05 « 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.» 07

彦島のけしき

山口県下関市彦島から、風景・歴史・ものがたりなど…

ふるやのもり 

ふるやのもり
鳥取県の民話


 むかしむかし、雨の降る暗い晩の事、おじいさんが子どもたちに話を聞かせていました。
「じいさま、一番こわいもの、なんだ?」
「・・・そうだの、人間ならば、どろぼうが一番こわい」
 ちょうどその時、どろぼうがウマ小屋のウマを盗もうと屋根裏にひそんでいました。
 どろぼうは、これを聞いてニヤリ。
(ほほう。このおれさまが、一番こわいだと)
「じいさま、けもので一番こわいもの、なんだ?」
「けものならば、・・・オオカミだの」
「じゃあ、オオカミよりこわいもの、なんだ?」
「そりゃ、ふるやのもりだ」
 ウマを食べようとウマ小屋にひそんでいたオオカミは、それを聞いておどろきました。
 ふるやのもりとは、古い屋根からポツリポツリともる雨もりの事です。
 だけどオオカミは、そんな事とは知りません。
「おらよりこわいふるやのもりとは、いったいどんな化物だ?」
と、ガタガタふるえ出しました。
 屋根裏のどろぼうも話を聞いて、ヒザがガクガクふるえています。
「ふるやのもりというのは、どんな化物だ?」
と、ビクビクのところへ、ヒヤリとした雨もり(→ふるやのもり)が首にポタリと落ちました。
「ヒェーーッ! で、でたあー!」
 どろぼうは足をふみはずして、オオカミの上にドシン!
「ギャーーッ! ふ、ふるやのもりだっ!」
 オオカミはドシンドシンと、あちこちぶつかりながら、ウマ小屋から飛び出しました。
 振り落とされてはたいへんと、どろぼうは必死にオオカミにしがみつき、オオカミは振り落とそうとメチャクチャに走り続けます。
 夜明けごろ、うまいぐあいに突き出ている木の枝を見つけたどろぼうは、
「とりゃー!」
と、飛びついて、そのまま高い枝にかくれてしまいました。
「たっ、助かった」
 オオカミの方は背中にくっついていた物がとれて、ホッとひといき。
「だが、まだ安心はできん。ふるやのもりは、きっとどこかにかくれているはず。友だちの強いトラに退治(たいじ)してもらおう」
と、トラのところへ出かけました。

 話を聞いてトラも恐ろしくなりましたが、いつもいばっているオオカミの前でそんな事は言えません。
「ふるやのもりという化け物、必ずわしが退治してやる。安心せい」
 トラとオオカミは一緒に、ふるやのもりを探しに出かけました。
 すると高い木のてっペんに、なにやらしがみついています。
 オオカミはそれを見て、ガタガタとふるえ出しました。
「あ、あれだ。あ、あれが、ふるやのもりだ」
「なに、あれがそうか。なるほど、恐ろしい顔つきをしておるわい」
 トラは、こわいのをガマンして、
「ウォーッ! ウォーッ!」
と、ほえながら木をゆさぶりました。
 するとどろぼうが、二匹の上にドシン! と落ちてきました。
「キャーン!」
「ニャーン!」
 トラとオオカミはなさけない悲鳴をあげながら、逃げて行きました。
 どろぼうは地面に腰を打ちつけて大けがをし、オオカミは遠い山奥に逃げ、そしてトラは海を渡って遠い国まで逃げて行って二度と帰ってはきませんでした。

おしまい

Posted on 2014/11/10 Mon. 09:06 [edit]

category: 日本の民話

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10

手土産のウナギ 

手土産のウナギ
青森県の民話


 むかしむかし、ある百姓の若者が商人にあこがれて、自分も何か商売をやってみようと思いました。
 でも、商売をするには元手となる資金が必要です。
「困ったな、おれみたいな貧乏人には、誰も金を貸してくれないし」
 色々考えた若者は、村の長者に頼んでみようと思い、手土産に大きなウナギを桶に入れてかついで行きました。
 長者の家に着くと、若者は手土産のウナギを長者に差し出して、さっそく長者にお願いしました。
「わたしは青森の八戸に行って、馬を十二頭ほど買ってきたいのです。そのお金を貸していただけませんか。必ずお返ししますので」
 黙って話を聞いていた長者は、若者に言いました。
「話しはわかりましたが、あなたと直接話しをするのは、今日が初めてです。そんなあなたに、お金を貸す事は出来ません」
「・・・そうですか。では、失礼します」
 あきらめた若者は、土産に持ってきたウナギをかついで、長者の屋敷を出て行きました。
 すると、長者の家の下男が追いかけて来て、若者に言いました。
「旦那さまがお呼びでございます。もう一度、お戻り下さい」
 そして再び座敷に通されると、長者が言いました。
「わたしのところへお金を借りに来る人はずいぶんいますが、持ってきた土産を持ち帰ったのはお前が初めてだ」
「すみません。このウナギは、次に頼む人への土産にします」
「なるほど。物を無駄にせず、使える物は何度でも使う。どうやら、商売の基本は知っている様だな。・・・よし、お前に、お金を貸してやろう」
「本当ですか! ありがとうございます」
 こうしてお金を借りた若者は、大喜びで長者の家を飛び出すと、すぐに八戸へ行って馬を十二頭買いました。
 そしてその十二頭の馬を村人たちに売ると、もうかったお金でまた馬を買い、隣の村まで売り歩きました。
 これを繰り返して大金を手にした若者は、借りたお金を長者に返すと、残ったお金を元手に立派な商人になったそうです。

おしまい

Posted on 2014/10/17 Fri. 08:58 [edit]

category: 日本の民話

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17

ヒバリとお日さま 

ヒバリとお日さま


 むかしむかし、お金持ちのヒバリが、お金を貸す商売をしていました。

 ある春の日の事、お日さまがヒバリにお金を貸してくれと頼みました。
「ヒバリさん。すまないが、お金を十両ばかり貸してくれないか。夏には返すから」
「はい、いいですよ。その代わりに返すときは、十一両ですよ」
「わかった。助かるよ」
 お日さまはヒバリから十両を借りると、喜んで帰って行きました。

 やがて、夏になりました。
 夏はヒバリにお金を返す約束ですが、お日さまはカンカンと照っているだけで、お金を返しに来ません。
 そこでヒバリはお金を返してもらおうと、お日さまのところへ飛んで行きました。
「お日さま、もう夏ですよ。そろそろ、お金を返してくださいよ」
「・・・・・・・」
 お日さまは何も答えず、強い日差しをますます強くしました。
「わあ、まぶしい! それに暑い!」
 ヒバリは目がくらんで、それ以上は近づけませんでした。

 そのうちに、涼しい秋になりました。
 カンカンと照っていたお日さまの光も、だんだんに弱くなりました。
 それでヒバリは空高く飛んで行くと、お日さまに叫びました。
「お日さま! 約束の夏は、もう終わってしまいました。早く、お金を返してください!」
 すると、お日さまは、
「ああ、また今度来てくれないか。今は忙しいんだ」
と、言って、雲(くも)に隠れてしまったのです。

 そこでしばらくしてからヒバリがお日さまのところへ行くと、お日さまは雨雲に頼んで大雨を降らせました。
「わあ、すごい大雨だ!」
 かわいそうにヒバリは、ずぶ濡れで帰って行きました。

 そんな事をしているうちに、冬になりました。
 ヒバリは何度も何度もお日さまのところへ行きましたが、そのたびにお日さまは北風や雪雲に頼んで冷たい風や大雪を降らせたりするので、お日さまに会う事は出来ませんでした。

 やがて、お正月になりました。
 毎年ヒバリは、お正月にはたくさんのおもちを買うのですが、お日さまがお金を返してくれないので、今年はお正月のおもちを買う事が出来ません。
「ああ、おもちが食べたいな。
 こんなにさみしいお正月になったのは、全部お日さまのせいだ!」

 怒ったヒバリは春になると、お日さまに文句を言いました。
「お日さま! 今日こそは、お金を返してください! 本当に、返してください! 絶対に、返してください!」
「・・・・・・」
 お日さまは知らん顔で、雲に隠れてしまいます。
「返せ! 貸したお金を返せ! 返せったら、返せ!」

 お日さまは今でも、ヒバリにお金を返していません。
 だからヒバリは今でも春になると、高い空の上で一生懸命に叫ぶのです。
「お金を返せ!(♪ピーチュクリーチュル) お金を返せ!(♪ピーチュクリーチュル)」
と。

おしまい

Posted on 2014/10/14 Tue. 10:41 [edit]

category: 日本の民話

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14

腰折れスズメ 

腰折れスズメ


 むかしむかし、あるところに、心やさしいおばあさんと欲深いおばあさんがとなり合わせに住んでいました。

 ある朝、心やさしいおばあさんが、ほうきで庭をはいていますと、庭のすみの草むらでチイチイと悲しそうに鳴くスズメがいました。
「おおっ、可哀想に」
 心やさしいおばあさんがスズメを手のひらにそっとのせますと、なんとスズメの腰の骨が折れているではありませんか。
 おばあさんはそのスズメを家へ連れてかえり、一生懸命に看病しました。
 するとだんだん、スズメの傷は治っていきました。

 ある日の事、スズメが何か言いたそうにしています。
「どうしたんだい? ああ、元気になったので、お家に帰りたいんだね」
 おばあさんがスズメを庭先に出してやると、スズメは元気よく飛んでいってしまいました。
「よかったわ、あんなに元気になって。でも、あのスズメがいなくなると、なんだかさみしいね」

 それから何日かたったある朝、いつものようにおばあさんが庭をほうきではいていますと、なにやらなつかしい鳴き声が聞こえてきます。
「あれあれ、あんたはあの時のスズメかい? うれしいね、会いに来てくれたのかい」
 スズメはうれしそうに鳴くと、おばあさんの前に小さなタネを落として、そのまま飛んでいってしまいました。
 そのタネは、ひょうたんのタネです。
 おばあさんはスズメにもらったひょうたんのタネを、庭にまきました。

 やがて秋になり、スズメのくれたひょうたんは立派に成長して、たくさんのひょうたんが実りました。
 そしてすっかり大きくなったひょうたんを取ってみると、なんだかすごく重たいのです。
「おや? どうしてこんなに重たいのかね? 何かが入っているような」
 おばあさんがそのひょうたんを割ってみますと、不思議な事に中にはお米がたくさんつまっているのです。
「あれまあ、不思議な事もあるものだね」
 おばあさんは、そのお米でご飯をたいてみました。
 そのご飯の、おいしいこと。
 おばあさんはそのひょうたんのお米を近所の人にくばり、あまったお米を売ってお金持ちになりました。

 さあ、それをねたましく思ったのは、隣の欲深いおばあさんです。
 欲深いおばあさんは庭で遊んでいるスズメに石をぶつけてつかまえると、かわいそうにそのスズメの腰の骨をむりやり折ってしまいました。
 そしてその腰の折れたスズメをかごに入れると、そのスズメに毎日えさをやりました。
「さあ、はやく良くなって、わたしにひょうたんのタネを持ってくるんだよ」
 そして、一ヶ月ほどがたちました。
「もうそろそろ、いいだろう」
 欲深いおばあさんは、スズメを庭に連れ出すとこう言いました。
「今すぐ飛んでいって、米のなるひょうたんのタネを持ってくるんだよ。さもないと、お前をひねりつぶしてしまうからね」
 スズメのキズはまだ治っていませんが、こわくなったスズメは痛いのをガマンして、そのまま飛んでいきました。

 それから何日かたったある日の夕方、毎日庭先でスズメが帰ってくるのを待っている欲深いおばあさんの前に、あのスズメが現れました。
「やれやれ、やっときたね」
 欲深いおばあさんはスズメの落としていったひょうたんのタネを拾うと、それを庭にまきました。
 そのひょうたんのタネはどんどん大きくなって、秋には立派なひょうたんがたくさん実りました。
「よしよし、これでわたしも金持ちになれるよ」
 おばあさんが包丁を持ってきて、一番大きなひょうたんの実を割ってみました。
 すると中から出てきたのはお米ではなく、毒ヘビやムカデやハチだったのです。
「ひぇーーー!」
 他のひょうたんからも毒ヘビやムカデやハチなどがたくさん出てきて、欲深いおばあさんにおそいかかったという事です。

Posted on 2014/10/10 Fri. 08:47 [edit]

category: 日本の民話

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10

テングに気に入られた男 

テングに気に入られた男
静岡県の民話


 むかしむかし、静岡の大きな川の渡し場のそばに、一軒の小さな茶店がありました。
 その茶店に山伏姿(やまぶしすがた)の背の高い男がやってきて、注文したおそばをうまそうに食べると、茶店の主人の三五郎(さんごろう)に言いました。
「こんなにうまいそばを食べたのは、初めてだ」
「それは、ありがとうございます」
「・・・して、あんたはまだ一人者だね。なぜ、嫁さんをもらわんのじゃ? これからわしは江戸へ行くが、江戸に何人も良い娘を知っておる。帰りに良い娘を連れてきてやるから、夫婦になりなさい」
 山伏姿の男はそう言うと、渡し舟で川を渡っていきました。
「・・・嫁さんか」
 三五郎はなんとなく、うれしくなりました。

 それからしばらくたったある日、あの山伏姿の男が本当に、若い娘を連れてやってきたのです。
 娘は恥ずかしいのか下をむいたままで、まったく顔をあげません。
「主人よ、これはほんのみやげじゃ」
 男は風呂敷につつんだ重い物を三五郎の前に差し出すと、二人にむかって言いました。
「よいか。夫婦というものは、どんな時でも仲むつまじくなければならん。決して、けんかなんぞするなよ。それではわしは、ちょっとそこまで行ってくる」
 山伏姿の男は、そのまま茶店を出ていきました。
 娘と二人になった三五郎は、娘に熱いお茶を出しました。
「ああ、とにかく、お茶でもどうぞ。江戸からでは、大変じゃったろう。疲れておるなら、二階でひと休みするとよい」
 すると娘は、はじめて顔をあげました。
 まだ十七、八の、かわいい娘です。
 娘は熱いお茶を飲むと、
「ヒクッ!」
と、 大きなしゃっくりをして、急にそわそわしはじめました。
「あれ? ここは? ここは、どこですか? あなたは、どなたですか?」
「えっ?」
 三五郎はおどろきましたが、とにかく娘の気を落ちつかせると、これまでの事を話しました。
 すると娘は、
「あっ! きっと、あの南天(なんてん)の実のような赤い薬だわ」
と、こんな話をはじめたのです。
「実はわたし、江戸のある橋のたもとで急に気分が悪くなったのです。
 すると、山伏姿の背の高い男が現れて、
『これは、元気になる薬じゃ。すぐに飲みなさい』
と、言って、わたしに赤い薬を一粒くれました。
 それを飲むと、とても良い気分になって。
 それからは、何も覚えていません。
 たったいま熱いお茶を飲んだら、しゃっくりが出て正気にもどったのです」
 娘は三五郎に頭を下げると、すぐに江戸へもどっていきました。

 一人残された三五郎は、山伏姿の男がみやげだと置いていった風呂敷包みを開けてみました。
 すると中には小判で、六十両ものお金が入っていたのです。
 三五郎は気味が悪いので、すぐに役人に届け出ました。
 すると役人は、にっこりわらって言いました。
「ああ、またですか」
「また?」
「はい、お前さんで、何人目だろうか。
 このような事はもう何年も前から続いていて、山伏姿の男はテングだと言われています。
 テングは気に入った相手に、親切にするという話しです。
 嫁さんは手に入らずおしい事をしましたが、そのお金はお前さんの物です。
 ありがたく、もらっておきなさい」

 テングはそれっきり、三五郎の前には現れなかったそうです。

おしまい

Posted on 2014/10/08 Wed. 09:03 [edit]

category: 日本の民話

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08

祭りに参加したキツネ 

祭りに参加したキツネ


 むかしむかし、ある村に、人を化かしていたずらをするキツネがいました。
 村人たちの中には、ドロのだんごを食べさせられたという人や、お風呂だと言われてこやしのおけに入れられた人など、色々ないたずらをされる人がふえてきました。
 そこで、村人たちは、
「なんとかしてキツネをこらしめ、いたずらをやめさせなければいけない」
と、言い出しました。
 それには、おこんギツネというキツネの親分をつかまえなくてはいけないのですが、そのキツネはかしこくて、なかなか捕まりません。
 すると、ある若者が、
「今度の盆踊りで化け比べをすれば、化けるのが好きなおこんギツネは、きっと出てくるよ」
と、言いました。
 おこんギツネをおびき出すために、今年の盆踊りでは特別に工夫をこらして、いろいろな姿に化けて踊って一番うまく化けた者にはほうびをやろうというのでした。
「ほう、それはおもしろい」
と、みんなは賛成しました。
 そこで踊りに出る人たちは、こっそりいろんな用意をしました。

 そしていよいよ盆踊りの夜、村人たちは森のおみやの前の広場に集まりました。
 たいこがなりひびき、歌声が流れていきます。
♪よいやさ、よいやさ。
♪よいやさ、よいやさ。
 みんなは輪になって、グルグルと踊りまわっています。
 カゴを背負った、花売り娘。
 槍をかついだ、やっこさん。
 美しい、お姫さま。
 ひょっとこのお面の男。
 ひげを生やしたお侍。
 お坊さん、赤鬼、金太郎など。
 色々な姿に変装した、踊り手たちがいます。
 その向こうには、ごほうびにもらうお酒の樽や焼き鳥のごちそうなどが、たくさん並べてあります。
 踊りまわるうちに、お姫さまとひょっとこがぶつかったり、お侍が転んだひょうしに立派な口ひげを落としたりして、見物している人たちはドッと笑い転げています。
 するといつのまにか踊りの輪の中に、立派な若いお侍の姿をした踊り手がまじっていました。
「ほう、見事な若侍じゃな」
「うん、大した若侍じゃ」
と、みんながほめます。
 それに踊る手ぶりや体の動かし方が、なかなか見事です。
 やがて夜もふけたころ、たいこの音もやみ、踊り手たちの輪もとけて盆踊りが終わりました。
 みんなはまわりのむしろの上に座って、ホッと汗をふいています。
「さあ、だれが一番うまく化けて、うまく踊ったかな」
 見物していた人たちが、一番良いと思った人を決める事になりました。
 やっこさん、お姫さま、ひょっとこも、人気がありましたが、一番になったのはあの若侍の踊りでした。
「ほんとに、見事じゃったのう」
 ごほうびのお酒を入れた樽が、若侍の前に並べられました。
 もちろん、食べきれないほどのごちそうも出されました。
「そら、お祝いじゃ。飲め、飲め、いくらでも飲め」
 たくさんの酒をすすめられた若侍は、たちまち酔っぱらってしまいました。
 そして、ゴロンと横になりました。
 すると体の後ろの方から、長い尻尾がポックリと出てきました。
「ほれ、あれあれ、あの尻尾は、キツネだぞ」
「やっぱり、キツネのおこんじゃ」
 そこでみんなはしめたとばかりにキツネのおこんを捕まえて、なわでしばってしまいました。
「さあ、おこん。もう逃げられないぞ、覚悟しろ!」
「いたずら者の尻尾を、切ってやる!」
 おこんギツネは、すっかりキツネの姿に戻って、
「尻尾ばかりは、ごかんべんを。尻尾は、キツネの宝物です。どうか、許してください。コーン、コーン」
と、頭を下げました。
「では、もういたずらはしないか?」
「はいはい、もう二度といたしません。コーン、コーン」
 おこんギツネは、一生懸命にあやまりました。
 そこでみんなは尻尾を切るのをやめて、なわをといてやりました。
 喜んだおこんギツネは何度もお礼をいって、頭と尻尾をフリフリ、森の奥へ逃げていきました。
 コーン、コーン

おしまい

Posted on 2014/10/06 Mon. 09:08 [edit]

category: 日本の民話

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06

ムカデの医者むかえ 

ムカデの医者むかえ


 むかしむかし、虫たちが一軒の家で、仲良くいっしょにくらしていました。

 ある日の事、カブトムシが急に苦しみ出しました。
「うーん、いたい、いたいよう」
「カブトムシくん、どうしたんだ! どこがいたいんだい?!」
 虫たちは心配そうに、カブトムシの周りに集まりました。
「とにかく、はやく医者を呼んで来ないと」
「でも、だれが一番、足が速いんだろう」
 すると、年寄りのカナブンが言いました。
「そりゃあ、ムカデだろう。なにしろ足が、百本もあるんだから」
「よし分かった。ぼくにまかせろ!」
 ムカデはすぐに、げんかんに向かいました。

 それからしばらくしましたが、ムカデはなかなか帰ってきません。
「おそいなあ、どうしたんだろう」
「足が多いから、足がはやいはずなのに」
「だれか、ようすを見て来いよ」
 そこでバッタとカミキリムシが、ようすを見に行くことになりました。
 二匹がげんかんに行くと、ちょうどムカデがわらじをはいているところでした。
「ムカデくん、やっと帰ってきたんだね。それで、医者は?」
 するとムカデは、首を横に振りながら言いました。
「ちがうよ、ぼくの足は百本あるから、わらじをはくのに時間がかかるんだ。まだ半分しか、はいていないんだ」

おしまい

Posted on 2014/10/03 Fri. 08:58 [edit]

category: 日本の民話

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03

山の背比べ 

山の背比べ


 むかしむかし、ある山が自分の背の高さを自慢しました。
「やっぱりぼくの方が、お前よりも高いようだな」
「どうして?」
「どうしてって、ぼくはお前の頭の上のが、見えるんだもの」
「それなら、ぼくだって見えるさ。いいや、お前だけじゃなくて、みんなの頭の上が見えるよ。だから、もしかするとぼくは日本中で一番高い山かもしれないね」
「日本中で、一番だって?!」
 それを聞いて、他の山たちも集まってきました。
「お前のようなチビ山の、どこが一番なんだ?」
「そうさ、一番は、このおれさ」
「何だと、おれに決まっているだろう!」
「よーし、誰が一番高い山か、比べっこしよう」
 こうして山たちは背比ベをしようとしたのですが、そこで困った事に気がつきました。
 いったいどうやって、どちらが高いかを比べたらいいのでしょうか?
 みんな大きな山なので、近くに並べるわけにはいきません。
「どうしようか?」
 山たちが困っていると、人間たちが言いました。
「それなら長い長いといをつくって、それを背比ベする山と山のてっペんにのせるんですよ。そして雨が降るのを待つのです。水は低い方へ流れていきますから、といにたまった水が流れてきた方が低いの山です」
「なるほど、それはいい考えだ」
 そこで人間たちは、背比べをする山から山へ長いといをかけました。

 しばらくすると雨が降ってきて、といにたまった水が流れはじめました。
「やったー! ぼくのところへは流れてこないぞ! ぼくが一番高い山なんだ。・・・あれ?」
 そう言っているところへ、別のといから水が流れてきました。
「ははーん。一番高いのは、お前じゃあない。一番高いのは、このおれさ。なにしろおれのとこめには、水が流れて来ないからね」
「うーん、しかたがない。お前が日本で一番高い山だ」
 こうしてとうとう、日本一高い山が決まったと、みんなは思いました。
 すると、その時です。
 ズシーン!!
 ものすごい音とともに、大きな大きな山が飛んで歩いてきました。
「なっ、なんだ、あの大きな山は!」
 おどろく山たちに、その大きな山が言いました。
「やあ、ぼくは富士山さ。山の大きさ比べをしていると聞いて、ここまで飛んできたんだ。どうだい、ぼくより大きい山はいるかい?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
 背比べしていた山たちは、はずかしくて何も言えませんでした。

 こうして富士山が、日本一高い山となりました。
 ちなみに、ジャンプしてきた富士山が着地した場所は大きくへこんで、そこに水がたまって今の琵琶湖(びわこ)が出来たそうです。

おしまい

Posted on 2014/10/01 Wed. 08:57 [edit]

category: 日本の民話

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01

竹の子童子 

竹の子童子


 むかしむかし、三ちゃんという、おけ屋の小僧さんがいました。

 ある日の事、三ちゃんは竹やぶへ竹を切りに行きました。
「どの竹を切ろうかな?」
 三ちゃんがひとりごとを言うと、後ろの方から、
「・・・三ちゃん、・・・三ちゃん」
と、小さな声も聞こえました。
「おや、だれだろう?」
 三ちゃんは、グルリとあたりを見回しました。
 しかし、誰もいません。
 ただ竹が、ザワザワとゆれるばかりです。
「なんだ、誰もいないじゃないか」
 三ちゃんが歩き出すと、また、
「三ちゃあん、三ちゃあん」
と、さっきよりも大きな声が聞こえるのです。
「誰だい? さっきから呼んでるのは? どこにかくれているんだ?」
 三ちゃんが言うと、すぐそばの竹が答えました。
「ここだよ、ここだよ。この竹の中だよ」
「この竹の中?」
 三ちゃんは、竹に耳をつけてみました。
 すると竹の中から、はっきりと声が聞こえてきます。
「三ちゃん、お願いだよ。この竹を切っとくれ」
 そこで三ちゃんは、その竹を切り倒してみました。
 すると竹の中から、小さな小さな男の子が飛びだしてきたのです。
「わぁーい、助かった。ありがとう!」
 その男の子は、三ちゃんの小指ぐらいの大きさです。
「お前は、何者だ?!」
「ぼくは、天の子どもだよ」
 小さな男の子は、ピョンと三ちゃんの手のひらに飛び乗りました。
「ゆうべ、流れ星に乗って遊んでいたら、いじわるな竹がぼくを閉じこめてしまったんだ。でも三ちゃんのおかげで、助かったよ。これでやっと、天に帰れる」
「そうか、それはよかったね。でもどうして、ぼくの名まえを知ってるの?」
「天の子はね、世界中の事をみんな知っているんだよ」
「ふーん、すごいね。それで、きみの名前は?」
「ぼくの名前は、竹の子童子(たけのこどうじ)だよ」
「竹の子童子か。いくつ?」
「ぼくの年かい? まだ、たったの千二百三十四才だよ」
「うへぇ!」
 三ちゃんがビックリすると、竹の子童子はニコニコして言いました。
「助けてもらったお礼に、三ちゃんの願いをかなえてあげるよ」
「ほんとうかい?」
「ほんとうさ。天の子は、うそをつかないんだ。それで、何が願いだい?」
 三ちゃんは、しばらく考えてから答えました。
「ぼくを、お侍にしておくれ。強いお侍になって武者修行(むしゃしゅぎょう)にいきたい」
「よし、じゃ、目をつぶって」
 三ちゃんが目をつぶると、竹の子童子が大きな声で言いました。
「竹の子、竹の子、三ちゃんをお侍にしておくれ。・・・ほら三ちゃん、お侍になったよ」
 三ちゃんが目を開けると、そこはにぎやかな京の都で、三ちゃんはいつの間にか立派なお侍になっていました。
「わあ、ほんとうにお侍だ! 竹の子童子、ありがとう」
 三ちゃんが手のひらを見ると、竹の子童子はいなくなっていました。

おしまい

Posted on 2014/09/29 Mon. 09:12 [edit]

category: 日本の民話

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29

白ギツネの恩返し 

白ギツネの恩返し
石川県の民話


 むかしむかし、加賀の殿さまに可愛がられていた、弥三右衛門(やざえもん)という弓の名人がいました。

 ある日の事、弥三右衛門は殿さまと一緒に狩りに出かけました。
 その時、やぶの中から白いキツネが飛び出してきたのです。
 白いキツネはとても縁起の良いキツネなので、殿さまはすぐに欲しくなって、
「おおっ、白ギツネじゃ。弥三よ、あれを射よ」
と、命じました。
「はっ!」
 弥三右衛門は馬にまたがると、キツネを追いつめて矢をはなとうとしました。
 するとキツネはくるりとあおむけにひっくりかえって、お腹のあたりを前脚でさししめしたのです。
 見てみてるとキツネはメスギツネで、大きなお腹をしていました。
 キツネの目には、大粒のなみだがうかんでいます。
「そうか。お前は母親で、お腹には子がいるのか。・・・わかった、行くがよい」
 弥三右衛門は白ギツネを、そのまま逃がしてやりました。
 するとこれを見た殿さまがかんかんに怒って、その場で弥三右衛門を首にしたのです。

 城を追い出された弥三右衛門は、ほかの地でくらそうと旅立ちました。
 そして旅の途中の峠の宿で寝ていると、あの白ギツネが女の人の姿になって夢に現れたのです。
「わたしのために、まことに申しわけありません。その代わりといってはなんですが、これから江戸へお行きなさい。必ず、恩返しをしますので」
 白ギツネはそう言うと、夢の中から消えていきました。
「・・・夢か。まあよい、どうせ行く当てもないのだから、江戸に行ってみるか」
 次の朝、弥三右衛門は夢で言われた通り江戸にむかい、浅草に住む事にしました。

 弥三右衛門が浅草に来てからしばらくたった年の暮れ、また白ギツネが夢に現れました。
「あなたさまに命を助けられた子どもたちは、みな元気に育っております。本当にありがとうございました。では約束の恩返しに、病を治すお札を差し上げましょう。これからはこのお札で、病気の人たちを治してあげてください」
 白ギツネはそう言うと枕元にお札を一枚置いて、病気の治し方を教えてくれたのです。
 そのお札は不思議な力を持っていて、弥三右衛門が教えられた通りにお札を使って治療をはじめると、どんな病気もすぐに治ったのです。
 お札の治療はたちまち評判となって、弥三右衛門は大金持ちになりました。
 弥三右衛門はそのお金で、白ギツネのために立派な神社をたてたという事です。

おしまい

Posted on 2014/09/28 Sun. 09:07 [edit]

category: 日本の民話

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28

たのきゅう 

たのきゅう


 むかしむかし、あるところに、たのきゅうという旅の役者がいました。
 お母さんが病気だという手紙がきたので、大急ぎで戻る途中です。
 ところが、ある山のふもとまで来ると、日が暮れてしまいました。
 すると茶店のおばあさんが、たのきゅうに言いました。
「およしなさい。この山には大きなヘビがいるから、夜は危ないよ」
 でもたのきゅうは病気のお母さんが心配なので、山へ登っていきました。
 そして峠(とうげ)でひと休みしていると、白髪のおじいさんが出てきて言いました。
「お前さんは、だれだ?」
「わしは、たのきゅうという者じゃ」
 だけどおじいさんは、『たのきゅう』を『たぬき』と聞き間違えました。
「たぬきか。たぬきなら、化けるのがうまいだろ。さあ、化けてみろ。わしは大ヘビだ。わしも化けているんだ」
 大ヘビと聞いて、たのきゅうはびっくり。
「さあ、はやく化けてみろ。それとも、化けるのが下手なのか?」
 怖さのあまりブルブルとふるえていたたのきゅうですが、大ヘビに下手と言われて役者魂に火がつきました。
「下手? このわしが下手だと? よし、待っていろ。いま、人間の女に化けてやる」
 たのきゅうは荷物の中から取り出した女のかつらと着物を着て、色っぽく踊って見せました。
「ほほう、思ったより上手じゃ」
と、おじいさんは、感心しました。
 そして、
「ときに、お前のきらいな物は、なんじゃ?」
と、聞きました。
「わしのきらいなのは、お金だ。あんたのきらいな物は、何だね?」
「わしか? わしのきらいな物は、タバコのヤニとカキのシブだ。これを体につけられたら、しびれてしまうからな。さて、お前はたぬきだから助けてやるが、この事は決して人間に言ってはならんぞ。じゃ、今夜はこれで別れよう」
 そう言ったかと思うと、おじいさんの姿は見えなくなってしまいました。
「やれやれ、助かった」
 たのきゅうはホッとして山を下り、ふもとに着いたのはちょうど夜明けでした。

 たのきゅうは村人たちに、大ヘビから聞いた話をしました。
「と、言うわけだから、タバコのヤニとカキのシブを集めて、大ヘビのほら穴に投げ込むといい。そうすれば大ヘビを退治出来て、安心して暮らせるというもんじゃ」
 それを聞いて、村人たちは大喜びです。
 さっそくタバコのヤニとカキのシブを出来るだけたくさん集めて、大ヘビのほら穴に投げ込みました。
「うひゃーあ、こりゃあ、たまらねえ!」
 大ヘビは死にものぐるいで隣の山に逃げ出して、なんとか命だけは助かりました。
「きっと、あのたぬきのやつが、わしのきらいな物を人間どもにしゃベったにちがいない。おのれ、たぬきめ! どうするか覚えてろ!」
 大ヘビは、カンカンになって怒りました。
 そしてたのきゅうが一番きらい物は、お金だという事を思い出しました。
 そこで大ヘビはたくさんのお金を用意すると、たのきゅうの家を探して歩きました。
 そしてやっとたのきゅうの家を探し当てたのですが、家の戸がぴったりと閉まっていて中には入れません。
「さて、どうやって入ろうか? ・・・うん?」
 そのとき大ヘビは、屋根にあるけむり出し口を見つけました。
「それっ、たぬきめ、思い知れっ!」
 大ヘビは、けむり出し口からお金を投げ込んでいきました。

 おかげでたのきゅうは大金を手に入れて、そのお金で良い薬を買うことが出来たので、お母さんの病気はすっかり治ったと言うことです。

おしまい

Posted on 2014/09/25 Thu. 09:16 [edit]

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25

正体のばれたキツネ 

正体のばれたキツネ


 むかしむかし、ある小さな山の茶店に、一人のさむらいが入ってきました。
「ごめん」
「はい、いらっしゃいませ」
「じいさん、ここのダンゴは、うまいと評判だ。わしにも一皿、もってまいれ」
「はいはい。どうぞ、めしあがってくださいませ」
 茶店のおじいさんは、お茶とダンゴをはこんできました。
 その時、おじいさんはさむらいの顔を見てびっくりしました。
「あれ、まあ!」
 何と、おさむらいの耳はピーンと三角にとがっていて、顔のあちこちに茶色の毛が生えています。
(ははーん、このおさむらいはキツネだな)
 おじいさんは正体を見抜きましたが、キツネはうまく化けたつもりで、むねをはっていばったかっこうをしています。
 おかしくなったおじいさんは小さなおけに水を入れて、さむらいの前へ持って行きました。
「おさむらいさま、お顔と耳が少し汚れておいでのようです。どうぞ、この水をお使いください」
「ふむ、これはどうも」
 うなずいたさむらいは、おけの中をのぞいてびっくり。
(コンコン、これは化けそこなった!)
 キツネは、大あわてです。
「さあ、おさむらいさま。ごゆっくり、召し上がってくださいませ」
 おじいさんがそう言っても、キツネには聞こえません。
 キツネはダンゴも食べずに、そのまま山の方へ逃げていってしまいました。

 次の日、おじいさんはたきぎをひろいに、山の中へ入っていきました。
 すると、どこからか、
「おじいさん、おじいさん」
と、よぶ声がします。
 おじいさんは見回しましたが、誰もいません。
「はて? 何のご用ですか?」
 おじいさんが言うと、
「おじいさん、昨日はおかしかっただろう。大失敗だったよ。ウフフフ、アハハハ」
と、笑い声が聞こえてきました。
「ああ、昨日のキツネさんか。そう言えば、あの時はおかしかったな。アハハハ」
 おじいさんも、大笑いしました。

おしまい

Posted on 2014/09/23 Tue. 09:02 [edit]

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23

オニギリ地蔵 

オニギリ地蔵
富山県の民話


 むかしむかし、立山(たてやま→富山県の南東部)のふもとに、貧しいけれど仲の良い木こりの一家がありました。
 ある時、可哀想な事に母親が三つになる男の子を残して、死んでしまったのです。
 お葬式(おそうしき)の帰り道、男の子は村はずれに立っているお地蔵さんを見て言いました。
「あっ、お母ちゃんだ!」
 男の子はお地蔵さんに抱きついて、離れようとはしません。
 やがて父親は新しい母親をむかえましたが、男の子は新しい母親にはなつかず、いつもお地蔵さんのそばにいました。
 新しい母親はそんな男の子がきらいで、男の子につらく当たるようになりました。

 ある日の事、男の子がおねしょをすると、母親は怒って何も食べさせてくれませんでした。
 ひもじくなった男の子が泣き出すと、
「地蔵さまがおにぎりを食べられたら、お前にも食べさせてやる」
と、男の子にオニギリを持たせました。
 男の子はさっそく、お地蔵さんに頼みました。
「どうか、このオニギリを食べてください」
 すると不思議な事に、石のお地蔵さんがオニギリをパクリと食べたではありませんか。
 喜んだ男の子は新しい母親にこの事を話しましたが、母親は信じてくれません。
 それどころか、
「お前が、食べたんだ!」
と、耳を強く引っ張ったため、男の子の耳は聞こえなくなってしまったのです。
 それでも男の子は、お地蔵さんがおにぎりを食べたと言います。
 そこで母親はまた男の子にオニギリを持たせると、そっと後をつけました。
 そうとは知らない男の子は、お地蔵さんの口にオニギリを当て、
「もう一度、オニギリを食べてください」
と、お願いすると、お地蔵さんは涙をハラハラ流しながら、オニギリを食べ始めました。
 母親は、これを見てビックリです。
 母親はすぐに手を合わせて、お地蔵さんと男の子にあやまりました。
 その後、聞こえなくなった男の子の耳は、母親が一生懸命にお地蔵さんにお願いしたので、やがて元通り聞こえるようになったという事です。

おしまい

Posted on 2014/08/25 Mon. 10:09 [edit]

category: 日本の民話

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25

お化け地蔵(じぞう) 

お化け地蔵(じぞう)
愛媛県の民話


 むかしむかし、こんぴら橋という橋があって、そのたもとにお地蔵(じぞう)さんがたっていました。
 このお地蔵さんは、昼間は普通のお地蔵さんですが、夜になると『のびあがり』という化け物になって、ムクムクと背が伸びて、ヒョロヒョロと首が伸びて、ビロローンと長い舌を出すのです。
 ですから村人たちは怖がって、誰もこの橋を通ろうとしませんでした。

 ある人がこの話を聞いて、友だちの又平(またべえ)に言いました。
「のびあがりのお地蔵さんの前に赤いくいを打ち込んできたら、金をやるぞ」
「本当か? よしよし、そのくらいわけもない」
 又平はさっそく赤いくいとつち(→物をうつ道具)を持って出かけましたが、近づくにつれてだんだん怖くなってしまい、全身がガタガタと震えています。
 それでもなんとかお地蔵さんの前まで行くと、又平はお地蔵さんを見ないように目をつぶってくいを打ち込みました。
「さあ、終わったぞ。はやく帰るとしよう。ぐずぐずしていると、お地蔵さんが『のびあがり』に化けてしまうからな」
 又平はクルリと向きを変えると、あわてて逃げようとしました。
 ところがお地蔵さんが又平の着物を引っぱって、放してくれないのです。
「うひゃー、助けてくれー!」
 又平は、ありったけの声でさけびました。
 それを聞きつけ人々が、ちょうちんを手にかけつけました。
「どうした? 何があったんじゃ?」
「こ、このお地蔵さんが、この『のびあがり』が、わしの着物をつかんで放してくれんのじゃ!」
「なんだって!」
 かけつけた人々はビックリしましたが、又平の着物を引っぱっているものを見て大笑いです。
 なんと又平は、自分の着物のすそに赤いくいを打ち込んで、もがいていたのでした。

おしまい

Posted on 2014/08/17 Sun. 08:11 [edit]

category: 日本の民話

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かぶと島 

かぶと島
長崎県の民話


 今から四百年ほど前、長崎の町に、お小夜(さよ)という美しい娘がいました。
 お小夜はキリスト教を信仰するキリシタンで、その美しい姿は絵に描かれたマリアさまにそっくりなので、人々はお小夜の事を『マリアのお小夜』と呼んでいました。
 その頃、与次郎(よじろう)という若者が、南蛮寺(なんばんでら→キリスト教会)の門の前で花売りをしていました。
 お小夜は毎日、与次郎の花を買っては南蛮寺にお供えしていたのですが、いつしか二人は恋仲になっていたのです。
 やがて二人の事が、町のあちこちでうわさされるようになりました。
 お似合いの二人でしたが、まわりは二人を祝福してくれません。 
 なぜなら当時のキリシタンには、他の宗派の男女と付き合ってはならないという厳しい掟(おきて)があったからです。

 ある晩、二人は人目をさけて浜辺で出会っていました。
 ところがこれを、神父に見られてしまったのです。
 捕まった二人は、神父たちにとても厳しいおしおきを受けました。
 特に与次郎の方はキリシタンをたぶらかした極悪人として、長崎港の沖に浮かぶ『かぶと島』へ島流しにされたのです。
「お小夜、夜になったらかぶと島をながめてくれ。わたしは毎晩赤い灯をともすから。赤い灯が見えるかぎり、私は生きているから」
 与次郎はお小夜にそれだけを言い残すと、かぶと島へ送られました。

 それからというもの、お小夜は夜ごと浜辺に出てはかぶと島を眺めました。
 日も暮れる頃になると、島にボーッと赤い灯がともります。
 その灯をながめては与次郎を思い、お小夜は涙を流すのでした。
 でもこれを、神父たちはこころよく思いません。
「与次郎は、信者を惑わす悪魔じゃ。悪魔には、神罰が下さるべきだ」

 次の日の夜、お小夜がいくら待っても、かぶと島に赤い灯はともりませんでした。
 その日の夜明け、お小夜は何かにつかれたかのようにふらふらと歩き出して、一歩一歩、海の中に足をふみ入れたのでした。
「与次郎さま。来世では、必ず結ばれましょう」

 翌朝、かぶと島の波打ち際に、並んで倒れている男女の死体があがったそうです。

おしまい

Posted on 2014/08/11 Mon. 09:51 [edit]

category: 日本の民話

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