彦島のけしき
山口県下関市彦島から、風景・歴史・ものがたりなど…
奈良の名物、町の早起き
奈良の名物、町の早起き
奈良の名物をならべた言葉に、「だいぶつに、しかのまき筆、あられ酒、春日とうろう、町の早起き」という言葉があります。しかや春日大社(かすがたいしゃ)のとうろうは分かりますが、「町の早起き」が名物になるのは不思議だと思いませんか?そうなった理由として、こんな話が伝わっています。
奈良の春日大社・興福寺(こうふくじ)にいるしかは、神の使いと言われ、神ろくとよばれていました。江戸(えど)時代まで、神ろく殺しは重いつみで、はん人は死けいになったそうです。
だから、むかしは朝起きたとき、家の前にしかが死んでいたりしたら、大変なことでした。見つけた人はぎょう天して、まだねているとなりの家の前にしかの死体を持っていきました。
となりの人もぎょう天し、まだしまっているとなりの家の前に死体を持っていきました。
こんなふうに朝ねぼうしたらどんな目に合うかわからないから、「町の早起き」が奈良名物になったそうです。
「大阪(おおさか)の食いだおれ」や「京の着だおれ」とならんで、「奈良のねだおれ」と言われますが、それもこのような話に由来するようです。
上方落語「鹿政談」などを参考にしました
奈良の名物をならべた言葉に、「だいぶつに、しかのまき筆、あられ酒、春日とうろう、町の早起き」という言葉があります。しかや春日大社(かすがたいしゃ)のとうろうは分かりますが、「町の早起き」が名物になるのは不思議だと思いませんか?そうなった理由として、こんな話が伝わっています。
奈良の春日大社・興福寺(こうふくじ)にいるしかは、神の使いと言われ、神ろくとよばれていました。江戸(えど)時代まで、神ろく殺しは重いつみで、はん人は死けいになったそうです。
だから、むかしは朝起きたとき、家の前にしかが死んでいたりしたら、大変なことでした。見つけた人はぎょう天して、まだねているとなりの家の前にしかの死体を持っていきました。
となりの人もぎょう天し、まだしまっているとなりの家の前に死体を持っていきました。
こんなふうに朝ねぼうしたらどんな目に合うかわからないから、「町の早起き」が奈良名物になったそうです。
「大阪(おおさか)の食いだおれ」や「京の着だおれ」とならんで、「奈良のねだおれ」と言われますが、それもこのような話に由来するようです。
上方落語「鹿政談」などを参考にしました
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04
旅のどろぼう
旅のどろぼう
むかしは、お金を持っている旅人につきまとって、すきを見てお金を盗む泥棒を『ゴマのハエ』と呼んでいました。
ある日の事、ある侍(さむらい)が大切なお金を隠し持って、江戸から旅に出ました。
すると見知らぬ男がやってきて、気やすく話しかけてきました。
「やあ、今日はよい天気ですな。一人旅ですか? どこまで行くのです?」
人のよさそうな男で、とても悪人には見えません。
「せっしゃは、下関(しものせき)までじゃ」
「おお、そいつはよかった。実は私も下関までまいりますゆえ、どうかお供させてくだされ」
そこで二人は同じ宿に泊まって、一緒に風呂へ入ったり、一緒に食事をとったりしました。
最初は何ともなかったのですが、大阪をすぎ、姫路をすぎ、岡山をすぎた頃、男の様子(ようす)が少しずつ変わってきたので、侍は思い切って男に泥棒ではないのかとたずねました。
すると男は地面に頭をこすりつけて、侍に言いました。
「ははーっ、言い訳はいたしません。
実はわたしは、ゴマのハエなのでございます。
お侍さまが大金を持っていなさるとにらんで、ついてまいりました。
しかしどうやっても、どこに隠しておいでかわかりませぬ。
わたしの、負けでございます。
もしお見逃しいただけるのでしたら、このまま退散(たいさん)いたします」
そう言って頭を下げる男に、侍は言いました。
「やはり、そうであったか。
本来なら役人(やくにん)に引き渡すところだが、何も盗(ぬす)んではおらぬことだし、正直に白状(はくじょう)したので見逃してやろう」
「ありがとうございます。では、これにて」
と、立ち去る男を、侍は引き止めました。
「まあ、待て。
あと一晩泊まれば、次の日には下関に着く。
これも何かのえん。
宿代はせっしゃが出すゆえ、もう一晩ともに過ごそうではないか」
「これは重ね重ね、ありがとうございます」
その晩、侍は宿につくと、今までずっと宿の人にあずけていた雨がさを、部屋の床の間へ置いて寝ました。
あくる朝、侍が起きてみるとゴマのハエの男がいなくなっていました。
「さすがに、気まずくなって逃げ出したか。まあよい、お主との旅は楽しかったぞ」
そして旅支度(たびじたく)を終えた侍が、ふと雨がさに手をやると、雨がさが軽くなっていたのです。
「しまった。やられた」
侍は雨がさのえに隠していた大金を、まんまと抜き取られてしまったのでした。
山口県の民話 福娘童話集より
http://hukumusume.com/douwa/index.html
むかしは、お金を持っている旅人につきまとって、すきを見てお金を盗む泥棒を『ゴマのハエ』と呼んでいました。
ある日の事、ある侍(さむらい)が大切なお金を隠し持って、江戸から旅に出ました。
すると見知らぬ男がやってきて、気やすく話しかけてきました。
「やあ、今日はよい天気ですな。一人旅ですか? どこまで行くのです?」
人のよさそうな男で、とても悪人には見えません。
「せっしゃは、下関(しものせき)までじゃ」
「おお、そいつはよかった。実は私も下関までまいりますゆえ、どうかお供させてくだされ」
そこで二人は同じ宿に泊まって、一緒に風呂へ入ったり、一緒に食事をとったりしました。
最初は何ともなかったのですが、大阪をすぎ、姫路をすぎ、岡山をすぎた頃、男の様子(ようす)が少しずつ変わってきたので、侍は思い切って男に泥棒ではないのかとたずねました。
すると男は地面に頭をこすりつけて、侍に言いました。
「ははーっ、言い訳はいたしません。
実はわたしは、ゴマのハエなのでございます。
お侍さまが大金を持っていなさるとにらんで、ついてまいりました。
しかしどうやっても、どこに隠しておいでかわかりませぬ。
わたしの、負けでございます。
もしお見逃しいただけるのでしたら、このまま退散(たいさん)いたします」
そう言って頭を下げる男に、侍は言いました。
「やはり、そうであったか。
本来なら役人(やくにん)に引き渡すところだが、何も盗(ぬす)んではおらぬことだし、正直に白状(はくじょう)したので見逃してやろう」
「ありがとうございます。では、これにて」
と、立ち去る男を、侍は引き止めました。
「まあ、待て。
あと一晩泊まれば、次の日には下関に着く。
これも何かのえん。
宿代はせっしゃが出すゆえ、もう一晩ともに過ごそうではないか」
「これは重ね重ね、ありがとうございます」
その晩、侍は宿につくと、今までずっと宿の人にあずけていた雨がさを、部屋の床の間へ置いて寝ました。
あくる朝、侍が起きてみるとゴマのハエの男がいなくなっていました。
「さすがに、気まずくなって逃げ出したか。まあよい、お主との旅は楽しかったぞ」
そして旅支度(たびじたく)を終えた侍が、ふと雨がさに手をやると、雨がさが軽くなっていたのです。
「しまった。やられた」
侍は雨がさのえに隠していた大金を、まんまと抜き取られてしまったのでした。
山口県の民話 福娘童話集より
http://hukumusume.com/douwa/index.html
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13
ふるやのもり
ふるやのもり
鳥取県の民話
むかしむかし、雨の降る暗い晩の事、おじいさんが子どもたちに話を聞かせていました。
「じいさま、一番こわいもの、なんだ?」
「・・・そうだの、人間ならば、どろぼうが一番こわい」
ちょうどその時、どろぼうがウマ小屋のウマを盗もうと屋根裏にひそんでいました。
どろぼうは、これを聞いてニヤリ。
(ほほう。このおれさまが、一番こわいだと)
「じいさま、けもので一番こわいもの、なんだ?」
「けものならば、・・・オオカミだの」
「じゃあ、オオカミよりこわいもの、なんだ?」
「そりゃ、ふるやのもりだ」
ウマを食べようとウマ小屋にひそんでいたオオカミは、それを聞いておどろきました。
ふるやのもりとは、古い屋根からポツリポツリともる雨もりの事です。
だけどオオカミは、そんな事とは知りません。
「おらよりこわいふるやのもりとは、いったいどんな化物だ?」
と、ガタガタふるえ出しました。
屋根裏のどろぼうも話を聞いて、ヒザがガクガクふるえています。
「ふるやのもりというのは、どんな化物だ?」
と、ビクビクのところへ、ヒヤリとした雨もり(→ふるやのもり)が首にポタリと落ちました。
「ヒェーーッ! で、でたあー!」
どろぼうは足をふみはずして、オオカミの上にドシン!
「ギャーーッ! ふ、ふるやのもりだっ!」
オオカミはドシンドシンと、あちこちぶつかりながら、ウマ小屋から飛び出しました。
振り落とされてはたいへんと、どろぼうは必死にオオカミにしがみつき、オオカミは振り落とそうとメチャクチャに走り続けます。
夜明けごろ、うまいぐあいに突き出ている木の枝を見つけたどろぼうは、
「とりゃー!」
と、飛びついて、そのまま高い枝にかくれてしまいました。
「たっ、助かった」
オオカミの方は背中にくっついていた物がとれて、ホッとひといき。
「だが、まだ安心はできん。ふるやのもりは、きっとどこかにかくれているはず。友だちの強いトラに退治(たいじ)してもらおう」
と、トラのところへ出かけました。
話を聞いてトラも恐ろしくなりましたが、いつもいばっているオオカミの前でそんな事は言えません。
「ふるやのもりという化け物、必ずわしが退治してやる。安心せい」
トラとオオカミは一緒に、ふるやのもりを探しに出かけました。
すると高い木のてっペんに、なにやらしがみついています。
オオカミはそれを見て、ガタガタとふるえ出しました。
「あ、あれだ。あ、あれが、ふるやのもりだ」
「なに、あれがそうか。なるほど、恐ろしい顔つきをしておるわい」
トラは、こわいのをガマンして、
「ウォーッ! ウォーッ!」
と、ほえながら木をゆさぶりました。
するとどろぼうが、二匹の上にドシン! と落ちてきました。
「キャーン!」
「ニャーン!」
トラとオオカミはなさけない悲鳴をあげながら、逃げて行きました。
どろぼうは地面に腰を打ちつけて大けがをし、オオカミは遠い山奥に逃げ、そしてトラは海を渡って遠い国まで逃げて行って二度と帰ってはきませんでした。
おしまい
鳥取県の民話
むかしむかし、雨の降る暗い晩の事、おじいさんが子どもたちに話を聞かせていました。
「じいさま、一番こわいもの、なんだ?」
「・・・そうだの、人間ならば、どろぼうが一番こわい」
ちょうどその時、どろぼうがウマ小屋のウマを盗もうと屋根裏にひそんでいました。
どろぼうは、これを聞いてニヤリ。
(ほほう。このおれさまが、一番こわいだと)
「じいさま、けもので一番こわいもの、なんだ?」
「けものならば、・・・オオカミだの」
「じゃあ、オオカミよりこわいもの、なんだ?」
「そりゃ、ふるやのもりだ」
ウマを食べようとウマ小屋にひそんでいたオオカミは、それを聞いておどろきました。
ふるやのもりとは、古い屋根からポツリポツリともる雨もりの事です。
だけどオオカミは、そんな事とは知りません。
「おらよりこわいふるやのもりとは、いったいどんな化物だ?」
と、ガタガタふるえ出しました。
屋根裏のどろぼうも話を聞いて、ヒザがガクガクふるえています。
「ふるやのもりというのは、どんな化物だ?」
と、ビクビクのところへ、ヒヤリとした雨もり(→ふるやのもり)が首にポタリと落ちました。
「ヒェーーッ! で、でたあー!」
どろぼうは足をふみはずして、オオカミの上にドシン!
「ギャーーッ! ふ、ふるやのもりだっ!」
オオカミはドシンドシンと、あちこちぶつかりながら、ウマ小屋から飛び出しました。
振り落とされてはたいへんと、どろぼうは必死にオオカミにしがみつき、オオカミは振り落とそうとメチャクチャに走り続けます。
夜明けごろ、うまいぐあいに突き出ている木の枝を見つけたどろぼうは、
「とりゃー!」
と、飛びついて、そのまま高い枝にかくれてしまいました。
「たっ、助かった」
オオカミの方は背中にくっついていた物がとれて、ホッとひといき。
「だが、まだ安心はできん。ふるやのもりは、きっとどこかにかくれているはず。友だちの強いトラに退治(たいじ)してもらおう」
と、トラのところへ出かけました。
話を聞いてトラも恐ろしくなりましたが、いつもいばっているオオカミの前でそんな事は言えません。
「ふるやのもりという化け物、必ずわしが退治してやる。安心せい」
トラとオオカミは一緒に、ふるやのもりを探しに出かけました。
すると高い木のてっペんに、なにやらしがみついています。
オオカミはそれを見て、ガタガタとふるえ出しました。
「あ、あれだ。あ、あれが、ふるやのもりだ」
「なに、あれがそうか。なるほど、恐ろしい顔つきをしておるわい」
トラは、こわいのをガマンして、
「ウォーッ! ウォーッ!」
と、ほえながら木をゆさぶりました。
するとどろぼうが、二匹の上にドシン! と落ちてきました。
「キャーン!」
「ニャーン!」
トラとオオカミはなさけない悲鳴をあげながら、逃げて行きました。
どろぼうは地面に腰を打ちつけて大けがをし、オオカミは遠い山奥に逃げ、そしてトラは海を渡って遠い国まで逃げて行って二度と帰ってはきませんでした。
おしまい
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10
手土産のウナギ
手土産のウナギ
青森県の民話
むかしむかし、ある百姓の若者が商人にあこがれて、自分も何か商売をやってみようと思いました。
でも、商売をするには元手となる資金が必要です。
「困ったな、おれみたいな貧乏人には、誰も金を貸してくれないし」
色々考えた若者は、村の長者に頼んでみようと思い、手土産に大きなウナギを桶に入れてかついで行きました。
長者の家に着くと、若者は手土産のウナギを長者に差し出して、さっそく長者にお願いしました。
「わたしは青森の八戸に行って、馬を十二頭ほど買ってきたいのです。そのお金を貸していただけませんか。必ずお返ししますので」
黙って話を聞いていた長者は、若者に言いました。
「話しはわかりましたが、あなたと直接話しをするのは、今日が初めてです。そんなあなたに、お金を貸す事は出来ません」
「・・・そうですか。では、失礼します」
あきらめた若者は、土産に持ってきたウナギをかついで、長者の屋敷を出て行きました。
すると、長者の家の下男が追いかけて来て、若者に言いました。
「旦那さまがお呼びでございます。もう一度、お戻り下さい」
そして再び座敷に通されると、長者が言いました。
「わたしのところへお金を借りに来る人はずいぶんいますが、持ってきた土産を持ち帰ったのはお前が初めてだ」
「すみません。このウナギは、次に頼む人への土産にします」
「なるほど。物を無駄にせず、使える物は何度でも使う。どうやら、商売の基本は知っている様だな。・・・よし、お前に、お金を貸してやろう」
「本当ですか! ありがとうございます」
こうしてお金を借りた若者は、大喜びで長者の家を飛び出すと、すぐに八戸へ行って馬を十二頭買いました。
そしてその十二頭の馬を村人たちに売ると、もうかったお金でまた馬を買い、隣の村まで売り歩きました。
これを繰り返して大金を手にした若者は、借りたお金を長者に返すと、残ったお金を元手に立派な商人になったそうです。
おしまい
青森県の民話
むかしむかし、ある百姓の若者が商人にあこがれて、自分も何か商売をやってみようと思いました。
でも、商売をするには元手となる資金が必要です。
「困ったな、おれみたいな貧乏人には、誰も金を貸してくれないし」
色々考えた若者は、村の長者に頼んでみようと思い、手土産に大きなウナギを桶に入れてかついで行きました。
長者の家に着くと、若者は手土産のウナギを長者に差し出して、さっそく長者にお願いしました。
「わたしは青森の八戸に行って、馬を十二頭ほど買ってきたいのです。そのお金を貸していただけませんか。必ずお返ししますので」
黙って話を聞いていた長者は、若者に言いました。
「話しはわかりましたが、あなたと直接話しをするのは、今日が初めてです。そんなあなたに、お金を貸す事は出来ません」
「・・・そうですか。では、失礼します」
あきらめた若者は、土産に持ってきたウナギをかついで、長者の屋敷を出て行きました。
すると、長者の家の下男が追いかけて来て、若者に言いました。
「旦那さまがお呼びでございます。もう一度、お戻り下さい」
そして再び座敷に通されると、長者が言いました。
「わたしのところへお金を借りに来る人はずいぶんいますが、持ってきた土産を持ち帰ったのはお前が初めてだ」
「すみません。このウナギは、次に頼む人への土産にします」
「なるほど。物を無駄にせず、使える物は何度でも使う。どうやら、商売の基本は知っている様だな。・・・よし、お前に、お金を貸してやろう」
「本当ですか! ありがとうございます」
こうしてお金を借りた若者は、大喜びで長者の家を飛び出すと、すぐに八戸へ行って馬を十二頭買いました。
そしてその十二頭の馬を村人たちに売ると、もうかったお金でまた馬を買い、隣の村まで売り歩きました。
これを繰り返して大金を手にした若者は、借りたお金を長者に返すと、残ったお金を元手に立派な商人になったそうです。
おしまい
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17
ヒバリとお日さま
ヒバリとお日さま
むかしむかし、お金持ちのヒバリが、お金を貸す商売をしていました。
ある春の日の事、お日さまがヒバリにお金を貸してくれと頼みました。
「ヒバリさん。すまないが、お金を十両ばかり貸してくれないか。夏には返すから」
「はい、いいですよ。その代わりに返すときは、十一両ですよ」
「わかった。助かるよ」
お日さまはヒバリから十両を借りると、喜んで帰って行きました。
やがて、夏になりました。
夏はヒバリにお金を返す約束ですが、お日さまはカンカンと照っているだけで、お金を返しに来ません。
そこでヒバリはお金を返してもらおうと、お日さまのところへ飛んで行きました。
「お日さま、もう夏ですよ。そろそろ、お金を返してくださいよ」
「・・・・・・・」
お日さまは何も答えず、強い日差しをますます強くしました。
「わあ、まぶしい! それに暑い!」
ヒバリは目がくらんで、それ以上は近づけませんでした。
そのうちに、涼しい秋になりました。
カンカンと照っていたお日さまの光も、だんだんに弱くなりました。
それでヒバリは空高く飛んで行くと、お日さまに叫びました。
「お日さま! 約束の夏は、もう終わってしまいました。早く、お金を返してください!」
すると、お日さまは、
「ああ、また今度来てくれないか。今は忙しいんだ」
と、言って、雲(くも)に隠れてしまったのです。
そこでしばらくしてからヒバリがお日さまのところへ行くと、お日さまは雨雲に頼んで大雨を降らせました。
「わあ、すごい大雨だ!」
かわいそうにヒバリは、ずぶ濡れで帰って行きました。
そんな事をしているうちに、冬になりました。
ヒバリは何度も何度もお日さまのところへ行きましたが、そのたびにお日さまは北風や雪雲に頼んで冷たい風や大雪を降らせたりするので、お日さまに会う事は出来ませんでした。
やがて、お正月になりました。
毎年ヒバリは、お正月にはたくさんのおもちを買うのですが、お日さまがお金を返してくれないので、今年はお正月のおもちを買う事が出来ません。
「ああ、おもちが食べたいな。
こんなにさみしいお正月になったのは、全部お日さまのせいだ!」
怒ったヒバリは春になると、お日さまに文句を言いました。
「お日さま! 今日こそは、お金を返してください! 本当に、返してください! 絶対に、返してください!」
「・・・・・・」
お日さまは知らん顔で、雲に隠れてしまいます。
「返せ! 貸したお金を返せ! 返せったら、返せ!」
お日さまは今でも、ヒバリにお金を返していません。
だからヒバリは今でも春になると、高い空の上で一生懸命に叫ぶのです。
「お金を返せ!(♪ピーチュクリーチュル) お金を返せ!(♪ピーチュクリーチュル)」
と。
おしまい
むかしむかし、お金持ちのヒバリが、お金を貸す商売をしていました。
ある春の日の事、お日さまがヒバリにお金を貸してくれと頼みました。
「ヒバリさん。すまないが、お金を十両ばかり貸してくれないか。夏には返すから」
「はい、いいですよ。その代わりに返すときは、十一両ですよ」
「わかった。助かるよ」
お日さまはヒバリから十両を借りると、喜んで帰って行きました。
やがて、夏になりました。
夏はヒバリにお金を返す約束ですが、お日さまはカンカンと照っているだけで、お金を返しに来ません。
そこでヒバリはお金を返してもらおうと、お日さまのところへ飛んで行きました。
「お日さま、もう夏ですよ。そろそろ、お金を返してくださいよ」
「・・・・・・・」
お日さまは何も答えず、強い日差しをますます強くしました。
「わあ、まぶしい! それに暑い!」
ヒバリは目がくらんで、それ以上は近づけませんでした。
そのうちに、涼しい秋になりました。
カンカンと照っていたお日さまの光も、だんだんに弱くなりました。
それでヒバリは空高く飛んで行くと、お日さまに叫びました。
「お日さま! 約束の夏は、もう終わってしまいました。早く、お金を返してください!」
すると、お日さまは、
「ああ、また今度来てくれないか。今は忙しいんだ」
と、言って、雲(くも)に隠れてしまったのです。
そこでしばらくしてからヒバリがお日さまのところへ行くと、お日さまは雨雲に頼んで大雨を降らせました。
「わあ、すごい大雨だ!」
かわいそうにヒバリは、ずぶ濡れで帰って行きました。
そんな事をしているうちに、冬になりました。
ヒバリは何度も何度もお日さまのところへ行きましたが、そのたびにお日さまは北風や雪雲に頼んで冷たい風や大雪を降らせたりするので、お日さまに会う事は出来ませんでした。
やがて、お正月になりました。
毎年ヒバリは、お正月にはたくさんのおもちを買うのですが、お日さまがお金を返してくれないので、今年はお正月のおもちを買う事が出来ません。
「ああ、おもちが食べたいな。
こんなにさみしいお正月になったのは、全部お日さまのせいだ!」
怒ったヒバリは春になると、お日さまに文句を言いました。
「お日さま! 今日こそは、お金を返してください! 本当に、返してください! 絶対に、返してください!」
「・・・・・・」
お日さまは知らん顔で、雲に隠れてしまいます。
「返せ! 貸したお金を返せ! 返せったら、返せ!」
お日さまは今でも、ヒバリにお金を返していません。
だからヒバリは今でも春になると、高い空の上で一生懸命に叫ぶのです。
「お金を返せ!(♪ピーチュクリーチュル) お金を返せ!(♪ピーチュクリーチュル)」
と。
おしまい
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