてやって来るようになりました。
 おじいさんはお金を受け取ると買い物に出かけて、ネズミと仲良く食べ物を分け合いました。
 ところがある日、大変な事がおこりました。
 ネズミがネコに、捕まってしまったのです。
「ネコさん、どうか、わたしを食べないで下さい」
「嫌だね。おれは腹ぺこなんだ」
「では、これから毎日、あなたに肉を差し上げますから、どうか命だけは助けて下さい」
「肉を毎日か。よし、いいだろう」
 ネズミは約束通り、おじいさんから肉を受け取るとネコに半分やりました。
 それから何日かして、ネズミはまた別のネコに捕まってしまいました。
 ネズミはそのネコとも、同じ約束をしてしまいました。
 これでネズミの食べる肉はなくなってしまい、ネズミはだんだんやせていきました。
 そしてとうとうネズミは骨と皮だけになってしまったので、おじいさんが心配して尋ねました。
「ネズミくん。毎日食べ物を分けているのに、どうしてそんなにやせたんだい? わけがあるなら、話してごらん」
 そこでネズミは、ネコに捕まって肉を分けてやっている事を話しました。
「そうか、そんなひどい事になっていたのか。・・・よし、わしに任せておきなさい」
 おじいさんはそう言うと、仕事場から透明な水晶で出来た石の箱を持ってきました。
「さあ、この箱に入りなさい。そしてネコがやって来たら、ネコに嫌な事を言ってうんと怒らせてやりなさい。いいね」
「はい、おじいさんの言う通りにします」
 ネズミが水晶の箱に入って待っていると、やがてネコたちがやって来ました。
「おい、早く肉を寄こせ」
「そうだ、何をぐずぐずしている」
 ネコたちはネズミにそう言いましたが、ネズミはネコにアカンベーをして言いました。
「嫌だね。誰が肉をやるものか。お腹が空いているのなら、ミミズでも食べるがいいさ」
「何だと!」
「生意気なネズミめ! こらしめてやる!」
 ネコたちは怒って、ネズミに飛びかかりました。
 そして鋭い牙をむき出しにすると、ネズミに噛みついたのです。
 しかしネズミは固い水晶の箱の中にいるので、何をされても平気です。
 そのうちに水晶の箱に噛みついたネコのキバが、ポキリと折れてしまいました。
「なんだ?!」
 びっくりしたネコは、今度は鋭い爪を出してネズミに襲いかかりましたが、これも水晶の箱にはじかれて、ネコの爪もポキリと折れてしまいました。
「わあ、大切な牙と爪が!」
 武器を二つとも失ったネコたちは泣きながら逃げて行き、二度とネズミの前には現れませんでした。

 こうしてネコを退治したネズミは、それからもおじいさんと仲良く幸せに暮らしたということです。

おしまい

Posted on 2014/07/19 Sat. 08:05 [edit]

category: 世界昔話

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19

青ひげ 

青ひげ
ペローの童話


 むかしむかし、大きなお屋敷に、一人のお金持ちが住んでいました。
 このお金持ちはお屋敷の倉にたくさんの宝石を持ち、色々なところに別荘も持っています。
 でも青いひげがモジャモジャと生えた、とても怖い顔をしているので、人々からは『青ひげ』と呼ばれて嫌われていました。
 そして青ひげには、きみょうなうわさがありました。
 それは今までに六人も奥さんをもらったのに、みんなどこかへいなくなってしまうというのです。

 ある日の事、青ひげは近くに住む美しい娘を、7人目のお嫁さんにしたいと思いました。
 そこで娘とそのお母さんや兄弟たち、それに友だちもよんで、おいしいごちそうをしてもてなしました。
 みんなは青ひげの別荘に泊まり、何日も何日も楽しく過ごしました。
 その間、青ひげは一生懸命にニコニコと、やさしい顔をしていました。
 しばらくすると娘は、青ひげのお嫁さんになってもいいと言いました。
 青ひげは大喜びで、すぐに結婚式(けっこんしき)をあげたのです。

 結婚式から数日後、青ひげは奥さんに言いました。
「明日から大切な用があって、わたしは旅に出かけることになった。だから、あなたに屋敷のカギをあずけていこう」
 そう言って、カギのたくさんついているたばを取り出しました。
「これは、家具の入っている倉のカギ。
 これは、金や銀の食器の棚のカギ。
 これは、宝石箱のカギ。
 これは、有名な画家の絵が入っているカギ。
 わたしの留守の間、たいくつだったら屋敷にいくら友だちをよんでもかまわないし、どの部屋に入ってもかまわないよ。
 ただし・・・」
 青ひげは急に怖い目をして、奥さんをジロリと見ました。
「この小さなカギだけは、使わないように」
「はい。でもこれは、いったいどこのカギなのですか?」
「これは、廊下の突き当たりの小さな部屋のカギだ。いいな、。その部屋には絶対に入ってはいけないよ」
「わかりました」
 こうして青ひげは、次の朝に出かけていきました。

 はじめのうちは、奥さんは友だちをよんで楽しく過ごしていましたが、そのうちにたいくつになってきました。
 するとあのいけないと言われた部屋に入りたくて、たまらなくなりました。
「だめ、約束だから、いけないわ。
 ・・・いけないかしら。
 ・・・少しだけなら、大丈夫かも。
 ・・・大丈夫よね。
 ・・・大丈夫よ」
 奥さんは小さなカギで、小さな部屋のドアを開けてしまいました。
「あっ!」
 中を見た奥さんは、ドアのところに立ったままガタガタとふるえだしました。
 部屋のかべにはたくさんの女の人の死体がぶらさがり、床には血がベッタリとこびりついていたのです。
 それはみんな、青ひげの前の奥さんたちでした。
「ただいま」
 そこへ、青ひげが帰ってきたのです。
 おくさんはビックリして、カギを床に落としてしまいました。
 おくさんはあわててカギをひろうと、ドアにカギをかけて青ひげのいる玄関に行きました。
「お、お、お帰りなさい」
 奥さんを見た青ひげは、ニッコリ笑いました。
「やあ、すっかり、遅くなってしまったね。ごめんよ。・・・おや、どうしたんだい? そんなにふるえて」
「い、いえ、べ、べつに」
 ガタガタとふるえる奥さんを見た青ひげは、急に怖い顔になって言いました。
「渡していたカギを、出してもらおう」
「はっ、はい」
 奥さんがふるえる手で差し出したカギを見た青ひげは、キッ! と、奥さんをにらみつけました。
 カギには、あの部屋で落とした時についた血がついていたのです。
「・・・いけないといったのに、やっぱり見たんだな」
「お許しください、お許しください」
 奥さんは青ひげの前にひざまずいて、泣いてあやまりました。
 でも青ひげは、許してくれません。
「お前こそはと、信じていたのに。・・・お前も、悪い女だ。・・・殺してやる!」
「お許しください、お許しください」
「・・・では、お祈りの時間だけ待ってやろう」
「ああ、神さま・・・」
 奥さんは必死で、神さまにお祈りします。
 青ひげは刀を抜くと、お祈りをしている奥さんの首を切ろうとしました。
 ちょうどその時、玄関のドアが開いて二人の男の人が入ってきました。
 運がよいことに、奥さんの二人のお兄さんたちが妹をたずねてきたのです。
 二人は妹が首を切られそうなのを知って、すぐに青ひげに飛びかかりました。
 そして何とか、青ひげをやっつけました。

 その後、死んだ青ひげにはしんせきがいなかったので、お屋敷や別荘、お金や宝石は全部奥さんの物となりました。
  奥さんはそれから、幸せに暮らしたということです。

おしまい

Posted on 2014/07/15 Tue. 09:29 [edit]

category: 世界昔話

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15

四色のさかな 

四色のさかな
アラビアンナイト


 むかしむかし、一人のおじいさんが、海へさかなを取りに行きました。
 でもその日は、何度海へアミを投げても、ちっともさかなが取れません。
 けれど最後にやっと、重いものがアミにかかりました。
「よしよし、きっと大きなさかなが入ったに違いない」
 おじいさんが大喜びで引きあげてみると、なんとそれは銅のつぼでした。
「やれやれ、ただのつぼか。がっかりだな。・・・でも、中に何が入っているのだろう?」
 おじいさんは、つぼのふたを開けてみました。
 するとつぼからモクモクと、たくさんの煙が立ちのぼりました。
 煙は空いっぱいに広がって、それから人の形になり、おじいさんのそばに立ちました。
 現れたのは、ツボの魔神です。
「ありがとう、おじいさん。わしは千年もの間、このつぼに入っていて、ずいぶんつらい思いをしてきた。いまやっと自由になれて、こんなうれしい事はない。お礼に、いい物をあげましょう」
 魔神はそう言うと、おじいさんを湖につれて行きました。
「ここに、アミを投げてください。きっと、あなたの幸せにするでしょう」
 おじいさんがその湖にアミを投げると、赤、白、青、黄と、四つの色のきれいなさかなが取れました。
「見たこともない、珍しいさかなだ!」
 おじいさんが四色のさかなを王さまにさしあげると、王さまはお返しにたくさんお金をくれました。

 さてその四色のさかな、いくら気をつけて焼いても、すぐにまっ黒になってしまってしまい、どうしても食べられませんでした。
「不思議なさかなだ。わしはきっと、このさかなの秘密をといてやるぞ」
 王さまはおじいさんに案内させて、さかなの取れた湖へ行きました。
 すると湖の向こうに、まっ黒なあやしいご殿がありました。
 王さまが城へ入って行くと、そこには立派な服を着た若者がベッドに腰かけていました。
「ごめんください。おじゃましてもいいですか?」
 王さまが声をかけると、若者はおじぎをして言いました。
「はい、もちろん。ただ、立ってごあいさつしたいのですが、わたしには出来ません。そのわけを、ごらんください」
 若者が長い服のすそをめくると、なんと若者の腰から下が石になっているのでした。
「実はわたしはこの国の王でしたが、悪い魔女のために体の半分を石に変えられてしまったのです。
 この国を自分の思うままにするため、魔女は山にも町にも魔法をかけました。
 町の人たちは四色のさかなにかえられて、湖に住むようになりました。
 今も魔女はこのご殿の奥に住んでいて、毎日、わたしをぶちに来て苦しめているのです」
 この話を聞いた王さまは、どうしてもこの若者や四色のさかなにされている町の人たちを助けなければと思いました。
「よろしい。わたしがきっと、その悪い魔女を退治してあげましょう」
 王さまは勇ましく、ご殿の奥に入って行きました。
 そして魔女と戦って、ついに魔女をやっつけたのです。
 魔女がいなくなると若者の体は元通りになり、湖はにぎやかな町になりました。
 赤、白、青、黄のさかなたちも、人間に戻りました。
 王さまは助けた若者を、自分の王子にしました。
 そして、四色のさかなを取ってきたおじいさんに、
「お前のおかげで、大勢の人たちを助けることができた」
と、たくさんのごほうびをやったということです。

おしまい

Posted on 2014/07/12 Sat. 09:10 [edit]

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人魚のしかえし 

人魚のしかえし
デンマークの昔話


 むかしむかし、北の冷たい海に、一人の美しい人魚(にんぎょ)が住んでいました。
 この人魚は五頭のウシを飼っていて、とても大事にしています。

 ある日、人魚はウシを近くの島まで連れて行って、お腹がいっぱいになるまで草を食べさせてやりました。
 その様子を、この島に住むいじわるな人間たちが見ていました。
「おい、人魚だぞ」
「ああ、人魚のくせにウシなんか飼いやがって」
「どうだ、あのウシを取ってしまわないか?」
「いいな。しかしウシよりも、人魚が腰にまいている帯(おび)を手に入れないか? あの帯には、宝石がたくさんついているという話しだ」
 そこで人間たちはウシに近づくと、人魚からウシを取り上げてしまったのです。
「わたしのウシを、返してください!」
 ウシを取られた人魚は、泣いて人間たちに頼みました。
「返すもんか。・・・でも、お前が腰にまいている帯(おび)をくれたら、ウシを返してやってもいいぞ」
「帯を? だけどこの帯は、人魚だけしか使うことが出来ないんです。人間が持っていても、少しも役に立たない帯ですよ」
「うそをつくな! その帯には宝石がたくさんついているじゃないか。その宝石があったら、おれたちは大金持ちになれる。さあ、ウシを返してやるから帯をよこせ!」
 人魚はウシをとても可愛がっていたので、仕方なく帯を人間たちに渡してウシを返してもらいました。
 でも、なんだかくやしくてたまりません。
 そこで人魚は、ウシに言いました。
「さあ、砂をほって、いじわるな人間たちにしかえしをしてやりなさい」
 するとウシたちは、砂を角や足でほりはじめました。
 すると砂が風でまいあがり、いじわるな人間たちの住んでいる村へと飛んでいきました。
「さあ、もっと砂をほって、人間たちの家をうめてしまいなさい」
 人間たちの村に飛んでいった砂は、どんどんどんどん降りつもり、やがて人間たちの家をうめてしまいました。
 あわてて逃げ出した人間たちは、
「ふん! ちっぽけな家ぐらい、なくなったってかまうものか! こっちには宝石のいっぱいついた帯があるんだ。これがあれば、大きな城だってたてられるさ」
と、ニコニコ顔です。
 でも、人魚から取りあげた帯をよく見てみると、宝石など1つもついていません。
 いつの間にか帯はコンブに変わっていて、宝石は海で岩などについているフジツボに変わっていたのです。

おしまい

Posted on 2014/07/10 Thu. 09:42 [edit]

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